体は9歳だけど、心は4歳の我が娘。
#20230728-181
2023年7月28日(金)
児童相談所から里子のノコ(娘小4)を正式委託されて4年目の我が家。
委託直後と異なり、そろそろ里親の集まりであるサロンや児相との面談回数が減る里親家庭が多いなか、我が家は変わらず児相に通っている。
定期的に児相の児童心理司さんにノコとの面談をお願いしている。
そして、半年に一度ほど、そこでのノコの様子を私たち里親に伝えてもらう。
正式委託から4年目になると――まだまだ4年目なのに、どうにもノコに「小学4年生なんだから」を求めてしまうようだ。
小学4年生なんだから、もう1人でお風呂に入れるよね。
小学4年生なんだから、もう1人で寝れるよね。
小学4年生なんだから、同じお家のなかだもの、1人でほかのお部屋に行けるよね。
「小学4年生なんだから」は口に出さないが、心のなかでは思っている。
心理司さんは「まだ4年」と私たちの顔をじっと見ていい、「森谷家ではまだ4歳」と続ける。
面談のなかで心理司さんが見るノコの姿は幼い。
実親のもとから、乳児院、児童養護施設、そして里親である我が家と短い人生のなかで転々としてきたノコ。いつしかノコの9年という人生で一番長くいる場所となった我が家だが、まだノコは安心していないらしい。
そのままの自分であってもここにいられるのか。
「いい子」でないとダメなのか。
私を愛して。愛して。愛して。
どんな私でも「ずっとここにいていい」っていって!
ノコの心の叫びが心理司さんの言葉の端々からあふれてくる。
児童心理司さんによる面談の終了をこちらからいいだせないのは、ノコも常に成長し、変化しているからだ。
ノコの心はどんどん変わり、生い立ちへの認識も変化していく。幼い頃は、施設の保育士さんや児相の担当ケースワーカーさんがする実親と暮らせない理由を鵜呑みにしていた。いや、何か思うところはあったが、言語化できなかっただけかもしれない。いや、似たような生い立ちの子ばかりの施設にいたため、疑問に思わなかったのかもしれない。それが成長するにつれ、世界が広がり、周りの子どもと比較し、実親の心情を想像するようになる。
ノコとよく向き合うためにも第三者の目がますます欲しくなる。
面談の度に、日頃忘れがちな――見たくないのかもしれないノコの心の年齢を刻み込む。
面談を終え、むーくん(夫)と児相を出る。
年々夏の暑さが増し、ここ数日は体温と同じかそれ以上の気温が続いている。痛いほど強い陽射しに慌てて日傘を広げる。背の高いむーくんの顔を見るためには、日傘を少し傾けないとならない。
「ねぇ、4歳だって。4歳」
「だな。……ちっこいなぁ」
白く見えるほど熾烈な太陽のしたで、むーくんが笑った。
その日の夕刻。
ノコが2泊3日のサマースクールから帰ってきた。
楽しかったようで、家に向かう道中から寝るまでずっとサマースクール先での出来事を喋っている。
「ノコさんがいなくて淋しかったよぉ~」
形のよいノコの額をなでると、ノコがきゅうと目を細める。
「本当? 本当? 本当に淋しかった?? パパは? パパは?」
むーくんがふざけて、ちょっとだけ間を開けてから答える。
「うん、メッチャ淋しかった。スッゴーク淋しかった」
ノコはその無言の時間を怪しみ、むーくんをジロリと睨む。
「ママのは信じられるけど、パパのは信じらんない! 静かでよかったぁ、とか思ってるんでしょ!」
そういってむーくんの腹部をぽかすかと叩く。
4歳の子が頑張ってお泊りしてきたんだ。
今夜は洗ってあげようとノコと一緒に浴室に入った。
髪を洗っていると、ノコはご機嫌で心地よさそうに舌足らずの声を出す。
「ママママァ、こしこし、こしこし、だねぇ」
私の指先がノコの地肌を洗うのに合わせていう。
「ママママァ、私、かわいい??」
目をいっぱいに見開き、ハートマークと「きゅるるるん」という効果音が出そうな顔で私を見上げる。
「かわいい、かわいい。ママの宝物ちゃんだよ」
湯舟に入らないとノコがいい張る。入らなくてもいいが、エアコンのきいた場所にいた時間も長い。一日の終わりに体を芯から温めたほうがよい眠りになりそうだ。
「じゃあ、お膝まで入ろう」
私が膝まで入り、ノコを誘う。
「入ったよぉ」
ノコが顎を引き、目をぱちぱちさせながら甘えた仕草で私を見上げる。
「入れたねぇ。じゃあ、お尻までチャポンできるかなぁ?」
4歳、4歳、ノコさん4歳。
「チャポン?? ママァ、チャポンできたらなでなでしてくれる?」
「するよ、するよ。いっぱいしちゃう!」
膝、お尻、段階を踏み、浴槽の底に座る。体が湯につかったので、私は手で熱い湯をノコの肩にやさしくかける。
「はい、お湯にしっかり入れたね。気持ちいいねぇ、気持ちいいねぇ」
湯上り後はすばやくノコの全身を拭く。
そこから先――ドライヤーで髪を乾かし、ベッドまではむーくんにバトンタッチする。
「4歳」
そっと目配せをしながらむーくんに囁く。
「4歳」
むーくんも合言葉のように返した。
体は9歳、でも心は4歳。まだまだ駄々っ子、甘えっ子。
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