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[書籍]『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』から学んだ韓国語単語【9選】
本の紹介
コロナ禍で海外旅行が制限されてきたここ数年
私は最近実に5年ぶりに
韓国南部の大都市プサンに旅行にいった
久しぶりだったのもあるし
5年前よりも韓国語が上達したことも相まって
懐かしくも以前とはまた違った感覚で
プサンの街を楽しむことができた
そして帰国し早々に
プサン旅行が恋しくなりこの本を手にとった
旅行の話はまた別の機会にでも
今回は韓国人紀行作家の目線で見る
韓国らしい風景や日韓の歴史にも触れられる一冊から
初めて学んだ「韓国語」をピックアップしてみた
아지매(アジメ)
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これは아줌마(アジュンマ)のプサン表現で
おばさんのこと
本の中では沢山の市場や食堂が紹介されているが
そこには必ずと言っていい程
情が厚い아지매が登場する
店番は女性の役割なのか
아지매たちなくして活気あるプサンの風景は
ないのではないかというくらいに
私が今回行った旅行でもプサンアジメの姿は
印象深くまたとても温かかった
달동네(タルドンネ)
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直訳すると달(タル/月)の동네(ドンネ/町)
海と山との距離が近いからか
プサンは坂道がとても多い都市だ
そのため斜面に重なるように家々が建ち並ぶ風景は
プサンらしさの一つでもある
私はその断崖絶壁に密集した
ヨーロッパの観光名所のような
ジブリ映画『耳をすませば』の舞台
聖蹟桜ヶ丘の急斜面の町並みのような
個性的な町の様子がとても好きで
「斜面に沢山の家が建っている風景」
と言っていたがもう今後は簡潔に
3文字ですむ“달동네”と使おうと思う
ちなみに
「韓国のサントリーニ」「韓国のマチュピチュ」
はたまた「レゴの村」とも呼ばれ
プサン観光でも人気の甘川文化村も달동네だ
삼팔따라지(サンパルタラジ)
これは日常的には使う単語ではないし
日本語でネット検索しても出てこないほどだったが
本書では「38度線を越えてきた文無しの野郎」
と説明されていた
旅行をする際には
その土地の歴史や背景を知っていると
さらに一瞬一瞬に深みが増すように感じる
プサンは朝鮮戦争の際に
多くの市民が避難のため南下して来た地域で
38度線より北部から来たということは
現在の北朝鮮にルーツがあるということ
私はまだ見たことがないが1400万人を動員した
有名な韓国映画『国際市場で逢いましょう』は
こうしたプサンに逃れてきた避難民の話であり
生存競争を勝ち抜くためになりふり構わず商売をする
主人公のドクスはまさにこの삼팔따라지である
韓国最大手の自動車メーカーヒュンダイの創始者
チョン・ジュンヨン(鄭周永/정주영)氏もまた
大日本帝国時代の朝鮮江原道通川(現・北朝鮮)出身の
避難民の一人だったという
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실비집(シルビチプ)
これもまた日本語のネット検索では
あまり意味が解説されていなかった単語
실비(シルビ/実費)つまりほぼ原価で
飲食サービスを提供してくれるお店で
最近は田舎に行かないとなかなか無いらしい
本書で紹介されていたお店では
₩25000~30000(¥3000前後)で
焼酎やビール3本に加えて
15種類の酒のつまみが楽しめるという
3人でこの価格は相当格安だ
씨레이션(Cレーション)
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英語で“C-ration”
Rationとは戦闘糧食のこと
朝鮮戦争やベトナム戦争の際に
帰還した軍人が持ち込み流通したという
CがあるからAとBもあるようで
それぞれAは未調理生鮮食材で
Bは包装済み未調理食材
そしてCは缶詰の調理済み食材のことだそうだ
ネット検索すると「미군 전투식량(米国戦闘糧食)」
という単語も多く出る中「씨레이션」販売する
ショッピングサイトもいくつか見かけた
朝鮮戦争が休戦中で未だなお徴兵制度が残る
韓国らしい軍事用語の一つだと思った
ちなみに決して美味しいものではないようだが
釣りやキャンプ用に買う人がいるそうだ
식헤(シッケ)
韓国のドラマや料理が好きな人なら
シッケ(식혜)と聞くと甘い甘酒のような
麦芽飲料を思い出すかもしれない
(良くみるとハングルの表記も少し違う)
これは私も初めて知った韓国料理だが
こちらの식헤(塩醢)とは塩漬けした魚介類の発酵食品
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朝鮮半島の北部ではカレイ(가자미/カジャミ)
