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GⅠ阪神ジュベナイルフィリーズ
序文:「言わせてみてぇもんだ」
「天才」という存在は、いったいどのように定義づけるべきだろうか。
言葉の意味をそのまま辞書で引けば「生まれつき備わったすぐれた才能。そういう才能をもっている人」と記されている。
人が生まれつき持っている才能には当然個人差があるし、我々も良くそのことは周知している。ではどの程度生まれつきの能力が秀でていれば「天才」で、どの程度までが「凡人」なのだろうか。その線引きもまた人によって異なるだろう。
「犯罪人類学の祖」と呼ばれた精神科医チェザーレ・ロンブローゾは「天才は狂気である」と言い、天才と狂人の境界は紙一重であることを強調した。
また元メジャーリーガーのイチロー外野手は天才について「自分の可能性を信じ、夢をもち、それを目標に変えて日々努力する人のこと」と、才能と日々の努力が表裏一体であることを説いている。
日本競馬史において突出した才能を有した騎手は何人もいるが、早くからその通り名で呼ばれていたのが「天才」福永洋一である。1968年にデビューすると70年には最多勝利数を飾り、瞬く間にトップ騎手の仲間入りを果たした。最高の名誉である騎手大賞に輝くこと5回。79年の落馬事故によって引退するまで。競馬界における「天才」といえば福永洋一を指す言葉に他ならなかった。
その天才の嫡子として生まれ、父と同じ道を志した福永祐一は「天才」として活躍するべく宿命を背負っていた騎手だったかもしれない。
実際、その才能を証明するかのように福永祐一は常に第一線で結果を残し続けてきた。
96年デビュー。その年に53勝を挙げると、同年JRA賞最多勝利新人騎手を獲得。99年プリモディーネ騎乗で桜花賞勝利、中央GⅠ初勝利を飾った。以降もコンスタントに活躍を続け、2020年にはコントレイルに騎乗し史上3頭目の無敗による三冠を達成。22年に鞭を置くまで常に一線で走り続けていた。
そんな福永祐一にとって、父・洋一の存在は尊敬の対象であり、常に比較対象とされる心の中のライバルのような存在だった。むしろ福永にとって父以上に強大であり、超えられない壁として目の前に立ちはだかってきた男がいた。
それがもう一人の「天才」武豊である。
競馬ファンでなくとも誰もが知るこの国民的人気の騎手は、今なお最前線で馬の背に跨り、結果を残し続けている。
「天才」の血を引く福永は、同じ時代に生きるもう一人の「天才」の背中を追い続け騎手人生を全うしてきた。与えられた天賦の才も、より傑出した才能の前では霞んでしまう。
実父と先達という、二つの大きな才能の狭間でもがき続けたその男は、真の「天才」だったのか、はたまた努力の人だったのか。
きっと私たち凡人には想像もつかないような境地で、日々を駆け抜けてきたに違いない…。
さて、そんな福永祐一が騎乗してきた数多くの名馬のなかに、05年の牝馬クラシックを湧かせた馬がいた。
05年と言えば無敗の三冠馬ディープインパクトとその鞍上・武豊が日本競馬を席巻していたが、その時牝馬戦線においても一頭抜きん出た「マイルの女王」が誕生していた。
その馬の名はラインクラフト。
05年桜花賞とNHKマイルカップを制した牝馬だ。
アメリカでGⅢ重賞などを勝ち18戦6勝の成績を残したエンドスウィープは、引退後種牡馬入りし米国と豪を行き来するシャトル種牡馬として活躍した。2000年に豪と日本との間でのシャトル供用が始まると、3シーズンに渡り日本で産駒を残していった。エンドスウィープ産駒の数は200に上るが、その内日本で生まれ最も結果を残したのがトウショウ産業が所有していたスイープトウショウで、05年宝塚記念の他GⅠで3勝を挙げた。
スイープトウショウが生まれた翌年の02年に、マストビーラヴドという馬の間に生まれたのが後のラインクラフトである。
マストビーラヴドは中央で3戦して1勝も挙げることが出来ずに退いていたが、その父はかのサンデーサイレンス。母ダイナシュートは重賞3勝を挙げた活躍馬だった。ダイナシュートはマストビーラヴドの他にも産駒を輩出しており、高松宮記念勝ちのアドマイヤマックスなどスプリント路線で活躍した馬がいた。
ラインクラフトを所有した馬主は、大沢電機の代表として知られた大澤繁昌だった。ラインクラフトは牧場時代から気性が素直で、それでいて乗り心地も良く、大器になる予感を漂わせていたという。
栗東の瀬戸口勉厩舎に入厩したラインクラフトは04年10月、京都新馬戦でデビューを果たす。鞍上は福永祐一だった。
この当時の福永は同じく栗東の北橋修二厩舎に身を置いていたが、瀬戸口調教師ともデビュー当時から親交深く可愛がってもらっていた。福永は北橋を師匠、瀬戸口を恩師と言い、同じように慕っていた。
血統の評価は高くも、直前の追切では目立ったところもなく当日は3番人気に支持されていた。五分の発馬から3番手の好位につけたラインクラフトは、4コーナーで外に持ち出されると福永の鞭でゴーサインを入れられ急加速。2着の馬に5馬身差をつける圧勝。レースは比較的ゆったりと流れたにもかかわらず、直線ではメンバー2位となる末脚だった。
