連載【癌で死ぬか死刑が先か・6】転落していく俺
※ お読みになる方へ : 事件の詳細が書かれており、不快な思いをされる場合がございます。ご注意ください。
俺の人生は極端に言うと、交通事故で180度変わったと思う。
タンクローリーに轢かれた事故は、俺の自殺行為と取られ、相手の保険会社から一銭のお金も出してはもらえず、母が色々と金銭の面や、病院の手続きをしてくれたんやけどね…
丈夫な体だけが取り柄の俺、カッコつけで、それでいて見栄っ張りやったから、現状への苦しみ、不安、苛立ち…頭で勝負出来ない、身体も不自由になって、居場所もないザマ…
家から逃げ出した俺は、取り敢えず川に向かった。
川にはそこそこ大きい鉄橋があり、その鉄橋の下には5から6本ぐらいの大きなパイプが並んで居て、近付いてよく見ると、丸いパイプだから、平らではないけど、なんとか人が上で寝れそうだった。
問題は12月だから、流石に寒い。色々な所を探して、何とか、風を通さない厚目のシートを見付けカーテンもGETして、橋の下のパイプを根城にした。
後は食料や水だ。水は1.5ℓのペットボトルを公園などで入れて、食料は、ちょっと大き目の八百屋みたいな食料店が閉店後に、賞味期限がきれた、パンや和菓子等々を盗んで3日から4日分はそれで過ごせてた。
たまには、米類が食べたくなるので、犯罪と知りながらも、腹が空いて、腹を満す事だけで、頭の中が一杯。
だから、コンビニとかで弁当とかを盗んだ事もある。
これが結構、ドキドキする。人が多ければまだいいが人が少くないと、店員の目がもの凄く気になり、何度、止めようかと、思った事もある…
しかし、空腹には勝てなかった。
生きている以上は、必ず、何か食べないと腹の虫がグーグーと鳴って空腹を訴えるし、、、こればっかりは、仕方無い事だーと自分のしている万引を正当化していた。生きてく為と言う理由で。
もう、世の中は正月だなぁー、コンビニも何度も何度も万引していると流石に、俺は目を付けられているだろうし、、、スーパーみたいな所は、正月は休みやし、、、何も一日中、体を動かしてなくても、腹は空くし、世の中が正月気分なのに、何で俺は、橋の下で腹を空かして、ホームレスみたいな真似してんだ?って…
考えれば考える程に、己が情けなく、希望も見えない。
こんな人生はもう疲れたなぁ~って、、、生きる気力も無くなったし、死んだ方が楽だなぁ~って、段々と思えて、カミソリでリストカットしてみても、そう深く切れなくて、、、自転車のタイヤのチューブで首吊って死のうと思っても、チューブの方が切れてしまい、尻餅を付くし、、、(苦笑)。
俺は自殺もろくに出来ねーのかって、腹立って、、、
苛々し、金も無いのに、酒を浴びるぐらい呑みたくなり、知らない居酒屋で、美味そうな食べ物を何品も頼み、酒を呑み、無銭飲食の罪悪感より、今、こうして、美味しい食べ物を食べ酒を呑んで居ることに、幸福さえ感じた。
こんな、生活を送りたい美味しい物を腹一杯食べたい!!
その思いは、酒が体中に廻れば廻る程に、世に対する、母親や母の男への怨嗟が強く成り、どうせ死ねないのならば、世の中の幸せの少しぐらいのお裾分けを頂いても、いいだろー
それが犯罪でも、生きてく為には綺麗事ばかりは言ってられんと…
もう俺は酒の力を借りて、開き直っていた。
そんな遣る瀬無い気持を犯罪で、、、隣の客から、財布を盗み、その店から逃げ出した!
財布には5万円前後はあっただろうか?!
そのお金で久し振りにタバコを買い他の居酒屋にはしごした。
で、次の店に行こうと調子ついたのが、悪運の終り、、、余りにも早い悪運を笑うしかなかった。
その店に、財布を盗んだ客が居たのだ!!
勿論、俺は顔をバッチリ見られているので、俺はヤバイと思い店から出て逃げたが、そこの店の店員だか、マスターだかは知らないが、車で、俺が乗っていた原チャリを、追い掛けてくる!!
原チャリでは車のスピードには、勝てない!
