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EXCoders(特別な印を持つ者たち) 第9話:「避けるだけでは、守れない!?」ー予兆
前書き
人は「選ばれる」ことで、幸せになれるのだろうか?
才能を持つことは祝福か、それとも呪いなのか?
この物語は、ある一人の少年が**「選ばれた存在」として運命を背負いながらも、その意味を問い直していく物語である。
日本最大の製薬企業「ミネルヴァ・バイオテック」が掲げるスローガンは、「遺伝子は、選ばれた者を求める。」**
しかし、その言葉の裏には、誰もが知りたくない残酷な真実が隠されていた。
「SSP(スペシャル・サポート・プログラム)」――それは、特異な才能を持つ子供たちを集め、能力を開発する極秘計画。
だが、その本当の目的は、「次世代兵器の創出」にあった。
そして、その計画の犠牲になった少年がいる。
彼の名は相馬海斗。
選ばれながらも捨てられ、力を持ちながらも知らされず、戦う理由すら与えられなかった彼は、やがて自分の「真実」に向き合うことになる。
これは、運命に抗い、自分自身を取り戻そうとする少年の戦いの記録である。
――たとえ「選ばれた者」としてではなく、一人の人間として生きるために。
📖 学校の空気の変化——「ガルシア戦の影響」
翌朝——。
カイトが教室に足を踏み入れた瞬間、微妙な緊張感が空気を包んだ。
——ザワッ……
(……またか。)
昨日から感じていた視線。
クラスメイトたちは、カイトを見ると少し距離を取るようになった。
「……おはよう。」
隣の席の男子に声をかけるが、
「あ、あぁ……おはよう。」
ぎこちない返事が返ってくるだけだった。
(やっぱり……まだ警戒されてる。)
机に座ると、後ろの方からヒソヒソと声が聞こえた。
「……アイツ、やっぱ普通じゃないよな?」
「ガルシア先生と戦って、生き残ったんだろ?」
「てか、むしろ倒したんじゃね?」
「マジで異能力者なんじゃ……?」
(はぁ……これじゃまるで“化け物”扱いだな。)
溜息をつきながら、カイトは無意識にシャーペンを回した。
クルクルと滑らかに回るシャーペン。
何気ない癖だが、今のカイトにはそれが唯一の落ち着く動作だった。
「おはよう、カイト。」
その時、霧崎紗月の明るい声が教室に響いた。
彼女は自然にカイトの席の横に腰を下ろす。
「お前、またクラスのやつらに変な目で見られてるのか?」
後ろから迅也もやってきた。
「ま、仕方ねぇよな。昨日の今日で、クラスメイトに『普通のやつ』だって思えってほうが無理あるだろ。」
カイトは苦笑しながら肩をすくめた。
「まぁな。でも、どうにかしないと……このままじゃ、マジで孤立しそうだ。」
「んー……だったら、クラスに溶け込むために、何か“普通のこと”してみたら?」
「“普通のこと”?」
「例えば、スポーツとか? 交流の場があれば、今よりは馴染めるんじゃない?」
霧崎がさらりと提案したその時——
「おい、長内!」
クラスの男子が近づいてきた。
「体育の自由時間、ドッジボールやるんだけど、お前も来るか?」
「……ドッジボール?」
思わぬ誘いに、カイトは少し驚いた。
「いいじゃん、行こうぜ。」
迅也がニヤリと笑い、霧崎も肩をすくめる。
「いい機会かもね。せっかく誘われたんだし、やってみたら?」
「……まぁ、やらないよりはマシか。」
カイトは少し考えた後、静かに頷いた。
(でも……ただのドッジボールで済むのか?)
嫌な予感が胸をよぎる。
📖 仕組まれた試練——「転校生、アレックス・フォード」
📍 体育館——昼休み
「よーし、チーム決めるぞ!」
体育館には、すでにドッジボールをするためのメンバーが集まっていた。
「3対3のチーム戦でやる! んで、新しく転校してきたアレックスも参加するらしいぞ!」
「アレックス?」
カイトが振り向くと、金髪の長身の少年がボールを片手に持って立っていた。
「よろしく、皆さん。」
彼は流暢な日本語で挨拶しながら、不敵な笑みを浮かべる。
(……妙な気配がする。)
カイトの直感が警鐘を鳴らす。
——コイツ、ただの転校生じゃない。
「じゃあ、チーム分けはこんな感じ!」
《チームA》
✅ カイト(T-47の”守る”能力)
✅ 迅也(動体視力と未来予測)
✅ 霧崎(超音波操作)
《チームB》
✅ アレックス・フォード(SSPからの派遣調査員?)
✅ 田辺(運動部エース)
✅ 西村(パワー系)
「カイト、お前のチーム相手は俺たちだぜ!」
田辺が自信満々にボールを構えた。
「へぇ、いいねぇ。じゃあ……始めようか?」
アレックスがボールを軽く回しながら微笑む。
カイトは回し方を見て、違和感を感じる。
(……この動き、ただのドッジボールじゃないな。)
「準備はいいか?」
審判役の体育教師が笛を吹く。
「——よし、試合開始!!」
📍SSP本部——監視ルーム
壁一面に広がるモニターが、**長内海斗(T-47)**の姿を映し出していた。
画面には、彼が体育の授業でドッジボールに参加する様子が映る。
「対象者が試合を開始。今回は“自然な環境”での回避能力のテストだ。」
監視官たちは、モニター越しにカイトの一挙一動を注視する。
📊 注目点①:「回避能力の限界」
「対象者の回避行動には異常な反応速度が見られる。」
「通常の人間なら0.25秒の反応時間だが……彼は0.18秒。前回の戦闘よりもさらに向上している。」
「無意識の適応か、それとも——?」
📊 注目点②:「仲間との連携」
「霧崎紗月(T-47失敗作)、東堂迅也(T-48失敗作)との連携に注目。」
「特に迅也の動体視力強化は、単なる“素早い反応”を超えている可能性がある。」
「3人の動きに、何か新たな兆候が出れば即座に報告しろ。」
📊 注目点③:「アレックス・フォードの投球能力」
「アレックス・フォード——SSPが送り込んだ“精密投球型エクスコード”の持ち主。」
「彼の投球は、異常な回転と変則軌道を持ち、通常の人間では反応できないレベルだ。」
「この投球に対し、カイトがどう対応するか……これが今回の試験の鍵となる。」
📊 注目点④:「精神的プレッシャー」
「対象者は現在、クラス内で孤立状態。」
「SSPのデータでは、人間は強いストレス下で能力発現の可能性が上昇する。」
「試合の中で、彼が“仲間を守る”ためにどんな行動をとるのか……?」
監視官は指を組みながら、静かに言った。
「T-47計画の全貌を知るための、重要な試験が始まる。」
その声には、期待か、あるいは焦りか……微かに揺れる感情が滲んでいた。
次回:「避けるだけでは、守れない!?ー開戦」
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