非の打ちどころのないレースぶりに、陣営は2戦目に当初予定していた条件戦ではなく、重賞のファンタジーSを選択。鞍上・福永祐一も「この調子なら期待できる」と自信を覗かせた。
ファンタジーS当日は2番人気に支持されたラインクラフト。スタートこそ若干の出遅れ気味だったものの、前走同様素早く好位を確保すると、直線進入時に先頭に立ち、後続を突き放しにかかった。
自信を持って臨んだとはいえ、2戦目でいきなり重賞初挑戦。同期のライバルたちがひしめき合う中どれだけ走れるか不透明だったのが陣営の本音。にもかかわらず、新馬戦の時と同様に他を寄せ付けない力強い走りをするラインクラフトに、誰もが目を見張った。2着のモンローブロンドに4馬身差をつける、2戦連続の圧勝劇だった。
「抜け出すのが早かったかと思ったが、途中でターフビジョンを眺める余裕もありました」と勝利騎手になった福永は淡々と語った。
この勝利を以ってラインクラフトは、クラシック候補の有力馬の一頭として認知されるようになったのだった。
次走、陣営は満を持してラインクラフトを阪神ジュベナイルフィリーズに出走させることに決めた。2歳牝馬の頂を競い合うGⅠレースである。
2戦連続で勝ちはしたが走った距離は1400m。ここで1F延長のマイルGⅠへ挑むことに若干不安の声も聞こえたが、鞍上の福永にいたっては特に気にするでもなく、余裕をもってレースに臨んでいた。
「この時期の牝馬であれば、距離のごまかしはいくらでも利く」
むしろスプリントとマイルの中間距離で結果を残し続けていたことにより、今後のレース取捨に選択肢が増えることに利点を感じていた。
福永祐一という騎手は常に馬の将来、その先にある未来を考えて騎乗を心掛けるような騎手だった。デビューから数えてもうじき10年になる。若手の頃のように目先の一勝を追うだけでなく、その先も続くであろう馬の未来を見据えて騎乗をしなければならない。誰から言われるでもなく、経験とともに己のなかに芽生えてきた責任感がそうさせていた。またその考え方が、自分に仕事の機会をくれる馬主や調教師先生に対する、一番の恩返しになるとも思っていた。
2戦連勝、内容的にも圧勝だったこともあり、ラインクラフトは初のGⅠレースで1人気に支持されていた。3枠の好枠を引き、体調も万全。優勝は堅いかと思われたが、ここで意外な落とし穴が待ち受けていた。スタートを決めたまでは良かったが、行きっぷりの良さが災いして、前に行く気勢が強くなりすぎてしまったのだ。福永は必死に抑え込んだが、前2走よりも明らかに折合いを欠いてしまった。
なんとか持ち直し直線で一気に攻勢に出たが、追込みも届かず。結果は3着、初の敗北を喫した。
「この結果は来年に繋がっていくと思う」と福永は前向きなコメントを残したが、内心はかなり落胆していた。
その後冬場はレースを使わず、春のクラシック挑戦へ向けて準備が進められた。
年明けの始動戦はGⅡ重賞フィリーズレビューを選択。もう一度1400mを走って自信を取り戻したかった。このレースにも同期のライバルたち、春のクラシック戴冠を狙うシンデレラ候補たちが集まっていた。サンデーサイレンス産駒のディアデラノビア、エアメサイアといった未来のGⅠ馬候補が立ち塞がった。エアメサイアには福永がデビュー当時からその背中を追い続けている先輩、武豊が騎乗していた。また同レースに出走していたデアリングハートは、後の三冠牝馬デアリングタクトの祖母になる馬である。
素質馬が揃った中にあってラインクラフトは再び1人気に支持されていた。前走敗けはしたが、ファンはまだまだ彼女のことを見限ってはいなかったのだ。
ゲートが開くと、ラインクラフトは落ちついてスタートを切る。道中、いつもよりも後方の位置取りでレースを進めた。前走の失敗を踏まえた、鞍上福永の選択だった。3コーナー付近から各馬が仕掛け始める、だが福永はまだサインを出さない。直線に入り、馬場の真ん中からやや外目に進路を確保すると、ラインクラフトにスイッチが入る。先頭はすでに叩き合いを演じていた。一完歩ごとに距離を詰めるとゴール線直前で先を行く3頭をまとめて捻じ伏せた。凄まじい勢い、そして人気に応える勝利に場内は沸いた。
このレースではギリギリまで追い出しを待った福永の判断が光った。もちろん彼は勝ちに行くつもりでレースを展開していた。だが常に馬の将来を思慮する騎手の頭の中には、すでに次走以降のイメージも湧き上がっていた。
「これでいい形で本番を迎えられる」
再びマイル距離へと戻る桜花賞を考え、得意の1400mであっても脚を溜める作戦を勘案し実行していた。目先の勝利を手に掴み、さらにその先の未来も同時に見据える。熟練身を増してきた鞍上に導かれ、ラインクラフトは最高の状態でクラシックに臨んでいった。
クラシック初戦桜花賞。ここで一つの問題、というより話題が持ち上がっていた。ラインクラフトの鞍上を務める福永祐一には、もう一頭のパートナーが存在した。新馬戦からGⅢフラワーカップまで破竹の3連勝。スペシャルウィーク産駒のシーザリオである。実力騎手が人気馬を取捨する、という光景は珍しくないが、こと牝馬のクラシック候補となればそうそうある話でもない。福永本人にとっては悩ましい選択と言えた。大方の見解はデビューからマイル以上の距離を走り続ける無敗のシーザリオで、距離適性の観点から桜花賞では有力視されるはずだった。次走のオークスを考えても長い距離を走れるに越したことはない。当然福永も彼女を選ぶはずだろうと思われた。