細い道に逃げたが、そこは行き止まり、、、もう観念するしか道はない。
そのまま、警察に通報かと思いきや、、、もう閉店している財布を盗んだ店に、連れて行かれる、、、
そこには、車に居た男2人を含めて、男4人と女が5人居た。
1人の男に全部服を脱げと言われ、俺は「フザけんなぁ!!」と抵抗するが、男4人が近付いてくる。
どう見ても、こいつら、ただの堅気とちゃう…
2人はそこら辺に居る遊び人の感じやが、もう2人に関しては、ヤクザかヤクザに近いそっち側の人間だと、俺のアラームが点灯する。
さすがに分が悪いので、ここは大人しく従った。
俺の服のポケットやズボンを調べても見付からない。
そりゃ~そうだ、店のトイレに隠してあるからだ。
俺は、財布の事を聞かれても、知らないと言いはった。
しかし、女の中の1人の若い女のガキが、「私あんたがバックから財布を盗ったの見てたもん」とぬかす。。。見え透いた嘘を付け、女のガキ。
盗んだ所を見ていたのなら、その場で言うだろうが!!
と心でこの女はアホか!!嘘付くにも、もっとましな事言えんのか!!と、誰が信じるんだと余裕をかましてたら、こいつら全員、俺が財布を盗んだと決めつけている以上は、、、俺に逃げ場が無い。
それも、一人の男が財布の中に100万円入っていたとぬかす!!
こいつら、やっぱり、ただの堅気とちゃう。
俺に親に電話しろと言い出す!
ここで親に電話した所で、どうせ「煮るなり焼くなり勝手にして下さい」と言われるのがオチだ。
まぁー母親に電話をする事はないが「100万円の金なんて、盗んでね~し」そこで、俺は、110に(警察)電話して、SOSを頼んだ。
流石のこいつらも、俺がまさか、その手に出るとは思ってなかったらしい。通報者は俺だ。
きっと、流れが変わる筈だとこの時点では思っていた。
しかし、警察署の取り調べ室で、俺が変な連中に言いがかりをされて、その上に裸にされて、100万円出せと脅されたので通報したと言っているのに、財布だって、証拠が出てないのに、刑事が取り調べ室に一斉に7人から8人入って来て、全員で、俺を脅し、お前が盗んだんだろーと!!
俺は、この刑事の、圧力の脅しに、ついに自白した。。。
しかし、今回は俺は財布を盗んだから、まぁ、仕方無いとして、だけど証拠もまだ出ない内から、刑事のこの脅しには、本当に何もしていない無実の人でも、やってなくても、やりましたとその場の恐怖から、逃れられるなら、してもなくても、やりましたと自白しそうだなぁーと思えた。
ヤクザ顔負けぐらい、警察達は、汚い言葉で、脅すのだ。
椅子は蹴るわー机は叩くはで、狭い取り調べの中に、ヤクザ顔負けの刑事が7人から8人、、、警察って怖いと思った!
その後は、素直に取り調べに応じて、終ったら、留置場に連れて行かれるんだけど、俺、パクられた事は中学生の頃に何度かあったけど、直ぐその日に帰らせてくれたし、留置場に入った事が無いから…
今回が初めてで、まずビックリしたのが、全裸にさせられて、、
心の中で、今日、2回目の全裸やぞ!!と。
で、留置場の看守が尻の穴を見せろとぬかす、、、
こんな辱めを受けるとは思いもしなかった、、、
しかし、留置場に入ってからは、末まで、ホームレスみたいな毎日毎日、今日を生きる為に、食料を探す苦労も無く、寒い冬の中、外で眠る事を考えたら、留置場は、3食付きに布団で寝れる。
風呂は週2回は入れる!何ってここはいい所だと思えたぐらい…
不謹慎やけど…確かに自由はない。
けど、食べる事に苦労をし、寝る場も無い俺としては、久しぶりの、布団に寝れて、食事も、出してくれる。
ここは天国か!!って思えてしまう程に感覚が麻痺(まひ)していた。
しかし、これも2週間ぐらいで、今の現状に対して、やっと目が覚めた。
己の情けなさに…こんな所で満足していた俺に幻滅していた。
交通事故前は自分の力で罪も冒す事もなく、普通に3食食事して、自分のお金で夜飲み屋に行き、彼女とデートして、オシャレして、外食なんて当たり前にちょくちょくしてたのが、、、
留置場を天国と勘違いする程に、落ちぶれてしまった自分が情けなかった、、、
でも、その時は、食事が3食出て、布団で寝れる有難たみが身に染みていた、、、