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デザイン史(概論)#01 デザインとは?”デザイン”という言葉とルネサンスにおける署名の始まり
はじめに
これは、大学での講義をまとめて不定期に少しずつ記事にしていっています。
専門的になりすぎず、なるべく平素にわかりやすくなるよう、努めていきます。
しかしボリュームがあるため、いつ終わるかわかりません。(汗)
一般的な意味で使われる「デザイン」という言葉
デザインという言葉は、英語でDesign と書きますよね。
日本語では、設計する とも訳されることはみなさんもご存知かもしれませんね。
しかし、今では、設計することとデザインすることは、同義語のようで、別のことのようで曖昧に言葉が使われているように思います。
試しに、google検索で、「デザインの基本」と検索すると
上位に出てくるのは、ほとんどが二次元の視覚デザイン(グラフィックデザインや
資料作り、出版系、エディトリアルデザイン)などの、方法論です。本などで上位に出てくるのは、ほとんどそういった二次元制作物の狭い意味でのルールやマニュアルと言っても良いのかもしれません。そして、これらの本は、どちらかというと、
表現したいこと(コンテンツ)をうまく表すための手法(デザイン)
のような印象を与えています。
本屋に行っても然り。以前、授業のことはじめに「デザインとは何か?」のテーマで資料を探しに行った際に、「デザイン」の棚にあるほとんどの本が視覚系のルール・マニュアル本だったので愕然としました。
同時に、デザインは非常に広い意味を持っています。
美術と何が違うのか。など広く深いテーマになりそうです。
ここではその意味や定義に深入りすることはやめておきますが、単純に考えても、
そもそも、何をデザインするのか?の目的語があります。
そして、その対象は、二次元的な視覚に限るだけではなく、
物理的なモノだとしても二次元ではなく空間などのような三次元もあり、
目に見えないモノや、物理的ではないコト(音、光などのものから、プログラムや組織など様々なコト)
などもあります。
今の所、見た目を整えるという狭義の意味でデザインという言葉が一般的には使われているという印象です。
ただ、”デザイン思考” という言葉が流行ったように、ビジネスシーンでは、この広い意味、かつ本質的な意味でのデザインという言葉が使われていると思います。
設計するという意味のデザイン(語源)
Design という言葉の元になっているのは以下の言葉です。
designare デシグナーレ(ラテン語)
:意図する、計画する、描く、線を引く、スケッチする
desegno デザーニョ(イタリア語)
:製図・線画・素描・デッサン・図面
→15世紀 イタリア・ルネサンスの時代に「構想すること」が生まれる
さて、この語源から見ても、見た目を整えるとは違うことがわかります。
むしろ、コンテンツを作る方がデザインである、とも言えます。
15世紀(ルネサンス時代)における、デザーニョ
ルネサンスといえば、三大巨匠が活躍したことは知っている人も多いことでしょう。
それは、誰でしょうか?
一般的には、
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)
ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)*本当はもっと長い名前ですが、通常この名前で知られています。
ラファエロ・サンティ(1483-1520)
で知られています。
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ちなみに、レオナルド・ダ・ヴィンチは、よく知られたモナ・リザを描いた人ですよね。日本では ダヴィンチ と呼ばれる事が多いですが、
ダ・ヴィンチは、ヴィンチ(村出身)の と言う意味なので、美術界では、”レオナルド”と呼ぶのが通例なんです!
この時代に、デザーニョという言葉が使われました。その意味は、素描すること、構想を練ることなどです。
主に中世までは、元来、職人というものがあり、職人は、決まった形を受け継いでそれを継承して作る。という性質がありますが、ルネサンスの時代に何が革命的だったかというと、個性、つまり作家性と言えるものが出てくることです。
この、デザーニョという言葉には、構想する意味がありますが、ルネサンス期の芸術家は、パトロン(芸術の庇護者:教皇などの権力者や労働組合など=今でいうところのクライアント)にいくつかの案を出し、相談し、構想を練っていました。
案を出す、ということは、つまり自己主張、自己表現でもあるのです。その第一歩として、自分の作品であると主張すること、つまり署名ということがあります。
実はそれまでの宗教画などには、作家性というものは問われなかったので、誰が書いたかの署名は存在しませんでしたが、このルネサンスの時代からは、作品の中に、製作者=作家の署名の原型ともなるものが現れてきます。原型と言ったのは、名前を直接書き込む代わりに、絵画の中に自分を描いたりもするからです。ラファエロのアテネ(アテナイ)の学童という壁画には、ラファエロ自身が描かれていると言われています。
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右の柱あたりを拡大してみます。
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わかりましたか?
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さて、実は、この絵画の中央あたりには、レオナルドとミケランジェロも描かれているんです。見つけてみてください。(ヒントは一番上の画像です!)
ミケランジェロが名前を直接記したのは、ピエタという彫刻にのみと言われていますが、面白い例があります。それは壁画の『最後の審判』の中で、自画像が描かれています。
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中央右下のあたりを拡大してみると・・・
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なんと!かなりお疲れのご様子ですね・・・。
心なしか、右下の人物も”なんてこった・・・”と言っているような・・・?
ミケランジェロは本当にたくさん仕事をこなしている人だったので、本当にお疲れだったのだろうと思わせます。
また、署名なので、カッコよく描きそうなものですが、カッコよくないリアルな姿?なのか、このような形である種の自己表現をしているということは、本当に興味深いと思いませんか。
これはローマの中心にある世界一小さい国、バチカン市国にあるシスティーナ礼拝堂というところの祭壇に描かれています。
この絵画にはもっと面白いエピソードもあるのですが、それはまたの機会に笑
実はこれのレプリカが日本の徳島県にある、大塚国際美術館にあります。陶器でできており、ほぼ実物大らしいので、(私はまだそちらには行ったことがありませんが)興味のある方はぜひ行ってみて下さい。
さて、今日はデザインという言葉について少し考えていって、ルネサンス期のデザーニョという言葉が持った意味、その言葉を使う背景としての作家性の誕生について、少しだけ触れてみました。
デザインと作家性という点から見ると、今現在、デザインというものがより身近になっていて、誰でも気軽にデザインを学んだりできるようになったことは、つまりは個人の作家性を発揮できる場がより多くなっていることなのかもしれないと思います。
その意味で、ルネサンス期に遡ってデザインということを考えてみると、なかなか本質的で深い意味が読み取れるのではないでしょうか。