南部では太刀魚(갈치/カルチ)をよく漬けるという
特に現在の北朝鮮北東部の地域
旧咸鏡道(함경도/カンキョウドウ)は
このカジャミシッケが有名だったらしい
もしも食べる機会があったら是非食べてみたい
기사식당(技士食堂/キサシクタン)
タクシー運転手の利用が多い飲食店
人気のお店の条件は
1.味
2.スピード
3.価格
4.駐車環境
韓国で外食をする時は
2人前からしか受け付けない飲食店も多い中で
通常1人で食事をすることが多いタクシーの運転手が
多く利用する기사식당はほとんどがお一人様向け
現地でタクシーに乗ったら
安くて早くて美味しいローカル食堂はないか
運転手さんに直接聞いてみたい
매축지(埋築地/メチュクチ)
いわゆる埋立て地のこと
平地がほとんどなかったプサンという地域は
旧市街地のほとんどが埋め立てられた土地だという
その名残が地名として残った
通称“メチュクチ村”と呼ばれる
凡一5洞(범일5동)という場所もある
トタン屋根の古い家がひしめき合うように建ち並び
両手を広げたくらいの細い路地が続く
タイムスリップしたかのような町並みは
どこか懐かしさを感じさせる
ここら辺には日本時代に
軍の馬舎や徴兵軍人の収容施設
があったりしたという
보따리상(ポッタリサン)
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1905年からプサンと山口県下関を結ぶ
連絡船の運行が始まった
その当時から
「ポッタリ(日本で言う風呂敷)」に
売り物を包んで日本と韓国を行き来した行商を
をポッタリ商やポジャギ商と呼ぶようだ
現在はかなり衰退した職業だが
今でも関釜フェリーでは見かけるという
日本から仕入れたものは
プサンの国際市場やカントン市場
韓国から持ってきたものは下関のコリアンタウンに
卸されているとのことだ
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東京に住んでいると大分距離感を感じるが
昔からフェリーで往来があったくらいに
韓国と日本は近い国だと改めて思った
昔から日韓の交流のあった下関のコリアンにも
いつか行ってみたい
映画紹介
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最後に本書の中で度々紹介された
プサンに関連する映画を
いつか見るためにリストアップしておこうと思う
プサンの町並みや歴史を知っておくと
旅行がさらに感慨深くなること間違いない
『友へ チング』
1976 年夏、プサン。地元の元締めを父に持つジュンソクは、口ベタながらケンカが強くて情にも厚く、みんなから一目置かれていた。葬儀屋の息子ドンスもケンカっ早いが憎めない存在だ。それに優等生のサンテクとお調子者のジュンホの4人の小学生は、いつでも一緒に遊んでいた幼なじみだ。4人は別々の中学に進むが、再び高校で顔を合わせ一緒につるむようになる。しかしある事件をきっかけにジュンソクとドンスは退学処分になり、やがて2人は裏社会に足を踏み入れ対立していくようになる・・・。
『カンチョリ オカンがくれた明日』
病気の母を支えるため奮闘する若者と、認知症を患いながらも天真爛漫な母のコミカルで心温まる絆を描いたハートウォーミングドラマ。ぶっきらぼうだが情にあついカン・チョルは、病気で認知症の母スニの面倒を見ながら、釜山港で黙々と働いていた。ソウルからやってきた自由人スジと出会ったことがきっかけで、カン・チョルは外の世界へ出る夢を抱き始めるが、そんな時に母の容体が悪化。さらには、幼なじみが危険な儲け話に巻き込まれてしまう。
『悪いやつら』
韓国・釜山の裏社会でのし上がりながらも、1990年のノ・テウ大統領による“犯罪との戦争”宣言によって生き残りを賭けて戦うことになった2人の男を描いた犯罪ドラマ。
『オールドボーイ』
ごく平凡な生活を送っていたオ・デスはある日、突然誘拐され、15年間監禁された。解放されたデスが、自分が監禁された理由を解き明かすために奔走する5日間の物語。
『母なる証明』
ある日、静かな街で凄惨な殺人事件が発生する。事件の容疑者としてトジュンという青年が浮かび上がり、彼は身柄を拘束される。だが、無実を信じる母親は息子の疑惑を晴らすため、真犯人を探すべく奔走することに。
『アジョシ』
アパートの隣室に暮らす少女ソミと、心を通わせるようになった質屋を営むテシク。ある日、ソミの母親が犯罪組織の麻薬を盗んだことから母娘ともにさらわれる。政府機関の元エージェントであったテシクは、そのスキルを使ったソミを救い出そうとするが…。
『ふたつの祖国、ひとつの愛 -イ・ジュンソプの妻-』
第二次世界大戦中、財閥の企業役員を父に持つ令嬢、山本方子と、のちに高名な画家となる留学生イ・ジュンソプが恋に落ちる。1945年、方子は海を渡ってジュンソプのもとに嫁ぐが、朝鮮戦争による戦火と貧困に苦しんだふたりは離ればなれになってしまう。