【コラム】アビトゥアの仕組み+ちょっとしたご褒美?
アビトゥア(Abitur)とは「大学入学資格」のことを指し、それを取得していれば、原則的にドイツ国内におけるどの大学、どの学部にも入学することができます(例外については後述します)。
『アビトゥア』と聞くとつい、ギムナジウム高等部の最終年度に受ける試験のことだけを想像しがちですが、その評価に関しては、試験のみならず、ギムナジウム高等部(2ないしは3年間)の成績も加味されます。
アビトゥアは、『資格段階』における成績と『アビトゥア試験』における成績の総合点数によって付与されます。前者はギムナジウム高等部の成績、そして後者は実際のアビトゥア試験の成績を指します。成績は、最高点が900点で、その内訳は①資格段階が600点、②アビトゥア試験が300点となっています。合格には少なくとも300点を取得する必要があります。
州によって若干の差はあるのですが、アビトゥア試験は通常、4教科によって構成され、その内訳は筆記試験が3教科で、口頭試験が1教科です。試験教科には、ドイツ語、数学、外国語/自然科学/情報科学が必ず含まれていなければなりません。筆記試験の3教科は、『重点コース』2教科および『基礎コース』1教科から構成されます。なお、重点コース・基礎コースの詳細につきましては、『【コラム】ギムナジウム高等部の仕組み』をご参照ください。なお、筆記試験の3教科は、3つの課題領域(①言語/文学/芸術課程領域、②社会科学課題領域、③数学/自然科学/技術課題領域)の少なくとも2つをカバーする必要があります。
重点コース・基礎コースの選定時と同様に、アビトゥア試験の組み合わせについてもそのような前提条件があるため、受験生には慎重な対応が求められます。
アビトゥア試験の出題はマルチプルチョイス方式ではなく、論文試験の形式がとられています。筆記試験の所要時間は、教科にもよりますが、大体200~300分で、口頭試験は20分です。
アビトゥア試験は州ごとに行われます。出題される問題はほとんどの場合、各州の文部省が統一的に作成しています。試験後に付与される大学入学資格は『Zeugnis der Allgemeinen Hochschulreife(一般的大学入学資格証明書)』と呼ばれます。
アビトゥア取得者が原則的にドイツ国内のどの大学、どの学部にも入れることは既述したとおりですが、入学希望者が多い学部(生物学、医学、薬学、心理学、獣医学、歯学など)には入学制限(Numerus Clausus)が行われ、入学までに一定期間待たなければならない場合もあります。その際、アビトゥアの成績やアビトゥア取得後の待機期間に基づいて、入学者の選考と配分が行われます。
ギムナジウム高等部、そしてアビトゥア試験という長い道を乗り越えてきた生徒達が楽しみ(?)にしているのは、アビトゥア試験の実施後に行われる『Abistreich(アビィシュトライヒ)』です(試験前に開催されるケースもあり)。AbistreichとはAbiturとStreich(いたずら)を合体させた単語で、「アビトゥア試験までに溜まったストレスを発散させるための儀式」のことを指します。
この時とばかりに、教員達に悪ふざけをする生徒達。僕がアビトゥア試験を受けたときは、教室から運んできた机と椅子で1階にバリケードを作ったほか、すべての出入り口をチェーンと南京錠でロックする、というようなことをやっていました。その後始末に追われる教員を横目に、生徒達は労をねぎらうわけです。
しかしこのAbistreich、中には近所迷惑や教員に対する誹謗中傷へと発展するケースも残念ながらあり、学校によっては事前申請が必要な場合もあるようです・・・ギムナジウムの最終章、せっかくならきれいに締めくくりたいものですね。