【感謝という気持ち】#3 弟
弟へ
いつもありがとう。
ふと思ったんだけど、兄弟姉妹の年下のほうが年上のほうに向かって、二人称として「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」って言うことあるじゃんね?
でも、逆に年上のほうが年下のほうに向かって、二人称として「弟」「妹」って言うことあんまなくない?
なんか、ちょいとふざけたノリというか流れというか空気の中で「おい、弟よ!」とか言うことはあるにしても(あるかな?)、普段の日常会話の中ではめったに言わないよね。
それと一緒で(やごめん一緒かはわかんない)、会社とか学校とかで下の人が上の人に「先輩、お疲れさまですっ!」っていうことはあるけど上の人が下の人に「後輩、これ部長に提出しといてよ」って言うこともあんまりないよね……。
ここでわたしが声を大にして訴えたいのは、「提出ぐらい自分でしろよな」ということなの。
なんでもかんでも部下任せにしてさ、そういう上司に限って、自分はリクライニングMAX倒したゲーミングチェアにふんぞり返って、全指で鼻ほじりながら業務中に仕事のフリしてデュアルモニターでえっちな動画でも観ているのです。
お気に入りの作品を2画面同時再生して、裸眼立体視セルフVR自慰に耽っちゃっているのです。
そして無慈悲なことに、その時間にもそいつにはお給料が発生してるのです。
まったく。これだから6月生まれは。
そういえば以前わたしが書いたえっちな小説でも、ヒロインは主人公のこと「せーんぱい♡」って呼ぶことがあったけど、主人公が「やあ後輩」とかって言ったことはなかったような気がします。
これって、何か理由あるのかな?
日々日本語に関する知識を『ゆる言語学ラジオ』のみで身につけているわたしだけど、こればっかりは知識を持ち合わせてないので!!
わたし、知りたいでーす!!!!
あ待って、
みんな、
ちょっと待って
あのさ、今、
「わたし、気になります」って言うと思ったでしょ。
ね。
正直に言ってみ?
「わたし、気になります」って言うと思ったんでしょ?
言わないよ?
なぜならわたしは『遠まわりする雛』をなくしてしまったから。
ほかはすべて文庫で持ってるのね、『遠まわりする雛』も確実に高校二年生までは家にあったはず。
それなのに、いつの間にか家出してしまっていた。
本を紛失するなどありえないことです。著者の方に対してあまりに無礼で無遠慮で無原罪で無修正。
ゆえにわたしは『氷菓』から台詞を引用することを自らに未来永劫禁じておるのです。
さても『氷菓』といえば主人公の奉太郎氏は元古典部員の姉を持つ弟でしたが、この記事の主人公は元黒髪の姉を持つ我が弟です。
わたしの弟は本当に凄いです。
中高ずーっと演劇部で、最終的に部長にまでなって文化祭公演を大成功させて、部活一筋かと思いきやなんでか勉強もゲームも得意で現役でちゃっかり早稲田大学に入学し、大学でも演劇専攻を志して演劇サークルに入って……と、筆舌に尽くしがたいほどボン・ヴォヤージュな大学生活を送っているのです。
こんなの、まるで森見登美彦作品の主人公の真逆の存在です。森見登美彦作品の主人公が最も毛嫌いするタイプの大学生です。
たいへん人望があるので中高の友だちも多く、同じ演劇部だった子たちと長期休みには旅行に行くなど、充実した日々を過ごし狂っている弟。
(旅行って、男女混合グループですって!しかも温泉旅館ですって!!えっち!!!)
(逆にそんなシチュエーションでえっちな展開にならないの不思議すぎん!?実はなってんのかな??今度聞いてみちゃお〜〜)
かたや、入った大学でひとりも友だちができず不登校からの中退からの引きこもりと、ハダカデバネズミの吐瀉物のように醜虐した日々を過ごし狂っていたわたし。
同じ血を分けた姉弟のはずが……いったい、何がここまでの差を生んだのか。
その真相.mp3はギガファイル便に乗ってインターネットの海の藻屑と消えてしまったことは既に語った通りですが、兎にも角にもわたしがいちばん弟に感謝しているのは、こんなにも違うのに、こんなにも仲良くしてくれてるところです。
まーねまーね、ゆーたかて姉弟なわけだから、中身や生き様が多少違えど仲良くはしてくれんじゃないの?
と、おっしゃる方があるかもしれませんが、肉親という要素を考慮に入れてもなお、わたしと弟は決して交わることのない人種。
「Aを考慮に入れる」は英語でtake A into accountといったりするけれど、こんなTOEIC L&R Test 820点以外になんの取り柄もないわたしと、明らかに住む世界の違う弟が、なんと!仲良くしてくれてるのです。
どのくらいかというと、夜な夜な弟がわたしの部屋に来て脈絡のない話に花を咲かせたりとか。
そう、それはちょうどわたしのnoteみたいにね。
脈絡のない話に咲く花なんて、さながらAIが生成したショクダイオオコンニャクのようだね。
ね、すごい綺麗。
なんだか一瞬の魔法みたいだね。
そんな『夏子』の歌詞みたいな。
『夏子』の歌詞みたいなっていうか『夏子』の歌詞そのままじゃない??
あるいは、月に一回ふたりだけで焼肉に行ったりとか。
これはもちろんわたしの奢りです。
もちろんとか言っちゃだめ?
なんか、年上が奢るのが当然みたいなスタンスって、昨今の多様性がどうのこうのみたいなノリ的にあんまりよくなかったり??
そんなふうに、そんなふうに。
まあわたしなんて、迂愚にも赤く染めてしまって傷みに傷んで傷み果てた髪がくしけずるたびにぶちぶちと抜け洗面所に毎朝赤毛を落とすばかりで、わたしから彼に与えてあげたものなんて何ひとつないのです。
ただ、彼よりも6年長くこの世に存在しているだけ。
むしろわたしのほうが、弟からたくさんのことを教えてもらっています。
流行っているコンテンツや世の中のルールなどを。
弟がいなかったらわたしは森七菜さんの下のお名前を「ななな」じゃなくて「なな」と読むことさえ一生知らないまま息絶えていたでしょうし、上白石萌音さんと若い頃の宮崎美子さんの見分けも付けられないまま薨っていたことでしょう。
弟へ
わたしを姉でいさせてくれてありがとう!
冒頭で二人称の話をしましたが、あなたはたまにわたしのことを「うぬ」というふうに呼びますね。
調べてみると「二人称の代名詞。相手をののしっていう語」とのことでした。さすがです。あっぱれ。
モンスターハンターワイルズ、発売したら一緒にやろうね。
ごめんね。ライズぜんぜんできなくて。
あなたがよく言うのなんだっけ?
あそうだ、わたし、ライズって発売日に買ったんだ。
「発売日に買ってまだ上位のナルハタタヒメも倒してないの、この世でうぬだけだよ」
この言葉を、わたしは弟から耳が懐妊しそうになるくらいたくさんかけられてきました。そういうところも好きよ。
血のたくさん出るゲームはどうしても苦手で、なかなか進められないけれど、あなたがわたしとモンスターをハンティングしたいと言うのなら!頑張ってみよう!!そうしよう!!!
わたしは密かに、そう心に決めているのだよ。
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