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EXCoders(特別な印を持つ者たち) 第7話 孤立——試される心

前書き

人は「選ばれる」ことで、幸せになれるのだろうか?
才能を持つことは祝福か、それとも呪いなのか?

この物語は、ある一人の少年が**「選ばれた存在」として運命を背負いながらも、その意味を問い直していく物語である。
日本最大の製薬企業「ミネルヴァ・バイオテック」が掲げるスローガンは、「遺伝子は、選ばれた者を求める。」**
しかし、その言葉の裏には、誰もが知りたくない残酷な真実が隠されていた。

「SSP(スペシャル・サポート・プログラム)」――それは、特異な才能を持つ子供たちを集め、能力を開発する極秘計画。
だが、その本当の目的は、「次世代兵器の創出」にあった。
そして、その計画の犠牲になった少年がいる。
彼の名は相馬海斗

選ばれながらも捨てられ、力を持ちながらも知らされず、戦う理由すら与えられなかった彼は、やがて自分の「真実」に向き合うことになる。

これは、運命に抗い、自分自身を取り戻そうとする少年の戦いの記録である。
――たとえ「選ばれた者」としてではなく、一人の人間として生きるために。



📍 1. SSP本部——情報操作部門


「……ガルシア・クロウの件は処理済みです。」

モニターに映し出されたのは、崩れ落ちたガルシアの姿だった。だが、そこには“彼が存在した”という痕跡を完全に抹消するための計画が進行していた。

「死亡報告は?」

「公式には“海外任務に異動”と記録しました。」

「目撃者は?」

「問題ありません。生徒たちには“ガルシアは突然の転任で学校を去った”とだけ伝えました。」

「教師陣は?」

「一部の関係者は、“健康上の問題で療養中”という形に。」

「……さすがに不自然では?」

「すでにカリキュラムを修正し、ガルシアの存在がなかったかのように記録を改ざん済みです。」

「完璧だな。」

「ですが——」

報告者は一瞬、躊躇った。

「何か問題でも?」

「……ガルシアの戦闘データが一部破損しており、対象者である長内海斗(T-47)の能力分析が完全ではありません。」

「つまり?」

「現時点では、彼のエクスコードの“攻撃性”が一切確認されていません。自己修復と回避能力だけの存在として報告されています。」

「ふむ……だが、それが問題なのだろう?」

「……はい。」

報告者は小さく息をのんだ。

「彼の戦闘データには、通常の回避反応を超えた動きが見られます。“予知”や“他者のサポート”があった可能性があります。」

「つまり、長内海斗の背後に“別の能力者”がいる?」

「その可能性は排除できません。」

上層部は静かに頷いた。

「ならば——次の試練を仕掛ける。」

「対象は?」

「長内海斗だけでなく、彼の周囲の者たち全員だ。」


📖 2. クラスの“視線”


📍 朝の教室

カイトが教室に入った瞬間、微妙な“空気の変化”を感じた。

——ざわっ。

(……ん?)

いつもなら気軽に声をかけてくるクラスメイトたちが、微妙に視線を逸らす。

「……おはよ。」

一応、隣の席の男子に声をかけるが、彼は苦笑しながらそっけなく返した。

「ああ、おはよう……。」

その場の会話は、それだけで終わった。

(なんだ、この空気……?)

——ヒソヒソ……

「……アイツ、昨日ガルシア先生と戦ったんだろ?」
「見た? あの戦闘……ヤバすぎない?」
「普通はあのパンチは避けられないはず……アイツ、本当に“特別”な力を持ってるのか?」
「いや、もしかして……アイツ、普通の人間じゃないんじゃ……?」

(……なるほどな。)

カイトは状況を理解した。

「……俺は、怖がられてるのか。」

📍 昼休み——屋上の作戦会議


「予想通りね.....。」

霧崎紗月がカイトを見ながら、ため息をついた。

「……何が?」

「クラスの反応よ。あなたは今、“普通の人間ではない”と思われてる。」

カイトは肩をすくめる。

「まぁ……そうなるか。」

「でも、これはSSPの計画の一部よ。」

紗月の目が鋭くなる。

「“社会的孤立”は、能力覚醒を促す条件の一つ。」

「……!」

カイトが目を見開く。

「エクスコードは、その持ち主の“本質”にリンクする。だから、極限状態になった時、本当の力が目覚める可能性が高いの。」

「……俺の本質?」

「ええ。」

霧崎は静かに続けた。


「例えば、迅也のエクスコードは“未来視”のようなもの。これは、“状況を瞬時に分析し、最適な行動をとる”という彼の特性に基づいている。」

「なるほどな。」

「でも、迅也の性格をよく考えて?」

紗月は横目で迅也を見た。

「……え?」

「せっかちなのよ、こいつ。」

「なんだと!? 俺はただ効率よく動きたいだけだ!」

「でも、それがエクスコードに反映されてるわ。仁也の能力は、無意識に“先を急ごう”とするあなたの性格そのものなのよ。」

「ぐっ……」

迅也は何か言い返そうとするが、紗月はスッと指を立てた。

「ちなみに、私の能力は“音波を操る”でしょう? これは……私が“音楽が好き”だからよ。」

「え、じゃあさ……紗月のエクスコードって、お前の音楽鑑賞趣味が関係してるってこと?」

「その通り。」

紗月は得意げに胸を張る。

「ていうか、本当はおしゃべりだからじゃないの?」

「……は?」

紗月の笑顔が消えた。

「いやいや、音を操るより、お前の“よくしゃべる”性格のほうが影響してる気が……」

「へぇ……なるほどね?」

——ビィィィン!!!

「ぐぁっ!!???」

迅也が突然、頭を抱えて転げ回る。

「ちょっと周波数が狂ったみたいね。」

「や、やめろぉぉぉぉぉ!!」

「え、何? よく聞こえないわ?」

「絶対わざとだろ!!!」

カイトは唖然としながらも、思わず吹き出した。

(……やっぱり、この二人がいればなんとかなる。)

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