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カガクの扉を開く読本その6 核兵器を考える本編

はじめに


 ロシアによる、ウクライナ侵攻がなかなか終結を見ません。その中で核兵器の使用問題が浮上してきています。
 もし、ウクライナに核兵器が使用されたら、どんなことになるのでしょうか、都市は破壊され、何千万人の人の命が失われることでしょう。さらにウクライナという土地は放射能で汚染され、小麦などの穀物の生産も永遠にできなくなってしまうでしょう。これは、多くの小麦に依存している中東やアフリカ諸国の食料も奪い去ってしまいます。そして、その放射能はウクライナの周辺地域だけで無く世界中に拡散され、地球全体を汚染していくことになるでしょう。そのような結果が見えているにもかかわらず、核の使用を平然の言いのける。恐ろしいことです。
 そんな世界情勢の中、核兵器について考えるための本を何冊か紹介したいと思います。

1.核兵器開発の歴史


◎『原発はなぜこわいか』
 小野 周:監修 勝叉 進:絵 天笠圭祐:文 高校生文化研究所
(1980年が初版の古い本ですが、原子力について説明している本で、これだけコンパクトにしかもわかりやすく、しかも原子の構造から放射性物質について、核兵器開発の歴史、原子力発電所の問題点など幅広い知識が身につきます。この本ほどわかりやすい本は今のところ他にありません。原子力について基本的なことが分からない人にも、読みこなせるような本だと思います。)

◎『原子爆弾 ~その理論と歴史~』
 山田克哉:著 講談社 講談社ブルーバックス
(原子爆弾を中心として、原子物理学の発展の歴史が、わかりやすくコンパクトにまとめてあります。科学書として、あくまでも科学的な記述に終始しています。)

◎『原発とプルトニウム ~パンドラの箱を開けてしまった科学者たち~』
 常石敬一:著 PHP研究所 PHP Science World 017
(プルトニウムを始めとして、科学者が原爆開発にどう関わったかを示している本です。)

◎『日本原爆開発秘録』
 保坂正康:著 新潮社 新潮文庫
(第二次大戦中の日本の原爆開発研究についてよく調べている本です。よくここまで調べました。)

◎『ホームメイド原爆』
 J・A・フィリップス、D・マイケルズ:著 奥地 ・岡田 ・西俣 :訳 アンヴィエル
(あるアメリカの大学生が、核物質以外の部品について、普通に手に入るものを使って原爆をつくることができるかを、卒業論文として書いたというお話です。その論文は、即座に当局? に没取されてしまったそうです。どうやら本当のことだったようです。だれでも、よく考えればそのような物が作れてしまうというお話です。つまり、核兵器という物は、核物質さえ手に入れれば、誰でも作製が可能と言うことです。最近では、イランや北朝鮮が濃縮ウランの開発に力を入れているのは、そこがネックとなっているからなのです。)

◎『核の冬』
 M・ロワン・ロビンソン:著 高榎 堯:訳 岩波書店 岩波新書 黄版314
(この本は、核兵器の使用により、多量の粉塵が舞い上がり、太陽の光を遮ることで、地球全体が寒冷化する、いわゆる”核の冬”について、多方面から分析している本です。放射性物質に関しては考えられていません。)

◎『核解体 ~人類は恐怖から解放されるか~』
 吉田文彦:著 岩波書店 岩波新書 新赤版396
(人類は、核軍縮について考えていかねばならないのに、どんどん核拡散の方向に進んでしまっていることについて述べている本です。なんとかならないのでしょうか?)

2.原爆の被害について


◎『新版 1945年8月6日 ~ヒロシマは語りつづける~』
 伊東 壮:著 岩波書店 岩波ジュニア新書 156
(第二次世界大戦中の人々の暮らし、ヒロシマの原爆のこと、原爆開発のこと、原水爆禁止の動きなど、コンパクトに書かれていて良い本です。)

◎『15歳のナガサキ原爆』
 渡辺 浩:著 岩波書店 岩波ジュニア新書 416
(ナガサキの原爆投下の現場にいた人の話ですので、本当に現場にいるような感じを受けます。
 さらに、戦争中の人々の生活の様子なども良く分かって良い本だと思います。)

3,核兵器開発の影で


◎『ぼくたちは水爆実験に使われた』
 マイケル・ハリス:著 三宅真理:訳 文藝春秋 文春文庫
(水爆実験を見届けるために、南太平洋に行かされたアメリカ軍兵士の話です。こういう人たちは、詳しい内容は全く聞かされずに水爆実験の現場に連れて行かれ、その後放射線障害に悩まされたりしています。
 同じようなことは、ヒロシマに原爆を落とす前に、1945年7月16日にアメリカのニューメキシコ州アラモゴードで最初の核実験を行った時もそうです。現場近くで多くのアメリカ軍の兵士が見ていたそうです。たしか、それについての本もあったと思うのですが、ちょっと今手元に記録がありません。あったら、追加でお知らせします。)

○『プルトニウムファイル』(上下全二冊)
 アイリーン・ウェルサム:著 渡辺 正:訳 翔泳社
(原爆を開発するために、ニューメキシコ州ロスアラモスで、研究を行っているときに、問題となったのが、原料となるプルトニウムは人体に対して毒性があるのだろうかと言うことでした。実験中に研究者がプルトニウムと接触する機会が増えるに従って、安全性がどうなのかというのが当時は分からなかったのです。そこで、何をしたかというと、病院の患者などを使って、プルトニウムの溶液を、治療のためと称して注射をして、尿や血液などの検査を行って、毒性などを調べていたというお話です。もちろん、その患者には説明は一切ありません。ひたすら、データ集めの実験台として検査などをしていたというのです。恐ろしい話です。戦争中というのは何でもありの世の中になってしまうのですね。
 しかも、この人体実験は第二次世界大戦後も続けて行われていたと言うことです。
 さらに、日本の東海村で核物質の臨界事故が起きているのですが、同じような事故がアメリカでも起こっていて、一人の若者が自己の犠牲になっていることも書かれています。
 この人体実験の話は、クリントン大統領の時に、調査委員会がつくられて、はじめて明らかになったとのことです。それまでは、国民には全く知らされていなかったことでした。)

核実験の時にアメリカ兵が被爆した話について、本の題名が分かりましたので、追加で入れておきます。

○『アトミックソルジャー』
 H・ローゼンバーグ:著 中尾ハジメ他:訳 社会思想社
(出版社は無くなってしまいましたが、この本は、核実験の時に被爆した兵士の話です。興味のある人は古本屋さんなどで探してみてください。)

○『カウントダウン・ゼロ』
 O・ケリー、T・サッファー:著 春名幹男:訳 社会思想社
(この本も出版社は無くなってしまいましたが、ネバダの核実験で被爆した兵士の話です。)

さいごに


 今回は、原子爆弾についての本を中心に紹介しましたが、他にも原子力に関してはたくさんの本が出ているのですが、一般の人はあまり関心が無いのか、読んでいる人が少ないと思いますので、そのあたりの紹介をしていきたいと思います。

扉の写真
 JR静岡駅のコンコースに置かれていた、謎の物体。60って何? 今はもうありません。

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