だが福永祐一本人が指名したのは、フィリーズレビューを共に戦ったラインクラフトだった。
この選択は少々意外とも言えたが、恩師と慕っていた瀬戸口調教師との接点を重んじたことが大きな理由になった。だがなによりプロ騎手として、ラインクラフトの方により勝利の可能性を見い出しての選択でもあっただろう。
桜花賞本番は2番人気で当日を迎えた。1人気はシーザリオで、鞍上は吉田稔だった。福永自身が選んだにも関わらずラインクラフトが1人気に支持されなかったのは、距離適性の面でやはりシーザリオに一日の長があるだろうという見方をされていた。さらに阪神マイルでは不利とされる、大外17番枠をラインクラフトが引き当ててしまった点も大きかった。
とはいえ福永はそんなことを気に留める様子もなく、レースへの勝ち筋を見つけるため集中していた。馬が行きたがる仕草を執拗に見せることさえなければ、絶対的な能力では引けを取らないと考えていた。いかにスムーズに運べるか、まずはその一点だけに集中するのだ。
ゲートが開くとモンローブロンドがハナを切り、淀みのないペースを演出する。桜花賞らしい高速ラップを刻みそうな展開だ。
福永は手綱を引くことなく、流れに乗せて馬を進めた。後続勢の差し脚も気になるが、なによりスムーズに走らせることが肝要だと思っていた。
直線残り300m、先頭に代わったデアリングハートを捉えにかかる。残り200mを切ったところで2頭の叩き合いに変わった。ラインクラフトが僅かに先頭に立つが、この時後ろから猛烈な勢いで飛んでくる馬が一頭、シーザリオだった。まとめて差し切ろうとするシーザリオ、粘るラインクラフト、デアリングハート。3頭団子状態で決勝線を横切った。
勝ったのはラインクラフトだった。僅差に見えた決着だったが、鞍上の福永は危うさを感じてはおらず、見た目以上に余裕差のあるレースに感じていた。
「馬の力を信じて、自信を持って乗りました」福永は笑顔で答えた。
桜花賞を勝ったのだから向かう次走は当然オークスとなる、それが常道だ。ところが調教師の瀬戸口が選んだ3歳GⅠレースは、オークスではなくNHKマイルカップだった。桜花賞と同じマイル戦なので選択する理由とはしては理に適っているが、当然のことながら別のローテを歩んできた牡馬たちとの激突することとなる。それでも瀬戸口はこのマイルGⅠを戦い抜く決意を固めた。
またこのレースにはラインクラフトだけでなく桜花賞で3着、フィリーズレビューで2着に入ったデアリングハートも参戦を表明していた。GⅠレース・NHKマイルカップは例年以上の盛り上がりで本番を迎えようとしていた。
レース当日、ラインクラフトは2番人気に支持されていた。牝馬の参戦といってもGⅠ馬、出走馬の中では断トツの実績を誇る。ファンも彼女が牡馬たちをなぎ倒す姿を夢想していた。一方、1人気に支持されたのがシンザン記念勝ちのペールギュントで、GⅠ朝日杯では3着に入った戦績もあった。鞍上は武豊だった。
NHKマイルカップはマイル戦でありながら例年スピード自慢の若駒が揃うレース、早いペースに陥ることが多いがこの年は少し違った。さしたる逃げ馬がいなく、エイシンヴァイデンが押し出される格好でハナに立っただけで、全体的にスローペースの展開になったのだ。
ラインクラフトはいつも通りスムーズに流れに乗り、道中4番手の好位につけた。武豊とペールギュントは最後方から進出の機会を窺っていた。
直線進入時、ラインクラフトは先を行くエイシンヴァイデンの内を突いて猛烈な勢いで上がってきた。残り300mで早々と先頭に代わる。直線の長い府中、少し早仕掛けにも見えたが福永は思い切りよく行った。残り200を切ったところで後続を突き放しにかかる。1人気のペールギュントはまだ後方でもがいている。外側から並びかかる一頭がいる、同じ牝馬のデアリングハートだった。必死に食らいついてくるがラインクラフトには届かない。彼女がこの時叩き出した上りタイムは33秒6、出走馬中最速の上がりだった。
常識から外れたローテーションで臨んだ一戦、このレースを制したの桜花賞馬のラインクラフトだった。
桜花賞からのNHKマイルを勝利した馬は、あれから時を経ても未だにラインクラフト一頭のみ。そしてこの時の牝馬によるワン・ツーフィニッシュも、当然史上初の快挙である。
それから2週間後、再び東京競馬場にて今度は桜花賞馬不在のオークスが開催された。勝ったのはシーザリオ、鞍上は福永祐一である。この年の春GⅠで、福永は牝馬に騎乗し3勝を挙げる活躍。この頃からファンは彼のことを「牝馬の福永」と呼び始めていた。この冠名で呼ばれる騎手には名手が多い、嶋田功、河内洋、そんな偉大な先輩たちに肩を並べた福永は、紛うことなき一流のトップジョッキーといえた。
ここで少し話が脱線する。
オークスを勝利したシーザリオは7月にアメリカのハリウッドパーク競馬場で行われる、アメリカンオークスに出走を決めた。このレースは当時の3歳牝馬にとって優駿牝馬の後の有力な目標の一つで、前年には桜花賞馬ダンスインザムードが僅差の2着に入っていた。
とはいえ日本調教馬によるアメリカでの重賞勝利は、かつてのシンボリルドルフらでも叶えたことはなかった。勝てばハクチカラ以来、46年ぶりの快挙がかかった一戦だった。
