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森井の鑑賞記録 2021年10月

【10月9日 モーリス・ベジャール・バレエ団「ボレロ」(東京文化会館)】

無限の抽象世界「人はいつでも夢想する」から現代の恋人達「ブレルとバルバラ」、そしてラヴェルの「ボレロ」へと多彩で豪華なプログラムであった。人生初のバレエ鑑賞が当公演であったことが感に堪えない。

特に最後の「ボレロ」が圧巻で、ダンサー全員があの絶え間ないスネアのリズムを全身で保ちながら、どんなに激しい動きでも統率が終始取れている。このような人智を超えたものを肉眼で見てしまったら、観客はスタンディングオベーションするしかないことを知る。


【10月24日 ラファウ・ブレハッチ ピアノリサイタル(サントリーホール)】

パイプオルガンを背景にしたバッハのパルティータ2番で観客全員の心が開かれた。ベートーヴェンからのフランクで音色の切り替わりの速さに驚かされた。休憩後、ショパンのソナタ3番。その美しさを構成する複雑な要素が余す所なく表現されていた。見事。

以下は個人的嗜好の話。正直、冒頭の「バッハ貯金」があったからこそ、デモーニッシュにひた走るソナタ3番を聴き切ることができた。胸があまりに痛くて刺さるものがあって座りながら蹲ってしまった。最後まで正気を保てるブレハッチの精神力はいかばかりか。気が遠くなる。