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EXCoders(特別な印を持つ者たち) 第10話:「避けるだけでは、守れない!?」ー開戦
前書き
人は「選ばれる」ことで、幸せになれるのだろうか?
才能を持つことは祝福か、それとも呪いなのか?
この物語は、ある一人の少年が**「選ばれた存在」として運命を背負いながらも、その意味を問い直していく物語である。
日本最大の製薬企業「ミネルヴァ・バイオテック」が掲げるスローガンは、「遺伝子は、選ばれた者を求める。」**
しかし、その言葉の裏には、誰もが知りたくない残酷な真実が隠されていた。
「SSP(スペシャル・サポート・プログラム)」――それは、特異な才能を持つ子供たちを集め、能力を開発する極秘計画。
だが、その本当の目的は、「次世代兵器の創出」にあった。
そして、その計画の犠牲になった少年がいる。
彼の名は相馬海斗。
選ばれながらも捨てられ、力を持ちながらも知らされず、戦う理由すら与えられなかった彼は、やがて自分の「真実」に向き合うことになる。
これは、運命に抗い、自分自身を取り戻そうとする少年の戦いの記録である。
――たとえ「選ばれた者」としてではなく、一人の人間として生きるために。
📖 試合開始
校庭の特設コートに、張り詰めた空気が漂っていた。
試合開始のホイッスルが鳴り響くと、カイト・迅也・霧崎の3人は慎重に動き始めた。
「まずは様子見か?」迅也が周囲を見回しながら呟く。
しかし——様子見をするまでもなく、試合は一方的な展開で進んだ。
「くっ……!!」
敵チームの一人が、迅也の放った速球を受け止めきれず、胸にボールを当てられて退場。
続けざまに、霧崎が低い弾道で放ったボールが、相手チームのもう一人の足をかすめる。
「アウトォォ!!」
わずか数十秒で、アレックスの味方2人は退場。
「……えっ?もう終わり?」
観客席からどよめきが起こる。
しかし——
「クク……」
アレックスが、口角を上げながらゆっくりと前に出た。
「ハンディだよ。せっかくの試合なんだ、楽しませてくれよ。」
余裕の表情。自信に満ちた態度。
その不敵な笑みに、カイトたちは本能的な警戒心を抱いた。
「……こいつ、本気を出してない。」
迅也が低く呟く。
「さぁ、ここからが本番だ——。」
📖 異常な直角カーブの恐怖
アレックスがボールを持ち、ゆっくりと構えた。
「そろそろ行こうか。」
次の瞬間——
「!?」
アレックスの腕が閃いた。
ボールが高速で飛び、カイトに向かって一直線——
……かと思った、その瞬間。
シュンッ!!!
ボールが直角に曲がり、迅也の顔ギリギリをかすめる。
「おっ——!?」
観客から驚きの声が上がる。
「……え? あり得なくない?」
「直角に曲がったぞ……?」
「そんなドッジボール、見たことねぇよ……!」
「このボール、あり得ねぇ動きをしてる……!」
迅也が冷や汗を滲ませながら呟いた。
「ボールの回転が異常なんだ……!!」
📖 超音波での作戦会議——動体視力の限界
(カイト! 今の球、目で追えたか!?)
(いや、途中まで一直線だったのに、いきなり角度が変わった……。)
(回転の仕組みを見破らないと、避けるのは不可能ね……。)
迅也がボールを追った映像を脳内でリプレイする。
「……回転している。回転軸がボールの真横になってるんだ……!」
「普通のカーブは斜めの回転だけど、これは**“純粋な横回転”** だから——」
シュンッ!!!
突然、ボールは鋭角に曲がった。
「だから直角に曲がるのか!!」
「ってことは、動体視力で事前に予測すれば——」
「見極めて避けることは可能……!」
「ジンヤ、頼んだ!」
(了解! 俺が回転を見極めて、カイトと霧崎に指示を出す!)