福永にとってはこのシーザリオもまた、ラインクラフト同様思い入れの強い一頭で、桜花賞ではラインクラフトを選択したがこの馬も調教師の角居勝彦とともに育ててきた仔。米国での重賞挑戦にかける思いは強かった。結果としてシーザリオはこの大一番に勝利、福永祐一は異国の地でもまた、大仕事をやってのけたのだ。歴史的な快挙に現地メディアだけでなく、日本の競馬メディアも大いに盛り上がった。
もう少しシーザリオの話をするが、帰国後放牧に出されると次走に向けたプランニングが始まった。日本の秋GⅠだけでなく、再び渡米しベルモントパーク競馬場で開催されるブリーダーズカップ・フィリー&メアターフも視野に入れたローテーションを組むことをが発表された。しかし、帰国後に放牧に出されていたノーザンファームにて、右前外側繋靭帯炎を発症していることが判明。そのまま長期休養に入ることを余儀なくされてしまった。
話を戻そう。変則ローテでGⅠ2勝を挙げたラインクラフトは、その後秋のGⅠ戦線へ挑戦。始動戦のローズSを2着で終えると、本番の秋華賞でも同じく2着に敗れてしまった。勝ったのはフィリーズレビューで破った武豊騎乗のエアメサイア。大先輩にここで意趣返しを食らう格好となってしまったが、ラインクラフトには2000mという距離の壁が何より堪えていたと思う。
次走は翌月のマイルチャンピオンシップに挑戦、ここで初めて古馬たちと相まみえることになったが、ハットトリックの3着に敗れる。敗戦とはいえ古馬相手のGⅠ3着、よく健闘したといえるだろう。
年内最終戦には12月のGⅡ阪神牝馬Sを選択、ここでは圧倒的1人気に支持されたが、レース開始直後から逃げる形となり、最後は引退をかけていたアドマイヤグルーヴらに差され4着に終わった。
秋以降は勝ち鞍に恵まれなかったものの、史上初の快挙となった春の変則ローテによるGⅠ連勝は大いに評価できるものだった。だが年末のJRA賞選考では米で快挙を達成したシーザリオに9票差及ばず、最優秀3歳牝馬の座を逸し、ラインクラフトは激動のクラシックイヤーを終えたのだった。
翌年古馬になったラインクラフトは、GⅠ3勝目を目指し春の高松宮記念から始動する。4歳になり、より精悍さの増した馬体で臨んだこのレースをオレハマッテルゼの2着で終えると、次走3月に移設された阪神牝馬Sへ再び出走し、これに勝利。ライバルのエアメサイアを寄せ付けない盤石の競馬で久々の勝利を挙げた。
このまま好調を維持し駒を進めていきたいラインクラフトは、同年に新設されたばかりの古馬牝馬GⅠ、ヴィクトリアマイルを次戦の舞台として選ぶ。
一方でアメリカンオークス勝利後、長期休養を強いられていたシーザリオも故障から徐々に回復しつつあり、ヴィクトリアマイルで復帰の予定で調整が進められていた。この2頭が再び会すれば、桜花賞以来の再戦となる。そして鞍上は福永祐一。彼がどちらを選びどんなレースになるか周囲や競馬ファンの話題の的となったが、その話題はすぐさま杞憂に終わってしまう。
シーザリオが調整過程で繋靭帯炎を再発、復帰にはさらに1年以上の月日を要するということからオーナーサイドは引退を表明。結局あの歴史的な勝利から一度もターフに舞い戻ることなく、シーザリオはその競走生活に幕を閉じたのだった。
この結末を誰より悔やんだのが鞍上の福永祐一だった。引退表明後に医師から聞いた話では、彼女の直接的な引退理由は「種子骨靭帯炎」。
「アメリカで走っていた頃には馬自身も気になっていたはずだったが、メンタルの強さで我慢していたのではないか」と言われた。馬もレースには強い意志を持って臨んでいる。大きなレースの後に緊張が解け、とたんに痛み出すことはよくある話だ。
これは騎手には何の非もない話である。それでも福永は激しく後悔し、自らを責め立てた。アメリカンオークスでは勝利を掴み取るため、調教の段階からレースに至るまで、激しい負担を馬に強いてきた。たとえあのレースで勝てなくても、負担さえ掛け過ぎなければまだシーザリオは現役生活を続けられていたかもしれない。
結局シーザリオ不在のまま、ヴィクトリアマイルで福永はラインクラフトに騎乗。結果は初めて掲示板を外す9着に沈んだ。いつも通り好位につけ、馬場の良いところを狙って通り、機を見て直線で抜け出す。プラン通りにレースを進めていたが、肝心の直線では全くと言っていいほど伸びなかった。再会するはずだったライバルの引退が、人馬にどのような影響を与えたかは分からない。ただ1年前NHKマイルの時、同期の牡馬たちを蹴散らしたあの力強い走りは、見る影を失っていた。
それでも福永はこの敗戦を前向きにとらえ、次戦への準備を進めるつもりだった。
「古馬になり距離適性への資質がより細かく現れたのかもしれない」向かうべきはさらに距離を短縮したスプリント路線だろうか。いずれにしても夏は全休に当て、秋の初戦に向けたローテーションを瀬戸口と話し合わなければならなかった。
だが、ラインクラフトにレースを走る機会が与えられることは二度となかった。
2006年8月19日、放牧先のノーザンファーム牧場にて調教中に急性心不全を発症。突如としてこの世を去ってしまう。
秋のスプリンターズSへ向け、準備が始まろうとしている矢先の出来事だった。
