探索とハクスラに没頭できるファミコン風RPG「Crescent Tower」レビュー
メタファー、ウィズダフネ、ロマサガ2RS、ドラクエ3リメイクなどなど、2024年下半期は大型RPGのリリースが続いていますが、たまにはもう少し気軽に遊べるレトロRPGもいかがでしょうか?
というわけで「Crescent Tower」です。
2024/11/22現在アーリーアクセス版で500円で販売しています。
体験版は無料ダウンロードできるようです。
なお、僕が知ったのは以下の動画がきっかけです。
この動画制作者のプレゼン力はすこぶる高く、このレビューを読むよりこっちを観る方が早いという説もあります。笑
ざっくり説明
探索パートは「ウィザードリィ」や「世界樹の迷宮」のようにただただ町と迷宮の出入りを繰り返すシンプルな作り、戦闘はファミコン時代FF風なサイドビューです。
と基本要素はシンプルながら、転職システムやスキル継承もあり、またダンジョン内には職業の固有スキルを絡めたギミックあり、と工夫が盛りだくさん。
そして、ファミコン風RPGといっても、ファミコン時代のような不親切さ・理不尽さ・もっさり感などはなく、システムも親切ですし戦闘シーンもコンフィグで最速にすればかなりスピーディで快適。
しっかり令和適応したレトロRPGです。
プレイ時間は僕の場合初回クリアまで5時間くらいでした。
なお、プレイ開始時に難易度を2段階から選ぶことができ、僕は易しい方を選んでいますので、難しくするともう少しかかると思います。
(Boothの販売ページには想定プレイ時間10〜20時間と書いてありました。)
アーリーアクセス版だけど大丈夫?
アーリーアクセス版はエンディングが簡略化されていたり、一部の機能が未実装だったりしますが、普通にフルで通しプレイできます。
僕の場合は一度だけ不具合で戦闘中フリーズしましたが(ver.0.2.2)、 該当不具合はver.0.2.3で解消されており、その後ver.0.2.5にアップデートしてからは問題なく遊べました。
探索
探索パートはこのような画面です。
視界の概念があり、部屋の外から部屋の中は見えず(もちろん逆も)、自分の周囲の数マス以外には光が届きません。
上の画像ではそこそこ遠くまで光が届いていますが、これは呪文で視界を広げた状態。呪文やアイテム(たいまつ)がない状態だとかなり視界が狭いです。
また画面右側に「デンコウ」「ゆうき」などとキャラクタごとのスキルが並んでいます。
これらのスキルは戦闘で主に使うものですが、たとえば「たいあたり」で目の前のガレキを壊すなど、探索中に使うことでマップ上のギミックを突破することができます。
この部分うまく工夫されたシステムだなぁと感じます。
拠点
拠点は塔の入り口と繋がっているもの、1つだけ。やれることは以下です。
ギルド:パーティの編成とキャラクタの作成・転職
商店:中盤あたりまで使える武具やアイテムの購入・売却
教会:死亡や状態異常からの復帰
図書館:ゲーム内ライブラリ的なもの(アーリーアクセス時点では限定的な機能)
回復は拠点に戻ると自動的に行われますので、馬小屋や簡易寝台にちまちま泊まる必要はありません。やさしい。
なお、序盤はチュートリアル的な展開になっていることもあってギルドは使えません。
ゲームを少し進めると解放され、キャラクタ登録などが自由にできるようになります。
育成・キャラメイク
キャラクタは10種類のクラス(うち1つは主人公専用の「勇者」)と3種類の種族で構成されます。
キャラクタはレベルが上がるとクラスに応じたスキルを習得できます。
さらに、転職する際にはそのスキルを「継承」することができます(呪文などの永続継承スキルと、転職時に1つだけ選べる選択継承スキルがあります)。
また種族によっても固有スキルがあり、たとえば「エルフ」であれば戦闘中に1回だけMPを回復できる「瞑想」というスキルを使えます。
なので、「エルフ」x「魔術師」は当然相性が良いねとか、さらにそこにアドオンするならこの選択継承スキルが向いてるなとか、そういった工夫を楽しむことができます。
さらに、呪文はクラスごとのスキルで覚えるほか、ダンジョンの宝箱やモンスターからのドロップでたまにもらえる呪文書から習得することもできます。
このように、この規模のゲームとしては育成の幅はかなり広く、本作の大きな魅力の1つと言えます。
バトル
バトルはサイドビューのターン制コマンドバトル式。
最近のゲームにあまりついていけていない人でも安心です。(たとえば僕とか。)
こちらのパーティ最大5人に対して、敵は多くて10体程度です。
単体で登場するような強めの敵を除けばザコ敵はだいたい1〜2発で沈むくらいの設定で、反面敵からの攻撃はそこそこ苛烈です。
なので、ダラダラ戦うというよりはスピーディに敵を殲滅していくプレイ感になります。(難しいモードの場合はちょっと感覚違うかも?)
