新規就農時は借金するチャンス この機会を逃さないで

新規就農時に後悔した経験について、少し詳しく書きたいと思います。農業を始めるときには、多くの人が「頑張って自分の農業を作り上げたい」と意気込んでいますが、実際には色々な準備と計画が重要で、そこに気付くのは後になってからということも少なくありません。今回は、私の経験を元に、新規就農1年目の重要性や、計画の立て方、資金の使い方についてお話ししたいと思います。

1年目に設備投資をするチャンス

新規就農を考えている方にとって、1年目は大きく設備投資ができる絶好の機会です。というのも、新規就農時には借入がしやすく、特に「認定新規就農者」になれば、市町村役場や県の普及所のサポートを受けられるからです。日本政策金融公庫では、認定新規就農者として青年等就農計画を提出することで、最大3700万円の借入が可能です。これは大きな資金であり、農業を軌道に乗せるために使える貴重なチャンスです。

さらに、このような借入制度は、新規就農の1年目に特に有利です。2年目以降も支援はありますが、条件が厳しくなります。たとえば、2年目以降は所得150万円を超えていることが求められます。このハードルを越えるのは簡単そうに見えますが、農業技術が未熟な場合、約半数の新規就農者にとってこの壁は非常に高いものです。そのため、最初の1年間を有効に活用し、しっかりとした計画を立てることが重要です。

技術習得の大切さと後悔

私自身も、農業技術をある程度学んでから就農しましたが、正直なところ半年間の技術習得では不十分だったと感じています。もし、2年以上の期間をかけて農業技術を学び、その上で独立していたら、もっと順調にスタートを切れたかもしれないと後悔しています。このことは後々の失敗や学びにつながったものの、最初の計画段階で技術面の準備に十分な時間をかけていれば、さらに大きな成果を出せたかもしれません。技術は農業の基盤であり、しっかりと学ぶことが安定した収入を得るためにも不可欠だと今では感じています。

設備投資と運転資金の管理

1年目に設備投資をすることは非常に重要です。なぜなら、初年度においては資金を引き出しやすい環境が整っているため、2年目以降には難しくなるような投資が可能だからです。私が勧めたいのは、まず大型ハウスを建てることです。たとえば、10アールのハウスを建てるには約1500万円ほどかかりますが、これは農業の収益基盤を強固にするために有効な投資です。また、残った資金は、計画的に少しずつ使用するようにしましょう。最初に大規模な設備投資を行い、運転資金はあくまで試験的に使うことが、長期的な経営の安定に繋がります。

加えて、資金に余裕を持つことも大切です。資金不足が原因で初年度に思うような結果が出せず、経営が苦しくなるケースも多く見られます。そのため、可能であれば借金をしてでも利子が発生しない青年等就農計画を活用し、計画的に設備投資を行いましょう。初年度から大きな負債を抱えることへの不安もあるかと思いますが、農業は長期的な視点で考えるべき産業です。資金に余裕を持つことで、リスクに対する備えも整えられ、結果として1年目から安定したスタートを切ることができます。

初年度の成功と失敗がもたらす影響

初年度の農業経営に成功した人の中には、1年目から年収1000万円以上を達成するような、いわゆる「化け物クラス」の農家も存在します。しかし、このような例は稀であり、多くの新規就農者は、初年度に苦戦を強いられることがほとんどです。実際、私も初年度に十分な準備ができていなかったことが原因で、失敗を繰り返す結果となりました。初年度の失敗は負の連鎖を引き起こしやすく、そこでの挫折が次の年にも影響を及ぼすことが多いのです。そのため、初年度からしっかりと準備し、リスクを抑えつつ、計画的な行動を取ることが重要です。

また、失敗を経験することで学べることもありますが、農業は毎年同じスタートラインに立てるものではありません。毎年積み重ねていく経験と知識が重要であり、「強くてニューゲーム」を繰り返すことができる農業経営者になることが求められます。つまり、初年度の準備不足が原因で、ずっと失敗が続くことは避けたいのです。何事も準備に越したことはなく、農業も例外ではありません。

まとめ

新規就農1年目は、多くのチャンスとリスクがある時期です。この1年をどのように過ごすかで、その後の農業経営の方向性が大きく変わることを実感しました。特に、認定新規就農者として借入を利用できる初年度にこそ、しっかりとした設備投資を行い、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。また、農業技術をしっかり学び、長期的な視点で計画を進めることが成功への道だと思います。

私が経験した後悔や失敗が、これから新規就農を考える方の参考になれば幸いです。農業には困難も多いですが、確実な準備と計画によって、その困難を乗り越えることができます。

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