訃報を聞いた福永の両の眼から大粒の涙がこぼれていった。
これじゃ、これじゃあんまりじゃないか。
シーザリオの引退を受け、改めて馬の生涯に向き合おうと決心したばかりだった。それなのに、どうしてこんなことになるのかわからなかった。
ただ願いが叶うのであれば、彼女の気持ちを知りたいと思った。
自分で本当に良かったのだろうか。彼女は幸せな競争生活を送ることが出来たのだろうか。いくら問いかけてももう答えは返ってこない。
自身が騎乗する馬のことはいつも気にかけていたつもりだった。
それでも自分は勝利を追い求めすぎてしまっていたのだろうか。
本当に己が求めていたその答えは、勝ち負けを超えたその先にあるような気がした。
俺は天才じゃなくたっていい、騎乗する馬と向き合える、その心に寄り添える、凡人でありたいと心の底から願った。
後年、福永は引退間際のインタビューで、己の騎手生活を振り返りこのように語っている。
20代の頃はただ勝ちたい。どうやったら勝てるかのみを考えていた。
30代になると自分の身の回りにいる人たちの気持ちに応えたいと思うようになった。
そして40代は自身の勝ち負けを超えて、競走馬という生き物に対する考察を深めていっている…。
2019年福永祐一はある一頭の牡馬と出会う。
コントレイルは、ディープインパクト以来となる史上3頭目の無敗による三冠を達成し、騎手として最高の高みに福永を導いてくれていった。
騎手生活の頂点、とでも言えばいいのだろうか。今まで見たことのない光景が広がるの目にし、福永は徐々に引退を考えるようになっていった。騎手としての、勝ち敗けの先にある新たな世界。
競走馬という生き物と向き合い、その心に寄り添うにはどうするべきなのか。
2023年、福永祐一は27年に渡る騎手生活にピリオドを打った。
通算19497戦2636勝、最多勝利騎手1回、関西リーディング4回。重賞勝利数201勝、内GⅠ級競争45勝。
押しも押されもせぬ、トップジョッキーとしてターフを去っていった。
そして2024年福永厩舎を開業。調教師として新たなキャリアをスタートさせた。
厩舎が重賞制覇を目指す傍ら、常に掲げるもう一つの目標がある。
自身が手掛ける馬に愛されるような、必要とされるようなそんな自分を理想としている。
その理想を叶えるため、あの時の別れさえも糧にして、今日も男はひたむきに、馬と向き合っていく…。
『言わせてみてぇもんだ』
自分にしか出来ない事 身に付けようとしているけど
代わり映えしねぇなぁ なんかつまんねぇなぁ
届かぬ空を見ては またしても赤面の至り
どっかの天才をひがんで皮肉を吐いてみても
何もなりゃあしねぇよ どうすりゃいいの?
大切なことなんて きっと知ってんのに
僕らは遠回りをしてるんだね
なら意味ある遠回りを
愛想を尽かされても 一向に構わない
でもどうしようもなく必要って
言わせてみてぇもんだ
ねぇ 言ってみてよ
「阪神ジュベナイルフィリーズ、まもなく出走です」
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「尊き一瞬」を駆け抜けた名牝、
ラインクラフトは06年わずか4歳で夭折。
ライバルのシーザリオは21年にノーザンFで没。
天国でも共に、そして安らかに…。R.I.P
はじめに~ようこそ紳士淑女の社交場へ~
皆さまお疲れ様です。ここまでお読みいただき、厚く御礼申し上げます。
今回の序文は誰もが知る「天才」トップジョッキーにして現調教師の福永祐一先生と、ラインクラフトの物語でした。序文の最後に記したのは、自分が好きなMr.Childrenの『言わせてみてぇもんだ』という曲の歌詞で、自分が好きな曲なんですが、なんとなく歌詞の内容が今回の物語とマッチするような気がして載せてみました。
気になったら聴いてみてください(;^ω^)
さぁ今週もこのコメントを発する時がやってきました。
一週間まじ早え(;゚Д゚)
あとまじ当たんねえ(;゚Д゚)
という訳で、先週のチャンピオンズカップもご多分に漏れず撃沈。
いや、言い訳を言うとnoteでは推奨していた人気馬のワンツーフィニッシュだったので問題なかったと思いますが、なぜか直前でハギノアレグリアスを本命にしてしまいました。馬券妙味を追い求めたのですが…。
まあ仕方ないですね(;^ω^)笑
そんなわけで今週も懲りずに予想noteを立ち上げて色々考察していこうという次第でございます。今週は2歳牝馬GⅠ、阪神JFです。
ジュベナイルフィリーズとは「少年少女」という意味ですが、この言葉には「社交界にデビューする少女(女性)」という意味も含まれているそうで、大人の階段を駆け上がっていくシンデレラガールはいったいどの仔になるのか…。めちゃくちゃ気になると思いますので、しっかりと考察&解説をしていきたいと思います。どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
今年は京都外回り芝1600mで
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本来は桜花賞と同じ舞台で行われるクラシック前哨戦ですが、今年は京都外回りへ舞台変わり。連続開催になって馬場状態はかなり気になるところですがどうなのでしょうか?
