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帰巣本能 大陸横断 ~5日目

帰巣本能がものすごく強い。
自分で言うのもアレですが、生物の三大欲求なんてものはもちろんのこと、生存本能だとか承認欲求だとか、「本能」やら「欲」という字のつくものならそりゃもう、あのお釈迦様(欲を捨てたメッチャすごい人とされている)にぶん殴られるレベルで、強い。基本的にはもうずっと安全なところでおっぱい飲んでねんねしていたい。
その中でも我ながらとりわけ強いのが帰巣本能だと思う。常に帰りたい。そういえば鳩なんかは「伝書鳩」なんてシステムが実在していたことから分かるように、特に帰巣本能が強い動物とされているらしい。性欲が強くてギンギンな男性はしばしば「ウマ並み」と揶揄されることがあるが、そんなん言うなら俺は「ハト並み」に帰巣本能が強い。ちなみに中日ドラゴンズの監督は「竜並み(立浪:たつなみ)である。うまい。

びっくりするくらい存在感のない国境

パリを出発して2日後くらいには隣のルクセンブルクという国に入っていて、すでにもう日本に帰りたかった。もはやもっと言うとパリに着いた頃には、いや、パリ行きの飛行機に乗り込む前の成田空港の保安検査場くらいでとっくにめちゃくちゃ帰りたかった。
こんなことを言うと「じゃあ家から出ないでずっと引きこもってろよ」みたいな声が聞こえてきそうだがそれはお門違いだ。なぜなら俺は家にいる時はめちゃくちゃ外に出たいからだ。だって家に引きこもってたって特にやることがないし、一日中引きこもった休日の夕方に窓から差し込む西日、超切ないじゃん。引きこもって漫画を読みまくったところで、せいぜい得られるのは刹那的な興奮と漫画アプリのログインボーナスくらいじゃん。

「書を捨てよ、旅に出よう」という言葉があるように、何かを得てそれを自分のものにするには本を読むのではなく旅に出た方が手っ取り早い。旅までは行かずとも、買い物をするでも近所を散歩するでもなんでもいい、絶対に外に出た方がいい。外に出ずして成長はない。
そうやって外に出てみて、一瞬で帰りたくなって、引きこもってみて後悔して、やっぱり外に出てみる、そんな繰り返しで人は大きくなってゆくんです。

マクドナルドまで徒歩1分の良物件

帰りたいとは言ってもこの時点で家まで直線距離で1万kmくらいあるわけだし、帰るどころかその日寝泊まりする場所も不確定な日々に足を突っ込んでしまった結果、「地球全部が俺の家やで理論」を展開するに至った。

ある時はガソリンスタンドの裏、ある時はだだっ広い草原のど真ん中、ある時は高級ホテルの中庭にテントを張ってそこを俺の家とした。
ガソリンスタンドは誠心誠意お願いすればテントを張らせてくれるところが多かったし、草原のど真ん中は地面がふかふかすぎて次の日に昼まで寝ちゃうくらい寝心地が良かったし、私有地とかでは「いや、地球全部が俺の家ですけど?」みたいな顔してテントを張って普通に怒られたこともあった。

本当に色々あったし、たかが一畳程度のテントの中だったけど、マットを敷いて寝袋を広げればあら不思議、あのヒ⚪︎トンホテルを彷彿とさせる心地よい安らぎの空間がそこに広がるはずもなく、心の底から毎日帰りたかった。
アホみたいな理論を振りかざして野宿を繰り返してたけど、施錠なんて概念は無いし防御力も湯葉くらいゼロだし、危ない目に(ほとんど)遭わなくて本当によかった。


なんにせよ帰る場所があるっていうのはとっても幸せなことですよね。
その日の自慢の「マイホーム」は今後ちょくちょく記事でも紹介していこうと思います。


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