伊那谷日記⑮市田柿を自分で干し柿にしてみて気がついたこと
今年は干し柿作ろうかどうしょうか?と悩んでいた。
なぜかといえば、この家は軒が浅く、洗濯物も雨がかかりやすい。家の中にもハンガーなどを引っ掛けるところが少ないので、干し柿を干して置けるところが思い付かなかったからだ。
今年は干し柿は諦めよう。そう思っていたのだけど…
いつもの直売所で野菜を物色していると、もう渋柿が出ていた。
渋柿は干し柿用に販売されていて、干す時に吊るしやすいように、ヘタの部分に枝を丁字状に残してあるのだ。
家に渋柿の木があれば良いが、もちろんないので、この渋柿を買って皮を剥いて干せば良いのである。
悩みながらも渋柿も物色。
市田柿と書かれた渋柿が2キロ単位で売っていたので、こちらの市田柿を使って干し柿を作ってみることにした。
飯田の方で作られている干し柿のことを市田柿と言うのかと思っていたのだが、どうも伊那の直売所に市田柿の渋柿が売られているということは市田柿って品種名だったのか…と今更ながらに気がつく。
品種名が干し柿のブランド名にそのままなったのかなと。
干し柿のブランド名ってそういうものなのかな?
後日また直売所に行くと、伊那市のお隣の駒ヶ根市の干し柿『あんぽ柿』が販売中。こちらは平核無と言う品種の柿を干したものと書かれている。
私はまだ干し柿が何たるかを知らなかったようだ。
ネットで調べると、あんぽ柿と言うのは硫黄燻蒸と言う工程を挟んだ干し柿のことらしい。色がきれいなまま出来上がるそうだ。一般家庭ではできそうに無い硫黄燻蒸なので、我が家ではあんぽ柿は作れないと言うことになる。
それはともかく、市田柿。
これまでも品種のわからない渋柿で何度か干し柿を作った事はある。渋柿としか購入時に書いてないので種ありか種無しかくらいの認識しか無かったのだが、干し柿用の渋柿を品種名で選んだのは初めてだった。
市田柿は少し楕円に近い形で、余り大きくない。種は無い。皮を剥くと皮が薄いのが分かる。実も少し柔らかいような気がする。
渋が強いのか、2つくらい連続して剥くだけで包丁と手がザラザラとしてくる感触は今までに体験した事が無かった。
品種によってこんなに違うんだと驚いた。
2キロと言っても大小混ざって17個。たいした量ではないので皮むきはすぐ終わり、ビニル紐に括る。ホワイトリカーをスプレーして、ハンガーに吊るして出来上がり。
今週は晴れ予想が続くので、外に出す。
2日程で表面が乾き、触ってもベタつかなくなって来た。
濡れるのが嫌なので雨予報の時は室内に取り込み、晴れれば外に出すを繰り返し10日程。
柿は半分位の大きさになって萎んでいる。
あぁ、小さくなってしまうと何かさみしいなぁと思う。干しあがってる証拠なんだけど、こんなに小さくなってしまうと、もっとたくさん作れば良かったと思ってしまう。
柿の木が欲しい…庭が欲しい…畑が欲しい…
欲は際限ない。
あまり長く干しすぎると硬くなりすぎので、干す日数を加減して、小さい柿は早めに、大きな柿は長めに干す。
また、柔らかくするためと、白い粉を吹かせるために全体を揉む。力を入れすぎると破れてしまうので注意しながら、干し柿をモミモミ…1日1回、3日くらいしたかな。
どのくらいがベストなのかはさっぱりわからないのだが、これで何とか例年出来ているので細かい事は気にしない。
モミモミした柿の表面につやつやした蜜の様なものが浮き出ている。
これは今まで見たことのない現象だったので市田柿だからこそかも知れない。
これまでの経験上、このまま白い粉が吹くまで干して置くと、干し柿がカチカチになってしまうので、昨年から冷蔵庫に入れて粉を吹かせる方法をとっている。
干し柿をひとつづつキッチンペーパーに包んで、ビニル袋に入れて冷蔵庫に入れておくと一週間から10日くらいで白い粉をふく。
今回はずぼらだったので2週間経ってから確認したら、しっかり粉を吹いていた。
市田柿、白い粉の吹き方もびっしりですごい。
ここまで来たら、そのまま冷凍保存に切り替え。自然解凍でいつでも干し柿を楽しめる。
冷凍庫の臭いが付いてしまうかも知れないので出来たらすぐ食べるのが一番美味しいとは思うけど。
しかし、私は柿が好きなので干し柿もあっという間に食べてしまう危険性が高い為、即冷凍。
後の楽しみに取っておく事にした。
今回も何だかんだ干し柿作りは成功した。干す場所が狭いので大量には作れないが、市田柿が家で干し柿にできて大変満足だった。
妄想上の理想の我が家の庭に、市田柿の苗一本、確定である。
ところで我が家には、箱でいただいた富有柿がある。柿は柔らかくなるのが早い。
私は硬い柿が好みなので、先ずはこれををたいらげることに専念しようと思う。