また、序盤のストーリーで2人めとして必ず加入する「盗賊」クラスのキャラクターはモンスターからアイテムを盗むことができます。
モンスターには複数の所持アイテムが設定されており、どのモンスターが何を持っているかは「探検家」のスキル「コンパス」で全て調べることができます。
これはウッキウキでアイテムハンティングしたくなっちゃいますよね!
グラフィックとサウンド
本作品はUnityという現代の高機能なゲームエンジンで作られていますが、ファミコン風ということでしっかりツボを押さえています。
グラフィックに関してはスクショを貼っていったので伝わると思いますが、スプライト(1キャラクタ)あたりの使用色数をあえて抑えてファミコンっぽい仕上がりになっています。
サウンドも良質な8ビットチップチューンで、フロアが進むとフロアの雰囲気に応じた曲に切り替わるのでその点も楽しめますし、頻繁に聴くことになる通常バトル曲は良い意味でベタに熱い曲で素晴らしいです。
なお、ファミコン風ですが画面サイズは16x9(480x270ドット)で、現代のプレイ環境に適合させています。
ファミコン(256x224)より特に横幅がワイドなので画面内に出せる情報量が多く、今のシーンで必要とする操作やコマンドの説明なども全て画面に表示してくれています。
個人的に残念なポイント
とここまで良い点ばかり挙げてきましたが、レビューたるもの、両方の観点を書かないと「お前本音で書いてんのか、あぁ?!」とうさんくさく感じるかも人もいるしれないので、個人的に残念だったポイントも挙げておきます。
マッピングが面倒
探索パートのスクショの右上のほうにミニマップが表示されていると思いますが、これは自動でマッピングされるのではなく、アイテムや呪文で自分でマッピングしないといけません。
ある程度ゲームが進むと、「探検家」を連れていれば自動マッピングのスキルを覚えるのでこのストレスから解放されるのですが、特にマッピング呪文も使えない再序盤は武具もロクに買えないまま「ふしぎなちず」を商店で書い続けて少し歩いてはマッピングしていく羽目になります。
さらに、マッピングできるのはあくまで視界の範囲内なので、あわせて「たいまつ」で視界も広げてあげる必要があるので、「たいまつ」→「ふしぎなちず」→ちょっと歩く→「ふしぎなちず」→(中略)→ある程度歩くと明かりが弱るのでまた「たいまつ」→「ふしぎなちず」…という具合になります。
まあ嫌なら自分で手でメモしろよという話でもありますが、全体的にストレスフリー設計な本作において、ほぼ唯一ストレスに感じた点がコレでした。
育成システムを堪能する前にプレイが終わる
前述の通り本作のキャラメイクと育成システムはよく練られており、「最初こう作ってこのレベルまで成長させてからの転職アレで…」と妄想が捗ります。
が、普通にプレイしていると、初期職のまま、クラスのスキルをマスターするレベル(16)に達するまでもなくラスボスを倒せてしまいます。
(システムを把握するために転職もしてみたのですが、しなくても特に困りはしなかったなという印象。)
この手のシステムで思い浮かぶ金字塔ゲームは僕の場合FF5なんですが、FF5だと普通にプレイするとジョブをいくつかマスターして、ジョブを極める旨みを味わいながらラストを迎えるくらいのゲーム設計になっていて、それが「次にプレイするときはこういうルートで育成して…」と楽しみを増幅させていた記憶があります。
せっかくここまで練り込まれているなら、本作もそういった調整(転職できない「勇者」は例外として、最上層に到達する少し前に他のメンバーはマスターレベルに到達するなど)でも良かったのではないかと思いました。
もっともここは「アーリーアクセス版だから」の可能性も高いです。
普通にクリアするだけならあれこれ工夫しなくてもそれなりにレベルを上げればエンディングまで到達できて、製品版で追加される裏ステージや裏ボスに挑もうとするとスキル継承した上位職でないと厳しい、といったバランスを作者さんは狙っているのかもしれません。
などと書きましたが…
とはいえ、少年期からおっさんに至るまでちょこちょこゲームをプレイしてきましたが、どハマりしたゲームも含めて「不満点が1つもなかった」というゲームなどほぼ存在しません。
なんなら僕自身がインディーゲーム制作をしておりますが、自分が作った「ぼくのかんがえたさいきょうの…」なゲームですら、作り終わってみると不満があるくらいです。笑
(今記憶を辿ると1つだけ思い当たりましたが、よりによってフリゲでした。)
本作はわずか500円。
レトロRPGが好きで、6〜10時間くらいなら時間を捻出できるという方は(現代人ゲーマーには時間のほうがネックですよね!)、買って損のない一作だと思います。