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渡る世間に鬼はない!

「ギムナジウムという、ドイツの素晴らしい教育制度の下で子ども達を学ばせたい」という父親の強い希望で、フランクフルトのギムナジウムに進学したのが1986年・・・ですが、最初はまったく馴染めませんでした。理由はドイツ語云々というよりも、友人関係にありました。というのも、前項で書いたように、クラスの大半が同じ小学校の出身者で、『よそ者』だった僕はその輪になかなか入れずにいたのです。そのため、特にグループ活動が多い授業は、辛かったのを覚えています。例えば調理実習のとき、僕が間違った材料を使ったことが原因で料理が失敗に終わった際、直接非難されるならまだしも、「ていうか、誰アイツ?!」的な対応を受け、落ち込んだものです。5年生はほとんどずっとそんな感じで、みんなと仲良くしていく自信がありませんでした。僕がちょっとした体調不良を理由に、学校をすぐに休もうとするので、さすがに母親も「あんた、友達いるの?」と心配だったようです。

なんだかんだ言って、入学したばかりの頃は全員が苦労していたのだろうなぁと、今では思います。クラスの大半が同じ小学校の出身者であったとはいえ、ギムナジウムという新たな環境で自分の居場所を確保するのに、みんな一生懸命だったのではないでしょうか。そこで、連携を深めるべく、共通の目的意識をもつことで、『オレたち』と『オレたち以外』というカテゴリーが設けられた、ということだと思います。

転機が訪れたのは6年生のとき。宿題の内容を確認すべく、休み時間に鬼ごっこをしていたクラスメイトに何気なく近づいた際、なんと僕にオニ役を振ってきたのです。おお!オレもちゃんとカウントされてる!しかも、いきなりオニ!その瞬間、自分は今まで勝手に殻に籠って孤立感を抱いていたけど、そんな必要はまったくなく、もっと自分から積極的に働きかければいいんだということに気づいたのです。ちなみに、その鬼ごっこハプニング以降は、クラスの輪にすんなり溶け込むことができました。子どもの世界って、時には残酷ですが、時には単純でいいですね(笑)。

それからというもの、学校生活が楽しくなりました。休み時間の鬼ごっこを通じて、クラスのみんなとの友人関係を築けた上、ギムナジウムで頑張っていく自信を持つことができたのです。

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