ハナミズキ 《心情⑬》
みんなが知ってる秘密基地をつくって
みんなに見える場所に籠城して
時計を横目でみる夕焼け
そんな日が何より楽しかったじゃないか
みんなと一緒が欲しくて
みんなと違う誰かになりたくて
一つとして煌めかない鉄紺のなかで
意志から離れた一等星
籠の中の鳥よ
ずっと立ち尽くしていた
どっちに向かおうと引きずられて
自分の意見を、気持ちを
なんてさ
あたたかな春風
空虚に靡く髪の毛
手首を掴む生温さに蹲る
深呼吸とともに思い出す
ある世界線の夢の中
意味なんて何もなかった
感情なんてどこにもなかった
本当はああなりたかった
本当はそうじゃなかった
指示語だらけの思考回路
諦めだらけのリボン・レッド
あの子が欲しい
きっと自分に嘘をつき続けていた
これから差し伸べられる整った手のひらを
研がれた方便で切り裂いていく
しかないのかな
どろりとした金木犀
すり減らす蝋燭
特別さえ紡げず
背中を目で追った
ぎらつく塩素
握りしめたビニル
明日一番に交わせるなら
悪戯心も悪くないか
囚われた繰り返す未練
不透明なままの後悔
置いてけぼりの僕の手
取り残され
もう戻れはしない
そんなこと言われなくったってわかっているさ
だけどたまには前を変えて雫を落としたってかまわないだろう?
上書き保存じゃなくても
さようなら ありがとう
さようなら ごめんね
さようなら 大好き
じゃあね 元気でね
乾く痛み
高い瓶覗き
膜の張る眼球
手を握りしめ
冬の残る陽炎
枝の凪ぐ椿
滲む汗に
次を感じてる
乱れたのは僕の正
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