古着を愛して30年。古着の魅力ってなんだろう。
ヴィンテージ古着。
出会いは中学生。
女子にモテたいなんて気持ちが芽生え始める思春期。
それまでサッカー一筋で、ジャージしか着ていなかった小学生だった俺が、ファッションに興味を持ち始める。周りの友人達も同様だ。
愛読を始めたのは90年代のストリートファッションのバイブル。Boon。
入手困難で高値が付いていた、NIKE AIR MAX 95 イエローグラデを履いて街中を歩いていたら、怖いお兄さん達に狩られて靴下で帰宅することになる。そんな時代。
90年代前半に古着ブームを巻き起こした(と認識)Boon。
少ない小遣いを貯めては友人と古着屋を回る。そんな中学生時代。高校に入ると世はドメスティックブランドブーム。(MILK BOYとか流行ってた気が)そして裏原ブランドブームへと移行していく。1994年創業、いまだに高い人気を誇るSupremeなんかも、この辺で認知した記憶。
その辺のブームにちょい乗りしながら古着からちょっと離れていた10代後半。ここでまたもや古着ブーム到来。全国に展開していた古着屋 SPINNSが超人気店に。土日なんか満員電車レベルで服なんか見れたもんじゃなかった。そして続々新たな古着屋もOPENしていった。
その時、専門学生。仲良くなった友人達と古着屋を回るようになり、ここで古着熱が再発。
そこから熱は冷めることなく、好きすぎてデザインの道を一旦外れた際に、古着屋さんで働いたほどまでに、その熱は膨張した(笑
4年ほど勤めたアメリカ古着のお店での後半は、古着ブームが去った世の中だった。ブームが去った古着屋の生きる道を探していた時。その時に勤めていた古着屋の社長。アメリカ古着界でも有名人だったその人に、こう問われた。
『ヴィンテージ古着の魅力ってなんだ?』
俺は『・・・・・・・』状態。
好きだ好きだ言ってきたくせに、ストレートに魅力を問われるとスッと出てこない。でも適当に答えたくないので『・・・』状態。一緒にいたもうひとりのスタッフが先に答える。
『生地・部材の良さ、造りの良さです。』
確かにそうだ。それは間違ってない。1970年代頃から突入していく、ポリエステルなどの安価な合成繊維を使い、大量生産大量消費の時代になる以前の服は、基本高級品。どれもしっかりした造りの服ばかりだ。
でもそれだけだと、現代でも高いお金を支払えば、高級な素材、堅実な縫製で作られた、所謂 "質の高い洋服" を買うことはできる。ただその高い服が買えないから質の良い中古品を買ってる? いや、ヴィンテージ古着の魅力はそこじゃない。
なんなら今の古着ブームでは、Levi'sのとあるヴィンテージジーンズが1000万円とかで取引されたらしいですし…
結局俺はこの質問に答えることができなかった。
めっちゃお世話になった別の古着屋のオーナーさんと呑みの席。古着好きが集まれば、基本古着の話ばっかりになる。その席でそのオーナーさんが
『古着って、その時代の文化・政治・音楽が密接に絡み合うから、古着の世界で生きていくならそこまで深く知っていかんとね。』
※そのオーナーさんは、古着を入り口に、フリーメイソンとかその辺までの知識まで凄い人だった。
そう。ここに古着の魅力が詰まっていると思っている。
GOLD RUSH
WORK
戦争
ウエスタン
ロカビリー
モッズ
ロッカーズ
ヒッピー
スポーツ
スケート
サーフ
ヒップホップ
パッと軽く思いつく有名どころだけでもこれだけ出てくる。(上げだすとキリがないのでこのくらいで…)
良くも悪くも政治・音楽・スポーツ・ストリートなどの若者から生まれたカルチャーが多い。中には、戦争・金・差別・ドラッグなんかの暗い要素が絡みあうものもある。
そんなリアルな『当時のカルチャーをファッションとして着る』ことができるのが、ヴィンテージ古着の魅力なんだと思う。
※嵌りすぎるとバックボーンなんか関係無しに、とにかく古いヴィンテージの服をひたすら探すモンスターと化す。
だから古着好きな著名人や有名人を見ると思うが、芸術肌のアーティスティックな人が古着を好む傾向にあるのは、ここなんじゃないかなと思っている。
ファッションなんか自由なんだから、そんなもん関係無しに『かっこいい!』『かわいい!』で着ることも断然アリだと個人的には思う。どんな業界も、『こうじゃないといけないを押し付ける古参』が、その業界を衰退させますし。
16年前の当時は答えることができなかった
古着屋社長の『ヴィンテージ古着の魅力ってなんだ?』の問い
今ならこう答えたいなと思って書きました。
終わり