あの日のコインロッカー
秋の香りが漂いはじめた9月末の北海道。
今回は約10年ぶりに訪れた北海道での最終日のお話です。
滞在4日目、最終日の朝です。ずっと行ってみたかった北海道大学に行こう!と思い、札幌市内のホテルを出発しました。最終日以外は合宿があったので、バックパックの中には合宿で必要だった辞書よりも厚くて重いテキストやパソコンと、とにかく荷物がいっぱいで、これは重すぎる!!と、途中札幌駅のコインロッカーに荷物を預けました。
その何の変哲もないコインロッカーでこんなことがありました。
そのロッカーは1回500円かかるのですが、投入口は100円玉専用でした。100円玉を5枚も持っていなかった私は、”なんで現金オンリーなんだよ~。キャッシュレス対応だったら楽なのに”と少し両替を手間に感じつつも、財布にあった千円札をもって、少し離れた両替機に向かい両替をしました。
両替を終え、コインロッカーに戻り、100円玉を5枚入投入して、鍵をかけました。そして、残りの100円玉5枚を財布にしまおうとしたそのとき。。
隣で同じようにロッカーに荷物を預ける70代くらいのご夫婦の姿が目に移りました。お母様は500円玉はあっても100円玉がなさそうで、お父様も小銭を持っていないようで、二人とも少し困っている様子でした。
両替をして使わなかった100円玉を5枚が手元にあった私は、”両替してあげれるけどなぁ”と思いつつも、声をかけるかかけないか迷いました。しばらくご夫婦を気にかけていると、お父様と2回ほど目を合ってしまいました。気まずい!と思い、慌てて目をそらしました。それでも迷って、声かけたほうがいいよなぁと思い、勇気を出して、”100円玉5枚持ってますけど、両替しましょうか?”と声をかけてみました。
ご夫婦は一瞬、間が空いてから、”いいんですか。ありがとうございます!!!”と嬉しそうな表情でお礼をいって、両替をしました。”ほんと嬉しいね” "ありがとうね。ありがとう。”と何度も頭をさげてくれました。そして、その場を立ち去ろうとしたとき、”荷物になるかなよかったら食べて。まだ食べてないから。”と、ロールケーキのようなパンをくださいました。きっとお腹が空いたときに買っただろうに。申し訳ないなぁ。と思いながらも、せっかくくださったので喜んで受け取りました。両替してあげたことがほんとうに嬉しそうで、そんなお二人を見ていたらこちらまであたたかい気持ちになりました。
勇気を出して、声をかけてよかった!と思った瞬間でした。それほど大したことはしていませんし、ここまで感謝されるとも思っていませんでした。
旅人と旅人によるコインロッカーでの一期一会。
一瞬だったのでそのご夫婦の顔は覚えていないし、きっとこれから先おそらく出会うことはないでしょう。しかし、このときのコインロッカーでのひとコマは、札幌駅での大切な想い出として心に刻まれました。
もう一度札幌駅のコインロッカーを使う日がきたとき、きっとこの日の出来事が思い出され、笑顔になれるでしょう。自分の心が知っている宝もの、心あたたまる場所が、また一つ増えました。
今日も読んでくれてありがとう。