精神的露出狂
私は我が身の内の内側に醜き獣が棲んでいるように思えてならない
そしてそいつを解き放ちたい衝動に駆られてならない
その獣を見せびらかしたいのだ
そのくせそれが恐ろしくて仕方がない
羞恥なる恐怖と衝動の狭間で煩悶する
劣等感と優越感の狭間で一喜一憂する
ある時は躁に入り、醜悪を美の煌めきなどと思い上がり、努めて喧伝しては細やかな評価で悦に入り
それが過ぎれば鬱に入り、死にたくなる程の羞恥に苛まれて気が狂いそうになるのだ
もはやどちらが本当の自分なのかが解らない
自分がどこに在るのかが解らない
ならば躁に入ろうとも内に秘めて黙しておけ
それが無難というものだろう
しかし突き上げてくる衝動には抗えない
親しき友が言うように、私は精神の露出狂なのだろう
その性癖を抱えながら正常の人間のふりをして生きている
異なる者の劣等感と優越感は背中を合わせて我が身の影となる
来る日も来る日も暗い部屋の中で独り人生を呪いのたうち回りながら
心の底から正常な人間になりたいと渇望し続けて、また一年余りの歳月を浪費したが、失われたと思われていた感受性に灯が点り、想像力と言葉が迸る
内なる獣は蠢き、解き放てよと、唸りざわめき、鋭き爪を突き立てる。そして私はこいつを放つために産まれてきたのではなかろうかなどと、頭の中の声が囁き始める
獣を放てば途端に飛翔し、龍となれるような思い上がりに囚われそうになるのだ
二十年余りの間、愚かな悪循環を繰り返し続けてなお、燻り続けて消滅しない煌めきがここに在る
それが己の存在意義のように思えてならないのだ
だから心の水面に舟を浮かべては
風に問う
私は如何に生くべきか
水に問う
私は如何に在るべきか
2022年 春 美咲
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