ブランドを体験できる素敵なショップデザイン
観察が日課のFRACTA AD(アートディレクター)宮崎です。
コロナ禍はまだまだ落ち着きませんが、新しいお店はどんどん増えてきており、ユーザーと直接コミュニケーションが図れるショップデザインに力を入れているお店が増えたなと感じております。そこで今回は最近出会ったお店も含め素敵なお店をご紹介します。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
幻想的な光の演出FUEGUIA 1833
南米発フレグランスブランド「フエギア」。創業者べデルが幼少期を過ごしたアルゼンチンの文化や歴史、芸術、音楽などをインスピレーション源に調香。香りのノートを音楽のコード進行になぞらえ、トニック、ドミナント、サブドミナントの3層で軌道を描くように回る独自のイメージ図を採用しています。
4月にできたGSIXのお店に行ってきました。オレンジの壁で囲われた異国の雰囲気が漂うお店。空間の隙間から見えるキラキラひかる瓶の美しさは、思わず入ってみたい衝動に駆られます。
内装は、べデルが生まれ育った南米の架空の家と、日本の伝統的な家屋の様式を組み合わせたそう。弁柄色の外壁は左官職人によって仕上げられ、赤松を使った柱、イタリア産のタイルを網代張りで敷き詰めた床、フランス様式に着想したアーチを施した壁面など、こだわりを詰め込んでいます。店内は光る瓶と壁のほのかな間接照明のみの暗めのライティング。光源はボトルが隠れるくらいのサイズでカウンターに埋め込まれており、その上に瓶が置かれることで、発光しているかのように見せていました。そして瓶の上にかぶさるフラスコはムエット代わりで、お客さんはこれを使って試香します。
たくさんの小さな光源をガラスを通して密に作ることで、空間全体の光が複雑化し、幻想的でエキゾチックな雰囲気を作り出しています。香りと調和して、ブランドの世界観を五感で感じることができました。
おしゃれな横丁スタイルのイータリー銀座
イタリア・トリノに本店を構えるフードショップ。イタリア食材と食文化をキーワードに、イタリアピエモンテ州やリグーリア州で作られた上質な食材や飲料などを展開する。
イータリー銀座店は、3つのレストン、イタリアン・カフェ、マーケットの5つで構成されており、オープンな雰囲気でとても入りやすい空間になっています。今流行りの横丁スタイルですね。お店とお店の間に隔たりがなく、1つに繋がった空間の中で、いろんなものがぎゅっと集まっている空間。そんな空間の中ではしごしながら、ゆったりと時間を過ごすスタイルが街に多く見られるようになりました。
5つのお店で構成されているイータリー銀座ですが、それぞれの空間にあった光の演出があります。向かって正面のバルは発光するロゴサインをセンター袖に設置しており、カウンター下のグリーンの壁の間接光と相まって、空間全体の顔となっています。一方でカフェエリアでは乳白の丸い照明をメインで使うことでリラックスできそうな柔らかい空間演出をしています。メインであるマーケットは、スポットライトメインで、商品を明るく照らすことに徹しています。それぞれのお店の良さを引き立たせる工夫が随所になされることで快適に過ごすことができます。
ついでに、横丁スタイルの最近のお店をチラッと。
広尾のTHE RESTAURANT
虎ノ門横丁
原宿のJINGUMAE COMICHI
代々木のGOOD EAT VILLAGE
ギャラリーのような表参道のナンバーシュガー
無添加、保存料不使用のキャラメルブランド。職人が1つ1つ手作りで丁寧に作っています。
レンガのような素材を積み上げて作られたカウンターは、よくみるとキャラメルのような細長い形をしており、色味も1つ1つ微妙に違っていてどこかキャラメルを彷彿とさせますね。下の空間(カウンターと床)をレンガでまとめ、上の空間を白でまとめて面にすることで、自然素材の温かみはあるけど野暮にならずメリハリがある洗練された空間になっていました。定員さんは白衣のような装いで、照明は全て天井の埋め込みでスッキリさせることで、ギャラリーのようないい緊張感を演出します。キャラメルというと子供のお菓子のようなイメージもあり親しみ感が強い商材ですが、ギャラリーのような洗練された空間で販売することで、1つ1つ手作りした品質の高いものであることを伝えていますね。
種類ごとに並べられた一個売りのカウンターを見ていると、ペーパーウェイトもキャラメルらしき形をした木でできています。それらが、きちんと種類ごとのキャラメルの色を表しており、全てが意味を持ってそこに置かれている気持ちのいい緊張感があります 。キャラメルの写真を紙に印刷する方法ももちろんありますが、あえてペーパーウェイトにしてキャラメルそのものを表現するユーモアは、選ぶ楽しさにつながっていますね。
帰りにキャラメルをいくつか買ったのですが、そのパッケージもまた素敵でした。晒クラフト紙に1色印刷とてもシンプルですが、イラストが描かれたカードを挟んでクリップで止めることで、パッケージとして可愛く仕上がります。低コストでオーセンティックなやり方ではありますが、キャラメルのサイズ感とマッチしており、さりげないパッケージがむしろブランドの印象を良くしていると感じました。
外国のような開放感のあるパン屋さんbreadworks
天王洲アイルにあるTYハーバー系列のパン屋併設のカフェ。ビール酵母を使ったパン作りをされています。
天井や窓からの自然光を生かしたつくりで「開放感」がこのお店の1番の魅力です。古い倉庫のリノベーションで、天井の高さを利用したナチュラルで優しい空間でした。落ち着いたオークの床と淡い色合いのレンガが優しい風合いを感じさせます。また黒のアイアンとブラスが組み合わさった乳白の照明、スティールやガラスで、ナチュラルな中にも洗練された印象があります。高橋信雅さんのドローイングもこのブランドのアイコンになっていて、気持ちがなごむような程よい緩さを演出しています。
天井が高いだけで、外国っぽいも雰囲気が出ますよね。空間が広くなるので、たくさんの椅子やテーブルがあっても全体の中で小さな存在となり、ごちゃつきではなく、抜け感につながるので、洗練された印象になります。
breadworksはTYハーバー(レストラン)、ウォーターラインと合わせて1日中水辺のライフスタイル楽しめる場として設計されているのもあり、カフェとして気持ちを解放してリラックスできる場として、空間づくりをされていると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回ご紹介したショップを見ていくと、気づく点がいくつかあります。
ブランドの魅力を引き出す光の演出
今回ご紹介した5つの店舗はどれも、ブランドのサービスやプロダクトを引き立てる最高の光の演出がなされていました。第一印象は光で決まると思います。ここにきた人にどんな体験をしてもらって、何を感じて欲しいのか。ブランドコンセプトと一貫する空間づくりによって、人の記憶に残る体験となります。
空間の顔がある
立地にもよりますが、多くのショップは歩きながらお店をパッと見た瞬間にハートを掴まなければなりません。そのためにはお店の顔が必要です。ブランドを満遍なく全体的に表現するのではなく、見せ場を作り一瞬でブランドのインパクトを与え、通りゆく人の印象に残すことはショップデザインの使命とも言えます。
いかがでしたでしょうか?
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