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ある中学生と富士通の思い出
「推したい企業」応募作品
世の中に企業はごまんとあるが、我々は何を基準にお気に入りの企業を設定するのだろうか。
僕が思うに、それは「思い出」だ。多くの人は企業分析の知識など持ち合わせていない。故に業界分析やら決算公告やらを見せられてもピンとこない。また、その会社や業界に関する専門知識も大抵持ち合わせていない。だから「新京成電鉄は日本の鉄道会社として初めてVVVFインバータ車を導入した凄い会社だ」とか言われてもリアクションのしようがない(新京成電鉄の社員と鉄道ファンは除く)。
そう、我々は企業について圧倒的に知識不足なのだ。じゃあどうするか。当たり前だが、自分の持っている僅かな情報を元に判断を下す。そして、その「僅かな情報」のなかでそれなりに大きなウエイトを占めているのが「思い出」だと思う。何かしらの体験とそれに伴う感情は、日頃のニュースよりずっと深く脳裏に刻まれる。例えば、初めて乗った飛行機がANAだったからANAが好き、いつも通勤で使っていて思い入れがあるから名古屋鉄道が好き、話しかけた店員さんがとても親切だったからイオンが好き、といった具合だ。
中学生だと、特定の企業を意識する機会はあまり無いので、相対的に一つ一つの思い出が重要になってくる。そういう意味で、このプログラムはかなり面白い試みだと思う。「このプログラム」とは、これのことだ。
その名も、クエストエデュケーション・コーポレートアクセス。
これは「教育と探究社」という企業が学校向けに提供している探究学習プログラムで、クエストカップという全国規模の大会も用意されている。今年は法政大学で開催するようだ。(クエストカップ・大会HP↓↓)
クエストエデュケーション・コーポレートアクセス(以下クエスト)は、実在する企業にインターンするという体で、チームで各企業から出されたミッションを達成するための新しい事業を考えるプログラムだ。今回は13の企業がこのプログラムに協力しており、その中にはLINEヤフーや富士通など有名企業も多い。最終的には、新事業を7分のプレゼンにまとめ、それを審査員が評価する。
各企業からのミッションは決して簡単なものでは無い。例えば
あなたと私の「尊さが守られる」社会を実現する富士製薬工業の新プロジェクトを提案せよ!
「文化の力」で世界をシンカさせるメニコンの新しい挑戦を提案せよ!
などだ。だから、まず始めに生徒は「尊さとは何か」「シンカとは何か」というところから議論を始める。また、新事業を考える過程では各企業の強み・特長・理念なども加味しなければならないため、必然的にその企業について深く調べることになる。そうすると、今まで遠くにあると思っていた「企業」という存在に自分も入り込んだような感覚になるのだ。何故こんなことを知っているのかというと、僕も過去にクエストを受講して全国大会まで進んだからだ。
もう1回言おう。僕は過去にクエストを受講して全国大会まで進んだ。すごいでしょ!?!?!?
なんだよ自慢かよ、と思った方。正解です。ここまでのおよそ1200文字は全てこの自慢のための前振りでした。もう自慢できたから満足、この記事はおしまい。
というのは流石に嘘です。これからが本編です。
僕が推したい企業、それは「富士通」だ。あの有名なIT企業。そうそう。8の字を横にしたマークの会社。
僕のチームはクエストで富士通にインターンし、ご縁があって全国大会に出場した。内容的に手を抜くわけにはいかず、富士通の新事業を考えに考え、全国大会出場が決まってからの1ヵ月は四六時中クエストのことを考えていた。比喩ではない。本当に四六時中考えていた。
その結果、富士通の大ファンになってしまった。
一旦関係無い話をしよう。人は恋愛するとき、まず気になる人を探す。そして自分の琴線に触れる人を見つける。だんだん惹かれていって、最終的にはその人のことを四六時中考えてしまう。つまり、人間の恋愛は
①気になる人を見つける
②恋愛感情が芽生える
③その人のことで頭がいっぱいになる
というプロセスを辿ることが多い。あくまで僕の偏見だが。
しかし僕と富士通の場合は②と③の順序が逆だった。富士通のことで頭をいっぱいにしなければいけなくなり、最終的にファンになってしまったのだ。相手に自分のことだけを考えなければいけない状況を作り出して恋心を抱かせる、いわば強制的恋愛のような手を使って僕を陥れたのがクエストであり富士通なのだ。
ではバックグラウンドの説明はここまで。やっとメインディッシュに辿り着いた。いったい富士通の何が素晴らしいのか、詳しく紹介する。
(ここまでの文字数:1957文字)
推しポイント① パーパスが格好良い
推しポイントの一つ目はパーパスだ。
パーパスとは富士通の企業理念のようなもので、社会における富士通の存在意義を定義している。そもそも「理念」では無く「存在意義」と言うところに、何があろうとそれを守り抜くという強い覚悟が見える。
富士通のパーパスは、
イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと
だ。この言葉のどこが良いかというと、「信頼」という言葉が入っていること。
「信頼」は、人間関係において前提となる感情だと思う。信頼できる人とは友達になりたいし、信頼できない人とはあまり付き合いたくないだろう。しかし、得てしてこの類いの感情は無視されやすいように感じる。それは何故だろうか。信頼とは、個々人が他人もしくは集団に対して抱く感情だ。そう、社会全体で見れば、個々人の感情なんて微々たるものに過ぎない。感情の特性上、共通項で括るのにも限界がある。それに、ビジネスの現場では一個人の感情より合理や利益が優先されるのが普通だ。ビジネスでも信頼度は重要かもしれないが、それは本来の意味の信頼では無く、倒産リスクが無い・品質が安定している、といった「ビジネスパートナーとしての信頼」ではないか。
