質問箱より:ご感想ありがとうございます

ありがたきお言葉、痛み入ります。

最近では呉服屋さんを敵視するような、いわば「アンチ呉服屋」とでも言うべき人々が増えてきましたよね。着物が好きなのにどうしてそこまで呉服屋さんを敵対視するのか、私には到底理解できません。魚が大好きなのに魚屋さんは嫌い!と言っているような矛盾を感じます。

私も、以前は呉服屋に勤めていた経験があります。その中でもやはりいきなり喧嘩腰にものを言ってくる人多かったです。そこまで嫌ってる割にはなんだかんだ催事にいらしゃっているのだから、着物好きには間違いないんだろうな〜と理解しておりましたが、そのような方って特に営業が嫌いなんですよね。

こちらとしましてはいきなり商品をその方に売ろうなどとは微塵も思ってませんで、どんな商品があるのかせっかくお越しいただいたからにはご紹介だけでも差し上げようと思ってお声かけると「買いませんよ!見てるだけなの!ほっておいて!!」…もちろん、言われた通りにいたしますが、なんともったいないことをされるんだろうと思うんです。いろんな情報を直にゲットできるチャンスなのになーと思ったもんです。呉服屋さんにお勤めになっている方なら、きっとわかってくださると思うんですが、販売というものはお客様とのコミュニケーションの成果であって、いきなり販売ありきでお声がけをしないと思うんですよね。販売員だって当たり前ですが、庶民なのでそんなに何十万円もするようなお品をいきなりお客さんに売りつけてやろうなんて思ってやしません。

言っちゃなんですが、八百屋さんが「今日は甘いスイカ入ってるよー、奥さんどお?」って声をかけるのと変わらないんですよ 笑 むしろ八百屋さんの方がしっかりスイカをオススメしてくれて、買っちゃって、結局今夜は家族でスイカパーティーだなんて事の方が多いでしょう。そりゃスイカと着物は値段が違うと言われればそうですが、根本的な精神は変わりません。

なので、必要以上に呉服屋さんを恐れないで欲しいなと思います。
「悪徳呉服屋」なんて言葉が一人歩きしてネガティブキャンペーンが横行してるのを見るのは悲しいです。 どんなに呉服屋さんが頑張っていても、こう言った悪い印象ばかり植え付けられていてはどうしようもありません。

呉服業界が衰退したのは呉服屋自身のせい、なんて言葉もやめて頂きたいですね。単純に洋服社会になったからです。着物より洋服を着る人がほとんどだからです。ポケベルが携帯に変わり、スマホに変化していったのと同じで、洋服という新しいスタイルの衣服が受け入れられスタンダードになっていったからです。
むしろここまで洋服社会になっていても尚、セレモニーごとに着物を着る風習が残っていたり、夏の花火大会には浴衣を着る文化が残っていることは、呉服業界や職人さんの功績だと思います。なんだかんだ言われても頑張って残してきたからです。それを忘れないで欲しいと思います。

それから「着物のルールぶっ壊せ」と鼻息の荒い着物革新派の皆さま。
壊すのは結構ですが、そもそもその「ルール」自体をご存知なのでしょうか?
着物警察という言葉を作り上げて、敵とみなしているような方々も多くていらっしゃいますが、それはね、壊しちゃいけないルールを壊してしまっているからなんですよ。基礎中の基礎も知らず、めちゃくちゃに着物を身体に巻き付け得意になっているのを見れば見るほど、子供が親のクローゼットを開けてとにかく引っ張り出しいたずらしてお姫様ごっこをやっているのと大差ないと感じます。
それをイイ歳の大人がやってるんですから噴飯ものですよ。

和洋折衷コーデ、もしくは和洋ミックスという言葉がありますね。
あれ、実はかなり上級者向けのコーデだって気付いていますか?

「和洋折衷」というのは「それぞれの良いところを取り込む」という意味です。
しかし、それを実践できているコーデをほとんど見かけません。私、和洋折衷、和洋ミックス自体は嫌いではないのですが、見かけるもののほとんどが和洋潰滅ともいうべき有様のものばかりで…お互いの良いとこ取りどころかお互いに潰し合っているようにしか見えないのです。

何故、和洋折衷が上級者向けなのか。
それはお互いの良いところを知る必要があるからです。良いところというのは見た目や意匠だけでなく機能面なども含まれます。それぞれを良く深く知らなければ、良いとこどりなどできず、捨てちゃいけないものを捨て、機能性や合理性を無視した正体不明のものが出来上がるだけなのです。和洋折衷コーデをする方はよくよくこの辺りを念頭においておいて欲しいです。
ルールや理論も知らずして崩そうというのはただの破壊行為に他なりません。

和洋ミックスコーデが好きな方々の中には、呉服屋さんを嫌っている方も多いですね。そういう方がじゃあどこで着物を手に入れているかというと、リサイクル着物屋さんがほとんどだと思います。

リサイクル着物は当たり前ですが、呉服屋さんの比ではないほどの安価で着物を売ってますよね。それはとっても魅力的なことです。私も好きです。

でもね、それが着物の本来の値段だと考えないで欲しいんです。そして呉服屋さんに売っている着物をボッタクリだ!と騒がないで欲しい。

何故リサイクル着物が安いのか考えたことがありますか?
当然ですが、まず中古品だからです。中古品はどんなものでも新品よりずっと安く売買されていますよね。
着物は本来オーダーメイドが基本ですから中古品だと自分のサイズのものがなかなか手に入りにくいのも安さの理由の一つになりますね。
次に、需要が極めて少ないからです。前述したように洋服社会ですから、わざわざ中古品の着物を買おうという人は少ないんです。
それから、仕入れ値が安いからです。着物好きの皆さまには信じられないでしょうが、邪魔だからタダでも良いから箪笥ごと着物を処分したいという人は多いんです。着物がタンスの肥やし、いざとなれば売って換金できるなんてのはとっくの大昔の話になりました。

上記の理由を経て流れてきた着物と、呉服屋さんで扱っている新品の着物の価格が雲泥の差なのは当たり前です。ぼったくりと騒ぐことがいかにバカバカしいかという事をよくよくご理解ください。まかり間違っても、自分は企業とタイアップしてなかなかのお値段の肌着や襦袢や、浴衣やシルック着物をPRしておきながら「着物は数百円で買えます!」なんて夢物語を騙るような着付講師にはならないでくださいね?

リサイクル着物は、着物を知れば知るほどお買い得なんですよ。
同じ一律1000円の着物でも良いものを選ぶことができるようになるから、勉強は大事です。自分の好きなものなら少しの時間を惜しんで学ぶことを放棄するのは実にもったいないと思いますね。

私の方こそ大変勇気づけられました!
ご感想ありがとうございました!



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