フクジュソウ《心情⑥》
手先からピキピキと凍るような空気を掻き分け夜に出る。
真っ暗と言うほど暗くはないけれど、約束通りについた車のライト。
世界を巻き込むような大きな音のパチンコの前を通って顔を顰めながらも安心してしまう。
代わりしかない寂れたブランコ
人工的な蛍
まだ空をみれば雲が見えて掴めそうなのにみんな夜のふりをする。
際立つ自動販売機に、街頭に、ハイビーム
きっと世界もこうなんだ。と思考が巡る
周りの辛いに一つの明かりで幸せに見える。
でも辛いなんてない方がいい。
じゃあ周りが幸せだったら。
一つの明かりに見向きもしないだろう。
誰も日向だけがある世界を望んだりはしないし、
日向だけがある世界を作ろうと臨んだりはしない。
突き刺す寒さのせいでコントロールが効かなくなった第二関節
もう昨日の感触すらない
希死念慮をあやす揺れに目がくらむ
僕を睨む月光
お天道様が見てる。ていう気分になるから満月は嫌いだ。
どこにいこうと、なにを考えていても、そこには月がいて。
寄り添うって言っても空から降りてきてくれるわけではないし。
でも、新月は好きになれる。
見えないのにそこ在るのは事実で
心みたいだなぁーー
っていつからか思うようになった。
別に満月から新月になったとて降りてきてはくれないけれど
見えないなら自由に感じることができる
悲しき思い出に無視を決め込んで永久の幸福を招く