外回り芝1600mは2コーナー奥のポケット地点からスタートします。最後の長い直線で、差し追込みが決まりやすいです。広いコース、長い直線で展開の”あや"は発生しにくく、実力馬が能力を発揮しやすいコースと言えると思います。3コーナー下りをスムーズに下った馬が加速して、直線で末脚を伸ばしてくるケースが散見されます。瞬発力のある馬に注目したいです。
昨年のレースを振り返る
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勝ち馬のアスコリピチェーノの前走は新潟2歳S1着。3番人気に支持され、中団外から差し切り戴冠。無敗の2歳女王が誕生しました。
前半5Fが58秒2とけっこうなペースになりましたが、中団で脚を溜めていたアスコリピチェーノが上がり3Fメンバー2位の33秒7で差し切りました。
2着はステレンボッシュ、前走赤松賞1着からの臨戦でした。直線進入時に進路を内に切り替えるロスが発生。3着は京王は2歳S勝ちのコラソンビートでした。1人気のサフィラは4着に沈みました。馬連2330円・3連単21530円の配当となりました。過去10年みても荒れたのは一昨年22年リバティアイランドの年でしょうか…?基本大荒れするレースではないですが、先述した通り今年は開催地が異なります。どのような決着、配当になるかは正直難しいところですね。
今週のTOPIC5をお届け
ここからは阪神JFを的中させるため、過去10年のデータをもとにした5つのトピックを紹介します。
…とはいえ今年のJFはご存じの通り京都開催。このデータがどこまで通用するかというと正直全然未知数ですが、とりあえずさっくり紹介させてもらいたいと思います。
📝1番人気の成績は?
過去10年【5-0-0-5】で連対率50%と信頼度はやや低め。5勝のうち4勝を単勝2倍台の馬が挙げており、1倍台に断トツ支持されると飛ぶ傾向があります。今回はルメール騎手騎乗のブラウンラチェットが人気・実力ともに抜けています。前走GⅢ重賞のアルテミスSでの勝利を受けての人気でしょうが、前走GⅢ連対馬は過去十で【8-2-5-31】という成績を残しています。
📝前走3位以外の末脚に注目
連対馬全20頭のうち16頭が前走メンバー中3位の上りを使って連対していました。舞台が京都外回りに変わりますが、であればなおのこそ鋭い末脚を持っている馬に注目したいと思います。
過去2走で3位以内の末脚を使って勝利、もしくは連対している馬に注目してみましょう。
📝今年の舞台は京都だからさ
阪神施行時における10年で逃げ勝ったのは1頭のみ。差し脚質8連対、追込みが7連対と後方からの競馬が決まっていました。今年の京都マイルは外回り。例年通りか例年以上に差し・追い込みに期待し、決め手のある馬を選択したいところです。また連続開催につき馬場はこれ以上なく劣悪なコンディションとなっているはずですから、外差しが決まりやすくなっていることは言うまでもありませんね。レース展開を考慮して軸になる馬を選びたいところです。
📝前走注目はアルテミスS組
中5週で臨んでくるアルテミスS組は【5-3-3-19】と過去十で8連対しています。勝ち馬であれば【3-1-1-4】の戦績です。
場所は変われど開催日程は変わらないわけですから、このローテで臨んでくる馬は重要視したいですね。と考えると先述の通りアルテミス勝ちのブラウンラチェットは軸に最適な気がします。
またこのレースで好走したミストレスとショウナンザナドゥも面白そうな馬だと思います。
📝当該コースの枠番成績
ところ変われば枠順の優位性も変わってくるということで、急遽調べました。こちらは過去5年のデータ参照になりますが、京都芝1600m外回りでは4枠が勝率11.6%、連対率19.8%と最も高かったです。条件戦からGⅠまで全てのグレードで集計した値です。
その次が1枠で勝率9.9%、5枠9.1%と続いています。連対率、複勝率についても同様のことが言えますね。
穴を狙うなら外枠に入った中人気の馬でしょうか。内は馬場が荒れていて外差しも期待できそうですから、連対率の低い外枠といってももの凄く顕著なデータが出ているわけでもないので、ここは嫌うことなく、むしろ積極的に狙っていきたいです。
時間がない人がさっと読むためのコーナー
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森タイツ式推奨馬の解説
それではここから恒例のイラスト付き推奨馬の解説をお届けしたいと思います。今回は2歳馬戦ということで情報量も少ないため、いつもよりあっさりとした短評になりますがご了承ください。
※決して時間がないからじゃないよ(;^ω^)
🐴新世代のクラシック候補へ
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デビューから無傷の2連勝でアルテミスSを制覇。今回最もスポットライトを浴びているのが本馬、ブラウンラチェットです。
デビュー戦ではメンバー上がり最速、アルテミスSでもタフな府中の直線を33秒3で駆け上がっており、その末脚は今回も活かされそうです。
美浦所属の関東馬として初の関西遠征になりますが、そこはノーザンF生産のサンデーレーシング所有馬ということで、昨年のアスコリピチェーノ同様杞憂に終わりそうです。
ブラウンラチェットはキズナ産駒です。この産駒については過去101兆回(多い)くらい言ってきましたが、今年は「キズナイヤー」と言えるほど産駒の躍進が目覚ましいです。実際、24年種牡馬リーディングではトップを走り続けており、重賞勝利数は「15」。
