生足魅惑の何某
夏休みも残すところあとわずかとなってしまった。月曜日が近付いてくる時特有の不穏な足音が聞こえる。日曜日あたりには断末魔の叫びを上げてしまいそうだ。もう嫌すぎて一日中断末魔の叫びを上げ続けていることになるかもしれない。キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!今のうちにトムブラウン布川およそ5000人分の肺活量を誇れるよう準備しておくべきなのかもしれない。
と、御託を並べるのはさておき問題なのはこの夏休み中に僕が何も有益なことを成し得ていないということだ。
本来ならば自動車免許を更新するついでにペーパードライバー講習に通い、失われた幻の運転スキルを奪還しているはずだったのだが免許の更新に時間がかかりすぎて何もかもがどうでもよくなってしまった。もう一生ペーパードライバーでいいや。完全自動運転技術が進むのを祈るばかりである。いや、技術が進み過ぎてもう車が空飛んでる世界とかになれよ早く。
免許の更新以外にもやるべきことは色々あった。あと1ヶ月も経たないうちに25歳になるのでそろそろ実家という要塞を脱け出して独居生活を始めたい、そのために独居生活の計画を立てるというものだ(そういえば「実家」という言葉の定義について「実家っつーのは嫁入りした人間がもともと暮らしてた家を指すのであってウンタラカンタラ」とか学生時代にウダウダ蘊蓄を垂れてきた奴がいたけど、いやどうでもいいよそんなことで揚げ足取るなよお前!よくよく調べたらそういう意味以外でも使用可っぽいし何なんだよ本当に、一番謎なのはこの話の脱線の仕方ですけどね、ということで話を元に戻そう)。
こちらも案の定というか何というか何も具体的な計画を立てられないまま夏が終わりそうである。今のところハッキリしている予定は引っ越し完了後にプロジェクタースクリーンを買って部屋で映画を滅茶苦茶観まくるということだけである。……よくよく考えたら普通に実家でも出来る。だから今一歩具体的なアクションに踏み出せないのかもしれない。しかし流石に25歳で実家暮らしともなると世間的にもなんだかなぁだし、まあ金が貯まるから実家で暮らすことのメリットが皆無という訳ではないんだけれども、自分で自分の時間をコントロール出来ない部分が多いという致命的なデメリットもある訳でなんだかなぁ~とやっぱり阿藤快的心境に陥らざるを得ない。
あとはそう、転職活動である。
こういったまとまった休暇で転職活動しないならいつするの君は?普段の平日は疲弊しきって「辞めたい……けど辞めるための布石を打つ労力がもうない……いいやまとまった休暇が取れる時に一意専心、集中してやれば……」ってなってるのがデフォルトなのにいざその時機が到来したら無気力にかこつけて見送るつもりなのか君は?本当は転職しなくてもいいと心のどこかで思ってるんじゃないのか?ただ行動するのが面倒くさいだけなんじゃないのか?今まで何の実績もない自分がどこかに採用される見込みなんてない、と最初から諦めてるんじゃないのか?