でも、富士通は「そうじゃない」と言った。そういう世界の中で、富士通は「信頼」をもたらすことを目標に掲げたのだ。この時点でもう人間味があって素晴らしいと思うのだが、その次の言葉にも注目すべき点がある。
「…社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」
→これ、「信頼がなければ持続可能な世界とは言えない」というふうに読み取れないだろうか。
確かに、社会は人間の集まりだから、人間関係が冷えている(信頼が無い)状態というのは社会そのものの危機でもある。やっぱり個々人の感情を無碍にしてはいけないのだ。そして、この感情を守り抜くことが真の「持続可能な社会」に繋がると富士通は主張している訳である。たぶん。
そう考えると、持続可能という言葉の重みも変わってくる。
推しポイント② 社員の方がめっちゃ優しい
クエスト全国大会では、各企業の社員の目の前でプレゼンをする。
富士通ファンからすれば、富士通の社員なんて神様みたいなものだ。そんな神様の前でプレゼンした7分間、僕がどれほどの幸福感を感じたかは言うまでも無い。
富士通の社員さんは、僕たちのプレゼンをとても誠実に聞いてくださった。プレゼンしていると、聴衆が自分の話を聞いてくれているのかは意外と分かる。目つきとか姿勢とかで。富士通の社員さんは、ずっと我々の方を見てプレゼンを聞いてくれた。しっかりプレゼンを聞こうと思うと、意外と体力を使う。しかも僕のチームは発表順が後半だったから、既に相当疲れていたと思う。そんな中でしっかりプレゼンを聞いてくれたのが本当に嬉しかった。
プレゼン後の質疑応答でも、粗探しのような質問ではなく純粋に気になったことを聞いてくれたため、楽しい質疑応答になった。あと、質問する前に企画の良いところを褒めてくださったのが嬉しかった。
推しポイント③ オフィスめっちゃ綺麗
全国大会終了後、大会出場のご褒美(?)として「富士通本店・川崎工場」へ招待頂いた。富士通本店は、川崎市にある富士通の主要オフィスの1つ。めっちゃでかいビルだ。工場という名がついているが、生産は行っていない。
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写真は富士通HPより(https://pr.fujitsu.com/jp/news/2024/10/2.html)
富士通の社員以外は基本的に立ち入りできない、オフィスを見学させて頂いた。
オフィス、まるでカフェのようなお洒落さだった。てっきり四角いデスクが並んだ職場を想像していたからびっくり。ちなみに、階によってBGMや内装を変えているらしく、その日の気分に合わせて場所を選べるらしい。
写真撮影禁止だったのが残念!
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富士通のオフィスについては、この記事にも詳しく書いてありました。↓↓
とはいえ、説明してくれた社員の方によると、多くの人は出社せずにリモートで仕事をしているとのこと。僕たちが見学した際も、人はまばらだった。殆どの書類は電子化できているらしいので、特に問題は無いようだ。
推しポイント④ やっぱりすごい、技術力
やっぱりこれ。究極的にこれ。日本最大規模のIT企業の根幹は、やっぱり技術。
富士通本店には、コンピュータ黎明期から現代の最先端までの様々な製品が保存・展示されている。
例えば、1957年製の「FACOM138A」とか
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写真は富士通HPよりhttps://www.fujitsu.com/jp/about/plus/museum/products/computer/mainframe/facom138a.html
当時最新鋭の技術を結集させた、日本初の小型万能計算機(どこが小型やねんって思うけどね)。まず概算して、そこから正確な値に近づけていくという手法を取っているらしい。計算結果は接続されたプリンターから印刷される。製造から60年が経っているがまだ正常に作動する。我々が見学したときは、円周率の算出を実演して頂いた。情報処理技術遺産。
それから、少し前に話題になったエキマトペも富士通が開発している。
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エキマトペとは、駅のホームに置かれる、電車の接近放送や電車の音(「ガタンゴトン」とか「婦シュー」って扉が開く音とか)を文字に起こして表示するモニター。聾学校の生徒の声から生まれた。
それから、VR技術を活用した製品もある。僕は、VRで車の試乗ができる製品を体験させて頂いた(羨ましいでしょ?)。3Dゴーグルをつけると目の前に車が現れる。手に持ったリモコンでドアを開けたり、スイッチを動かしたりすることができ、本当に車に乗っている気分になった。再現度が本当にすごい。あまり身体を動かせない人、近くに車屋さんが無い人なんかはすごく助かりそうな製品だと思った。
こんなところだ。こんなに長くNoteを書いたのは初めてだ。疲れた。
創業以来、日本のIT業界に影響を与え続けた偉大な会社でありながら、「信頼」という人間関係そのものの感情を大切にし続けている。そんな富士通の魅力、お分かり頂けただろうか。
本当はもう少し書きたいところだけど、あと12分で「推したい企業」の募集が締め切られてしまう。だから、一旦ここで筆を置こうと思う。
最後までよんでくださりありがとうございました。(推敲する時間あるかな…)