皐月賞勝ちのジャスティンミラノに代表されるよう3歳馬路線での活躍が目立っていますが、一方で今年は2歳馬の活躍も多く見られ本馬のアルテミスS以外でも、札幌2歳S勝ちのマジックサンズや、先日の京都2歳を勝ったエリキングなど2歳馬も活躍しており、ディープインパクトから連なるキズナ血統の隆盛を感じさせます。もともと京都マイルと産駒の相性は程よいので、血統評価も太鼓判を押せそうです。
今回もルメール騎手の継続騎乗ということでその点も安心して買えそうです。秋GⅠではなかなか結果を残せないで、やや批判も立ち込めていますが、人気騎手の宿命というか、致し方のない面もあると思います。
とかく騎乗馬に折り合いをつける点に関しては、トップクラスの騎手ですから、2歳重賞であればより信頼して購入したいと思います。
また管理の手塚厩舎も本拠地は美浦ということで、京都での成績はさほど高いという訳でもないですが、GⅠに関して言えば同じくルメール騎乗のフィエールマンで春の天皇賞を2回制しています。今期の重賞勝ちは本馬のアルテミスSだけですが、勝率自体は悪くないので問題なしと判断して良いでしょう。
※追記【めちゃ重要】
阪神開催時のJFでは馬体重増で臨んだ馬が過去10年【0-3-2-44】と1勝も挙げていないです。なんとなく増えてきて欲しい気もしますが、この時期牝馬の馬体重増加は決して喜ばしいものではないことをご理解ください。
一方、二桁以上の馬体重減で臨んできた馬も【0-2-2-16】と奮っていないです。程よいスリムアップが理想という訳ですね。
で、この記事を書いている12/5に発表されたブラウンラチェットの直前馬体重は輸送前でマイナス10㌔でしたので、かなり微妙に評価が分かれるとこだと思います。直前でカイバ喰いしてマイナス一桁くらいまで戻してくれれば、太鼓判クラスだと個人的には思っています。
いずれにしろ、事前発表のマイナス10㌔はそこまで悲観的な要素ではないことを、ここに記しておきます(ほとんど一桁なので)。
とか言って飛んだらゴメンね(;^_^A
🐴久しぶりのGⅠ制覇を願って
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前走アルテミスS3着、ショウナンザナドゥが抽選対象を通過し、満を持して出走を決めました。
ここを勝てば、鞍上の池添謙一騎手は約2年半ぶりのGⅠ制覇。ショウナン冠名の国本哲秀氏の所有馬は、ショウナンパンドラ以来9年ぶりの中央GⅠ制覇となります。久々の戴冠を見てみたいですね。
ショウナンザナドゥの血統評価ですが、キズナ産駒ということでブラウンラチェットと同様ですからここでの解説は省きます(手抜き)。
ショウナンザナドゥはブラウンラチェットに敗れたアルテミスSでは、直線進入時の後方6番手からメンバー中上がり3位の33秒2の末脚を使って3着に飛び込んできました。前残り優勢だった展開であのキレ味とファイティングスピリットは一定以上の評価をしても良いでしょう。
また全3走のうち2走を京都マイルで走り、その両方で上がり最速を叩き出している点も評価できます。今回本拠地に戻って逆襲というシナリオも十分考えられます。
鞍上は池添謙一騎手の継続騎乗、昨年からGⅠ勝ちの機会はないですが、ここぞという際の勝負強さ、勝負勘はまだまだ一線級。
勝負師とショウナン冠馬の久々のGⅠ制覇をここで期待したいと思います。
🐴新種牡馬たちの攻勢
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前走新潟2歳S2着、サートゥルナーリア産駒のコートアリシアンです。
その前走では1人気に支持されながらも2着に敗戦。ただ負けた相手は現在GⅠ候補の筆頭になっているトータルクラリティなので、むしろ前走は牡馬たちに揉まれながら良くやったなあというのが率直な感想です。
コートアリシアンはサートゥルナーリア産駒。今年から第一世代がレースに出たばかりの新種牡馬です。で、その新種牡馬の中においては126回の出走数で23勝と現在堂々のリーディング1位。全体の中でも71位と、昨年のスワーヴリチャード産駒ほどではないですが、それなりの結果を残しています。実績データが少ないので確かなことは言えませんが、父の戦績と母父のハーツクライの戦績を考慮すると、本来はマイルよりも2000m前後の中距離の適性の方が高そうな気もしますが、まあ2歳重賞ということでそこまで気にしなくても良いと思います。
産駒の重賞初制覇がかかった一戦になりますね。
今回3戦目を迎えるコートアリシアンですが前走までは東京・新潟と左回りのコースを走り、今回が初の京都もとい右回りのコースとなります。得手不得手に関しては分かりませんので何とも言えませんが、前2走マイルを戦い上がり最速タイムを出している点は素直に高評価です。
一方で2走とも出遅れ気味のスタートになっているので、その点は大きな不安材料となります。今回は他頭数でのGⅠ重賞ですから、枠順にもよりますがスタート次第では早々に脱落の危険性も孕んでいるため、軸にはし辛いなあと思います。
とはいえ素質は間違いないですし、菅原騎手が不在の中、戸崎騎手を確保できたという点も大きなプラス材料です。先週GⅠ乗鞍がなかった戸崎騎手は京都で走っていましたね。今週に向けた馬場チェック&予行演習だと思いたいです。まあこれは完全に妄想ですが笑
いずれにしても十分期待できる素質馬だと思います。
🐴シスキン時代の到来か…?
