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『エクスコーダーズ』          第2話:「普通の生活(違和感)」

前書き

人は「選ばれる」ことで、幸せになれるのだろうか?
才能を持つことは祝福か、それとも呪いなのか?

この物語は、ある一人の少年が**「選ばれた存在」として運命を背負いながらも、その意味を問い直していく物語である。
日本最大の製薬企業「ミネルヴァ・バイオテック」が掲げるスローガンは、「遺伝子は、選ばれた者を求める。」**
しかし、その言葉の裏には、誰もが知りたくない残酷な真実が隠されていた。

「SSP(スペシャル・サポート・プログラム)」――それは、特異な才能を持つ子供たちを集め、能力を開発する極秘計画。
だが、その本当の目的は、「次世代兵器の創出」にあった。
そして、その計画の犠牲になった少年がいる。
彼の名は相馬海斗

選ばれながらも捨てられ、力を持ちながらも知らされず、戦う理由すら与えられなかった彼は、やがて自分の「真実」に向き合うことになる。

これは、運命に抗い、自分自身を取り戻そうとする少年の戦いの記録である。
――たとえ「選ばれた者」としてではなく、一人の人間として生きるために。



1. 交通事故──守るべきもの

キィィィィィィィッ!!!

 🚗 「ブォォォォン!!!」

突然、車のタイヤが悲鳴を上げる音が響き渡る。
その瞬間、海斗の視界に小さな茶色い影が飛び込んできた。

子犬だ。

首輪もついていない。
たぶん迷子になって、道路に迷い込んでしまったのだろう。

「危ない!!」

考えるより先に、海斗の体は動いていた。

──ダッ!

海斗は迷わず子犬を抱え、全力で車の進行方向から飛び退いた。

しかし、避けるには少し遅すぎた。

💥 ドンッ!!!! 💥

車のバンパーが、海斗の体に激突した。
20メートル吹き飛ばされる!

──が。

……衝撃が、さほどなかった。

🚗 車が、ありえないほどへこんでいる。
👀 海斗は、無傷で立ち上がっていた。

その瞬間。

「……ん?」

遠くからその光景を見ていた**藤堂 仁也(とうどう じんや)**は、思わず目を見開いた。

サッカーのフェイントの天才ストライカーの彼の動体視力は、普通の人間とは比べ物にならない。

だからこそ、ハッキリと"見た"のだ。

──海斗の体を覆っていた、"透明なシールド"を。

それはほんの一瞬、空気の揺らぎのように薄く浮かび上がり、次の瞬間には消えた。
だが、確かに存在していた。

(アイツ……何か、おかしい。)

仁也は直感的にそう感じた。

「お、おい、大丈夫か!?」

運転手が飛び出してくる。

しかし、海斗は子犬を抱えながら服のホコリを払うだけだった。

「……うん。たぶん、大丈夫。」

「いやいやいやいや!?」

仁也は混乱しながら、思わず駆け寄った。

「お前、今の……なんだ?」

「……何が?」

「いやいやいや! 轢かれただろ!? なのに無傷ってどういうことだよ!」

「……たまたまだ。」

海斗はそう言って歩き出した。

だが、仁也の目はごまかせなかった。

(アイツ、絶対ヤバい。)

その瞬間から、仁也は海斗に強く興味を持ち始めた。


2.学級委員長──霧崎紗月

🚶 昼休み、廊下

海斗が廊下を歩いていると、すれ違いざまに霧崎紗月の視線を感じた。
彼女はクラスの学級委員長。成績優秀で、誰に対しても冷静で淡々としている。

海斗は何気なく目を向けたが──

紗月は、一瞬だけ海斗をじっと見つめた後、すぐに目を逸らした。

(……何だ?)

その視線は、まるで"探るような"、あるいは"確かめるような"ものだった。

「長内くん。」

紗月が静かに口を開いた。

「え?」

「昼休み、教室の掃除当番でしょう?」

「あ……そうだった。」

「……忘れないように。」

淡々と言い残し、紗月はそのまま立ち去った。
まるで"それ以上の関わりを避ける"ように。

🚪 教室の扉が閉まる直前、彼女はほんの一瞬だけ振り返り、再び海斗を見つめた。

しかし、その表情には"何かを隠している"ような影があった──。

(……何か、知ってるのか?)

海斗は、彼女の冷たい態度の裏に隠された"何か"に、わずかな違和感を覚えた。


3. 夜──長内との会話

夜、長内家。

「……どうした? メシがまずいか?」

長内大輔が、ご飯をかき込みながら尋ねる。

「いや……。今日、ちょっと車に当たった。」

長内の箸が止まる。

「……は?」

「でも、なんとなく避けられたし、うまく対処できた。」

長内はじっと海斗を見つめた後、箸を置いた。

「お前、怪我は?」

「ない。」

「……そっか。」

長内は一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに笑って海斗の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「まぁ、考えすぎてもしゃーない。強運ってやつだろ。」

「……俺、普通の人間か?」

長内の目がわずかに鋭くなる。

「なんだよ、いきなり哲学か?」

「……ただ、ちょっと気になっただけ。」

「お前は普通だよ。」

長内は即答した。

「今はな。」

「……?」

海斗が首を傾げる。

「気にすんな。ほら、唐揚げ追加な。」

長内は何事もなかったかのように笑いながら、海斗の皿に唐揚げをどっさり乗せた。


4. 長内の報告

『T-47 被験者報告書』

📄 対象者:長内海斗(旧名:相馬海斗)

評価結果(5段階評価)

  • 攻撃力:E

  • 防御力:E

  • 成長力:D

  • ダブル能力の可能性:E

  • トリプル能力の可能性:E

📌 結論:実験データ上、特殊な適性は認められず。"失敗作"として評価継続。

長内はキーボードを叩きながら、報告書をまとめていた。

「……異常なし、ねぇ。」

彼はモニターを見つめ、指を組む。

「今はな。」

だが、それが"いつまで続くのか"は、誰にも分からない。

🚬 彼は静かにタバコに火をつけ、煙をくゆらせる。

(こいつの能力がバレるのは、時間の問題か……。だが攻撃系になるのか?)

長内は、画面に映る海斗の写真を見つめながら、静かに目を細めた。


🔥 次回予告:第3話「監視の目」

  • SSPの監視が、ついに海斗を捉える。

  • 回収者たちの影が、ゆっくりと動き始める。

  • そして、紗月の秘密が、少しずつ明らかに──。

🔥 次回、『監視の目』!
"平穏な日常"が崩れ始める──!

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