と、上記のような幻聴が毎日のように聞こえてくるのだがどうしてもエントリーシートというか応募書類みたいなものを用意する気になれない。転職サイトに登録して求人を探してはみたものの、応募要項に「経験者歓迎(未経験者?来ても良いけど……まぁ……うん……)」とか「コミュニケーション能力に長けた人募集!」とか「リーダー性を遺憾なく発揮出来るような人募集!」みたいなことばっかり書いてあって「社会不適合者歓迎!他人と1秒以上目を合わせて喋ることが出来ないあなたも大丈夫!我々がしっかりサポートします!(※我々もあまり目を合わせて話せないので指示は基本オンラインテキストになります)」みたいな文言を謳っている求人はどこにもない。
なあ人事よ、冷静に考えてみてくれ……コミュニケーション能力に長けた人材、リーダー性を遺憾なく発揮出来るような人材が転職活動しようと思うか?仮に思ったとしてもそれは給料が上がるから、自宅から近い場所で働きたいからとかいう不純な動機なんじゃないのか?そんな不純な動機で会社を選ぶような人間が誠実に働くと思うか?冷静に考えてみれば今働いている会社が嫌で転職してきた人間の方が次の職場に希望と期待を持っている分、誠実に働き会社に貢献できるんじゃないのか?さあ、わかったら「コミュニケーション能力一切必要ナシ、報連相出来ない人間大歓迎、諸々の費用支給、飲み会等一切ナシ、年中在宅勤務OK、出社する必要一切ナシ!」という看板を掲げてこの忌まわしき資本主義社会に異を唱えるんだ早く!!………………いや冷静にならなきゃいけないのはお前だよ。
と、まあこんな感じで具体的な方策を打ち出そうとしても脳内で陳腐な笑劇が勝手に展開されてしまうので永遠にものごとに着手できない。
今年こそこの陰鬱とした境遇から脱出して肌色多めな水着美女と遊興に戯れられるような夏を満喫しようと息巻いていたのに、理想と現実の溝は深まるばかりである。もうすぐ25歳の誕生日だっていうのに年齢=恋人いたことない歴という傷を背中に負っている所為で全然精力的に活動出来ない。前々回の記事で書いたようなことがもう一回あればいいものの(当リンク参照)、当分あのような偶発的な事象は起こり得ないだろう。
悲しいかな、普通の20代前半の男性であるならば経験済みであるような異性交遊を全くしないまま思春期を通過した所為で非常に良くない拗れ方をしてしまっている。普通の男性が異性交遊を通して発散している性的な欲求、これを消化する手段が限られ、自然とそういった欲求が抑圧されるので、その反動で通勤電車に乗っていてもOLの生足とかタンクトップニットの胸元とかをガン見してしまう。
夏は全体的に露出面積が増えるので目のやり場に困る。やり場に困るというか困っているように見せかけて普通にガン見してるんだけど、気付かれてないかどうか至極不安である。そう思うのならば見るなという話だがあまりにも生足の主張が強いと自然と磁力的に視線が吸い寄せられてしまう。特に女子大生のあまりにも白くスベスベな質感の生足、太ももはもはや挑発的でさえある。「いいぜ、お前がそんなに見たいっていうなら見せてやらないこともないが……責任はちゃんと取ってもらうぜ……大いなる凝視には大いなる責任が伴う……」とでも言うかのように堂々とあらわになった太ももを見せつけられるとこちらもなけなしの体力を振り絞ってなんとか見ないように平静を装うんだけれども、太ももから発されるフェロモン的な何かに耐え難く「アッ……ウッ……痴漢系AV……ウッ……フェミニズムへの理解…………性的搾取…………アッ……わかってる、女性をそういう目で見ることはこのご時世ご法度だって頭ではわかってる…………僕だって性犯罪者は許せない、女性の心に生涯消えない傷を負わせる輩は紛れもないクズだ、某K大学の強姦事件が報道される度に虫唾が走って仕方ないじゃないか、僕が一番嫌いなタイプの人間だ…………でも男子校という史上最悪の悪徳機関によって僕の下半身はサル寄りに改造されてしまったんだ、男子校を許すなッ、いやそれは言い訳だッ……でもアッ、太ももまでならずタンクトップニットに包まれた豊満な、アッ、それは一体なんと形容したらいいんですかお姉さん、アッ、アッ、そんなに強調されたらアッ、アッ、アッ、アアアアアアアアアーーーッ!」と情けない雄叫びを上げて結局屈服してしまうことになる(何言ってんだコイツ)。
でもそろそろ女性側に「ちょっもしもし警察ですか?今電車でスーツ姿でおまるに跨ってるオジサンに太ももと胸をじっと凝視されててすごく不快なんですけど、っていうかなんでこのオジサンはおまるに跨りながら通勤してるんですか!?」と通報されてしまいかねないので、これからは目線を女性の太ももや胸ではなく家から持参して来たおまるに固定しなければならないだろう。いや実は自分がおまるに跨りながら通勤するヤバめの異常者だったっていうこの叙述トリック何?要る?ちなみに念のため本当のことを言っておくと僕は何にも跨らずに普通に出勤してます。……いや、もしかしたら跨っているのかもしれない。この社会という、おまるよりもある意味不衛生で汚れきっちまった歯車に……………………。
おわり
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