“Tu sens bon.” ひとり言@フランス語
わたしの職場には食堂がある。でもそこをわたしは利用していない。
悪口の溜まり場で、悪の温床となっているので近づかないようにしている。
なのでランチは常に外へ食べに出ている。大雨の日も、灼熱の日も。
今日もいつものように外でランチを終えて店の外に出ると、甘さの強い金木犀の香りがした。行きは気づかなかったのに風向きのせいか?と思い、周りを見渡してみると、小さな細い金木犀の木が一本あるだけだった。
わたしのいる場所から30mくらいは離れている。金木犀って香りの飛距離がすごいなと思った時、わたしは同時に自分の職場にいるある人のことが頭に浮かんだ。その方はシニア枠の中途採用で昨年入社された65才近くの男性で、身なりがとてもきちんとしている。
わたしのいる部署は他部署と比べて女性の割合が多い。
『加齢臭とか匂いがあると周りに嫌われるわよ』と奥さんに忠告でもされたんだろうか、その方はいつも香水をつけているのだけれど、その香りがものすごく強い。
(仮名でお名前を関さんとする。)
あ、関さんここにいたな。
あ、関さんがこっちに来る。
と、香りで関さんの挙動はまるわかりである。
香水って難しい。あんまり付けすぎると関さんのようになってしまうし、逆に付けなさすぎだと自分で香りがよく分からなくて楽しめない。ほのかに香るのが最高なんだけれども、その塩梅が難しい。
フランスにいる頃は、関さんみたいな人がまわりにたくさんいたように思う。学校の先生、受付の方、横を通りすぎる男性、スーパーのレジでわたしの前に並んでいるマダムとか、フランス人の多くがそれぞれの好みの豊かな香りを身に纏っていて、ときに色んな香りがミックスされすぎて、いい香りなんだか、弊害なんだかわからない時もあった。
でも、フランス人にとって香水は身だしなみアイテムの一つであるので、本当にみなさん色んな香りがしていた。
そういえば、以前わたしのフランス語の個人レッスンの先生に「(そこから漂う雰囲気から)美味しそう」って言う時の “ Ça a l’air bon.” の「bon」って、人に対しても使えるか聞いたことがある。
先生は、「もちろんだよ。挨拶でビズをした時とかに、相手からいい香りがすると “ Tu sens bon ! ” って言うことあるよ」と教えてくれた。
“Tu sens bon.”
言われてみたい。
関さんもこう言われる程度に香りを落ち着かせてくれるといいんだけどな。Tu sens bon. なんて言われたら、素敵なおじさんになれるかもしれませんよって伝えてあげたいかも。
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