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東洲斎写楽 / メトロポリタン美術館
山村美紗にハマる小学生のはじめての殺意
番組などでよく聞く芸能人への質問。
「最初に買ったCDは何ですか?」
自分でも考えてみると、すぐにあの曲だなとめぼしがつく。
しかし、最初に自分で買った本は?と聞かれたら、すぐには出てこない。
大人に買ってもらったものか、自分で買ったのか。
幼少期のそのあたりがとっても曖昧。
記憶をぐるりと掘り返してみる。
多分、小学生の頃に買った山村美紗のどれかの殺人事件だろうか。
どの事件かは覚えていないけれど、アメリカ人のキャサリンが主人公になるシリーズが好きで、たぶんその中のどれかだったと思う。
舞台が京都なので、小学生ながらに事件現場や出てくる場所がすべてわかって、具体的に想像できるのが単純に楽しかった。
京都で生まれ育った小学生の私は、夢中で読み漁った。
猟奇的殺人でもないし、大人の快楽が描かれることもないので、小学生でも抵抗なく読める推理小説だった。
読んでいる途中でも面白いことを共有したくて、休み時間の教室で当時の担任に向けてビブリオバトルなみのプレゼンで、いかに面白いのかを話していた。
同級生の男の子が話に加わってきて、すでに自分は読了しているぞと自慢したかったらしく、今でいうマウントを取ってきて、
「その本面白いよな、〇〇が犯人で(笑)」
と、言ったときには殴ってやろうかと思った。
推理小説の醍醐味を、推理する楽しみを、一瞬で奪われて打ち砕かれた。
たぶんこれが、私が初めて「さつい」という感情を抱いた瞬間だった。
ような気がする。