📖 超音波による回避——霧崎の能力
アレックスはニヤリと笑い、再びボールを投げた。
「霧崎、くるぞ!!」
迅也の頭の中に警告が響く。
しかし——
「私は大丈夫。」
霧崎の声は落ち着いていた。
(コウモリと同じ。超音波でギリギリまでボールの位置を測定できる。)
ボールが霧崎の顔めがけて一直線に飛んでくる。
シュンッ!!
しかし、ボールが急激に曲がった瞬間——
「っ!!」
霧崎は僅かに身を引き、ボールを紙一重でかわした。
「うおぉぉ!? 避けた!!」
観客席から歓声が上がる。
(超音波を張って、距離をギリギリまで測ってるのよ。)
霧崎は微笑む。
「コウモリと同じ方法よ。」
📖 霧崎、倒れる
「クク……失敗作の割には、やるね〜。」
(……なるほど。やっぱりカイトたちは普通の“能力者”じゃない。)
(このままいけば、“T-47”の本当の性能を引き出せるかもしれないな。)
アレックスが再びボールを拾う。
「じゃあ、次は……もっと面白い避け方をしてもらおうか。」
彼は今度、ボールを低めに放った。
「またカーブ……!? でも今度は——」
霧崎がジャンプし、ボールをギリギリでかわす。
しかし——
ズバァン!!
「——!?」
ワンバウンドしたボールが、地面で逆回転し、ボールが霧崎の背中に直撃した瞬間、彼女の表情が一瞬にして歪んだ。
「ぐ……っ!!」
膝から崩れ落ち、そのままラインの外へ転がる。
「霧崎!!!」
カイトが駆け寄るが、霧崎は肩で息をしながら苦笑した。
「……ごめん。完全に読めたと思ったのに……。」
霧崎は背中を押さえながら膝をつく。
しかし、すぐに顔を上げ、アレックスを睨んだ。
彼はゆっくりと歩み寄り、ボールを拾いながら微笑む。
「惜しかったな。でも、お前の超音波も万能じゃないってことだ。」
「……っ!」
アレックスはボールを回しながら、不敵な笑みを浮かべる。
「ドッジボールってのはな、相手を狙うだけが全てじゃない。“倒す”ための投球ってのがあるんだよ。」
📖 追いつめられる迅也
霧崎を失ったカイトと迅也。
「ジンヤ……気をつけろ。」
「わかってる……!!」
しかし、アレックスはさらに別の戦術を仕掛けた。
彼はボールを地面に何度も叩きつけながら、強烈な回転をかけた。
「こいつ、何を——」
ザザザッ!!!
砂混じりの土埃が舞い上がる。
一瞬にして視界が茶色く染まり、光が拡散し、景色が歪む。
「っ……視界が……!!」
迅也は目を細めた。しかし、目の奥にジリジリと焼けるような痛みが走る。
(やばい……ボールが見えない……!!)
その瞬間——
空気が切り裂かれる音がした。
「くそっ、見えねぇ……!!」
その瞬間、アレックスのボールが迅也めがけて襲いかかる——!!
📍 SSP本部——監視ルーム
巨大なモニターに、試合の映像が映し出されていた。
「……見ろ、アレックスの“逆回転投球”に霧崎紗月が脱落した。」
「迅也も土埃で視界を封じられ、回避が困難になっている。」
「順調に進んでいるな。」
データ分析官が冷静に言う。
「対象者・長内海斗は、依然として直接的な“攻撃能力”を発揮していない。」
「つまり、彼は“回避型”で確定と見ていいのか?」
「まだ断定はできない。だが——」
映像を見つめる研究員が、興味深げに呟く。
「彼は今、“追い詰められた”状態にある。」
「この状況が、彼の能力を引き出すかもしれない。」
「……どこまで耐えられるか、見物だな。」
🔥 次回予告:「目で見るな、感じろ!!」🔥
✅ 迅也の動体視力、完全封殺!?
✅ カイトは迅也を守ることができるのか!?
✅ アレックスの“本気”の投球が炸裂!!
✅ そして、カイトの秘められた力が発動……!?
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