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不動産屋さんのたくらみ

こんにちは、にっしーです。
若い頃の話です。
当時、格安で貸家に住んでました。
周囲はキツツキがコンコンと木を突いたり、ヒグラシが鳴いたりして、とても良い環境で気に入ってました。
最初は、なんでこんなに安いの?
事故物件!?
なんて頭をよぎりましたが、そんな怪しい現象もなく、いつしかそんなことも忘れ去ってた頃です。
不動産屋さんから更新の案内が届きました。
電話もあり、早々に来て欲しいと。
なんだろ?
更新月は数ヶ月先です。
やっぱり家賃を上げたいとかだったら困るな、なんてドキドキです。
でも来いと言われたからには行かなきゃいけません。

不動産屋さんに行くと、なんとなくの世間話から、お勤め先はどんな感じ? とか個人的な話に移り、本題は何!? とバクバクしながら答えてました。
そして家族の話になった時に、不動産屋さんの声が大きくなり、頭を抱えてしまいました。
「一人っ子なの?」
「はい、一人っ子ですけど……」
「あっちゃ~~、一人っ子か……。じゃあダメかぁ……」
何がダメなの?
そう思いますよね。
「イヤね、ウチの娘んところに、婿に来て欲しいな、って思ってて」
「はい?」
「これがね、親の私が言うのもアレなんだけど、ワガママな娘でさ。あんたみたく優しそうな、娘のワガママを受け入れてくれそうな人が良いな、って」
イヤイヤ、娘のワガママをたしなめろよ!
っては思いましたが言えません。
何せ家賃の更新で来てるワケですから。
ヘタなこと言って、家賃を爆上げされちゃたまりません。
「一人っ子かぁ……。じゃあ婿には来れないよねぇ」
頭を抱える不動産屋さんに、はぁ……、と曖昧に笑うしかありません。
「あのォ……。更新後のお家賃はどんな感じになるんでしょうか?」
「ん?」
「お家賃……」
「それそれ。あんた言葉遣いも丁寧だしさ。良いと思ったんだけどなぁ……。一人っ子じゃねぇ」
もう一人っ子問題から解放して欲しくてたまりません。
それに親が嘆くほどのワガママ娘も勘弁です。
当時、付き合ってた彼女もいましたし。
家賃どうなるの?
前のめる私に不動産屋さんが、ついにアンサー。
「家賃は今のままで良いから。忙しいのに、今日はわざわざ悪かったね」
ほっとすると同時に、全くだよ! とも思いましたが、それは言えないセリフ。
不動産屋さんの気が変わって、家賃爆上げは困りますから。

無事に音大でピアノを習ってるとかいうワガママ娘の婿候補という白羽の矢が抜けた私は、それを彼女に報告すると、手をパンパン叩いて超ウケられました。
こっちはそれどころじゃなかったんですけどね。
って、話でした。

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