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びっくりこ!

2023年3月26日(日)
 里親制度には、レスパイト・ケアという仕組みがある。
 子どもを受託し、養育している里親がほかの里親などに児童相談所を通じて子どもを預けることだ。これは体調不良や冠婚葬祭などどうしても預けなければならない用事のために使うものではなく(もちろんそれでもいいのだろうが)、里親の休息のために使う。

 我が家も過去に1泊と数時間の2回利用したことがある。
 1泊はノコ(娘小3)を受託した直後で、私が高熱を出し、むーくん(夫)は急な欠勤ができず、ほかの里親さんにノコをお願いすることになった。数時間は、最近で私の通院でむーくんが対応できなかったためだ。
 どちらも休息のためではない。

 レスパイト・ケアをもっと気軽に手軽に使ってほしいと思っている。
 里親さんの心身のリフレッシュはとてもとても大事だからだ。

 では、なぜ我が家が休息のために利用しないのか。
 それは面倒だからだ。
 数時間の利用は最近のことなのでまだよかったが、1泊の利用のときはまだノコが我が家に来たばかりということもあってか、レスパイト・ケア先の里親家庭から「帰らない」と号泣し、迎えに行ったむーくんが大変だった。
 レスパイト・ケアでほかの里親家庭を体験するのもいいことだと思う。いろいろなお家があって、それぞれ違うのだとわかるのはノコにもよい。ただ短期間の滞在だと、預け先も心地よく過ごしてもらいたいという思いが強くなり、どうしてもお客様扱いになる。
 そりゃあ、楽しいに決まっている。
 親子のつながりがしっかりできていれば心細さやお家に帰りたくなるかもしれないが、遊んでもらえて、食べたいものが出てきたりとなんせ非日常だ。その反動なのだろうか、レスパイト・ケアから帰ってくると甘えが強くなったり、ねてなのか「〇〇のお家のほうがよかった」発言をしたりする。
 せっかくリフレッシュしたのに、帰ってきてからのケアのほうが大変だとちょっと利用をためらってしまう。例えば、子ども自身が祖父母や親戚宅に行って「甘やかしてもらっちゃった」、でもそれは「特別な時間」で永遠には続かないのだと認識してくれれば気軽なのだけど、幼い頃からそのような交流をしていないノコには「あっちのお家のほうがいい」になる。

 受託した直後と違い、今は数時間ならばノコの習い事の待機時間がある意味レスパイト・ケアになっている。
 そして、もう1つ。
 春夏冬と年3回、ノコの習い事の合宿期間が我が家にとってのレスパイト・ケアだ。
 ノコの意思が大事なので、本人が参加したくない、といえば無理強いはしない。だが、今のところ、ありがたいことに毎回ノコは参加。
 ノコを合宿に参加させたいのは私たちのレスパイト・ケアのためだけではない。
 私自身が親元を離れた経験が乏しく、学校での宿泊行事に毎回とても緊張して大変だったため、ノコには慣れさせたい気持ちもある。またレスパイト・ケアのお泊りと違って、解散時はみんなそれぞれの家族のもとへ帰っていくので、ノコも「帰らない」とならない。
 宿泊経験と和やかな解散が魅力である。

 今朝8時、貸切列車でノコはスキー合宿へ発つ。
 年休を取得したむーくんも含め、3人で集合場所へ向かい、責任者へノコを引き渡す。
 はい、ここからは大人ターイム!
 いつもならそのままヒャッホーと街に繰り出し、ノコ連れでは観られない映画を楽しんだり、ノコ連れでは食べられないエスニック料理やお刺身などの和食をお腹に入れたり、えへへとむーくんと遊ぶ。
 だが、今回は違う!

 むーくんは即職場へ戻り、預けてあったスキー道具一式を取ってくる。それから私たちは新幹線に乗り、ノコを追いかけ、追い越し、先にスキー場へ到着!
 新幹線の速さを改めて実感! 新幹線すごい! 素晴らしい!
 ノコたちが乗った貸切列車をビュビュビューンだ。

 ノコたちスキー合宿のメンバーがリフトの列に並ぶ。
 その近くにむーくんと2人たたずみ、ノコを見つめる。ノコは楽し気にスタッフや周りの友だちと喋っている。
 子どもの視線は低く、視野も狭く、じれったくなるほどノコは私たちに気付かない。
 じりじりと距離を縮めていくと、ふとノコの目が私たちをとらえた。
 真顔になる。
 それから、おもむろに左右を見回す。まるで自分はどこにいるのか確認しているかのようだ。
 ぱちぱちと目をしばたく。そして、静寂5秒。
 「パパ! ママ!
 ノコが私たちを指さし、スタッフに「パパとママ!」を連呼する。スタッフにお辞儀をして近付き、「新幹線で追いかけてきちゃった」と笑う。でも、宿泊せずすぐ帰ると説明する。

 ノコの驚く顔見たさにわざわざ来たといっていい。
 あいにくの雨でゲレンデの雪が重い春スキーだったけれど、満足だ。ノコも合宿を数回経験済みなので、これで里心がつくことはないだろう。
 「頑張ってね!」
 ノコに手を振って私とむーくんは最後のひと滑りをし、そのまま帰路についた。
 
離れる時間を少し持つことで、ノコのことが可愛くなる。
おかえり」って抱きしめたくなる。
それがレスパイト・ケアのいいところ。

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