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前走リステッド競争の萩Sを制したテリオスララ。「テリオス」冠名でお馴染み、鈴木美江子氏の所有馬から一頭GⅠ候補がやってきました。
札幌の新馬戦を2着で終えた後、同じく札幌での未勝利戦、京都の萩Sと連勝しこの舞台に挑んできました。上位3頭と比べると若干見劣りする戦績に映りますがどうでしょう。
特筆すべきは前2走の内容で、2戦とも発馬を決めるとハナを奪い、1800mを逃げ切っています。着差もしっかりとつけており、萩SではサンデーRの秘蔵っ子、ディアナザールに1馬身差以上離しての完勝でした。またこの2走の「1800mを上がり最速で逃げ切っている」という点を高く評価したいです。スタミナと切れ味という武器を両立させることの出来る器かも知らません。
血統は新種牡馬のシスキン産駒ということで、初年度産駒わずか7頭だけなので統計的には何も申し上げることが出来ません。シスキンは現役時代アイルランドのGⅠ・2000ギニーなどを勝利しており、実績は十分で種牡馬としての前評判はかなり高いようです。少ない産駒ながらも現時点でドゥラメンテの近親にあたるグロスビークや、マンハッタンカフェの近親ブルーベリーフィズなどもがおり、今後が楽しみな血統だと思います。
来年以降のPOG関連でも話題に上がりそうな気がしますね。
鞍上はMデムーロ騎手です。個人的には鮫島騎手の継続騎乗で見たかったかな、というのが本音ですが(;^ω^)
ミルコ騎手もまた実績は抜群の騎手ですし、若駒の扱いには手練れていると思いますのでそこは安心です。
発馬が得意な馬なので出遅れだけには注意してもらいたいです笑
上手くハナを切ってマイペースに持ち込めば面白そうなことになるかもしれませんので、期待してみるのもアリでしょう。
~おわりに~その他の馬を添えて
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございました。
今回はコラムが冗長な割には予想はあっさりとして、何だが申し訳ないなあと思いましたが、そもそも予想パート自体そんなに読まれていないので別にいいかなとも思いました笑
この後いつも通りその他の馬の短評を添えて今回のnoteを了とさせていただきます。重ねてありがとうございました。
それから次走は朝日杯FSを、翌週に有馬記念、最終週はホープフルSをパスして東京大賞典の記事を書こうと思っています。
で、大賞典で年内を締めくくったら暫くnoteはお休みしようかなと思っています。事実上の最終回ということですね。僕疲れちゃったよパトラッシュ。
まあ大井で行われるダートの祭典で終わるとか、森タイツ式ぽくっていいかなと(;^ω^)シランケド
と、今のとこの予定というかそんな感じなので。また気分で変わるかもしれませんが、最後まで何卒よろしくお願い致します。
📝ランフォーヴァウ
🏇鞍上:松山弘平
前走GⅡのデイリー杯2歳Sを勝利。GⅡ勝ちでこの人気なら、とも思いますが、めちゃくちゃレベルの高いレースだったかというとそうでもなく、冷静に判断した方が良いかも。
なにより少頭数での決着だったので、ここで他頭数のレースになり馬群に揉まれてどうなるかという点は気になります。なにせ牝馬ですから。
ロードカナロア産駒なので京都マイルとの相性はばっちりだと思います。過去5年における産駒の当該コース実績は高く、連対率は20%を超えています。
鞍上・松山弘平騎手も安心して買える騎手です。枠順に恵まれ先団好位で運べそうな展開が予測できれば、強く推してみてもいいと思います。
📝ミストレス
🏇鞍上:坂井瑠星
アルテミスS2着馬、ですが抽選対象のショウナンザナドゥよりもだいぶ人気落ちしています。前走は展開に恵まれたという評価をされているからでしょうか。過去2戦して逃げ足を使っているのでここでも積極的にハナを切りそう。ただし推奨したテリオスララの方が出足は良さそうなので、番手に回った時どんな立ち回りが出来るのか、という点は当然ながら不透明ですね。
キズナ産駒なので血統評価は高いです。
鞍上の坂井瑠星騎手も推せる騎手になりました、ここも積極騎乗を期待したいです。
📝ダンツエラン
🏇鞍上:団野大成
山元哲二オーナーのGⅠ馬といえばダンツフレームですが、その末席にダンツエランが戴冠候補として挙がってきました。
前走京都GⅢ重賞ファンタジーSで勝ち名乗りを上げてからの参戦。
前走は不良馬場の中、タフなレースになったのを制しての勝利ですので、そこはもちろん評価します。一方で相応に消耗が激しかったと思いますので、中一か月の短いスパンでどれだけ回復できたか、という点に注目したいです。下馬評では馬体の仕上がり、最終追切、ともに高評価の声が多いので、出来落ちなく順調に来ているということでしょうか。要注意馬です。
📝ビップデイジー
🏇鞍上:幸英明
個人的に応援したいなと思っている馬主、ビップ○○でお馴染み鈴木邦英オーナー所有馬のビップデイジーです。
過去2戦を上がり最速で勝利。特に中京でのデビュー戦はいきなり16頭のフルゲートのレースだったにもかかわらず、後方待機からの直線で鮮やかな差し切り勝ち。
今回かなり評価は低いですが、私はこの馬がけっこうな素質を秘めているんじゃないかと期待しています。重心の低い独特なフォームが特徴で、こういう個性的な馬は見ているだけで好きになります。
差し追い込み展開になれば一気に浮上してきそうな雰囲気はあります。ただしかなり気性が荒そうな感じもしているので、当日の気配には注意を払う必要がありそうです。ここでダメでも、自自己条件に戻ったら継続して応援してみたいなあと、密かに思っています笑
その他にも気になる馬は何頭かいますが、時間の問題もあるのでここまで。2歳重賞ですから、なにが来るかなんてなかなか分かりません。なのであまり難しく考えずに、好きな馬を見つけて応援する、くらいの気持ちで臨むのもまた一興かなと思います。
では、また…。
今回参照にさせていただいたサイト
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