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ときめきの過剰摂取で瞳孔が開く(『ときメモGS4』初プレイ感想・前編)

約3か月前に『ときめきメモリアル Girl's Side 4th Heart』をやるぞと一大決心をした。このゲームの舞台となるはばたき市に「マリィ(主人公の愛称)」として降り立ってから、同市に住民票を取得できそうな勢いで入り浸っている。

いやむしろ、はばたき市の住民として納税させてくれないか。もしかしたら私の税金がはばたき学園または羽ヶ先学園の補助金となり、そこに通う彼ら・彼女らの未来を支えるかもしれない。そのお金で二人三脚の足紐とか陸上部のハードルとか理科室のスライド式黒板を買ってくれよ!!

プレイ中は、動悸・息切れ・咆哮・悶絶など挙動不審のオンパレードで、とても人に見せられるような姿をしていない。あまりにも心を揺さぶられる経験をしたので、各キャラクター(追加コンテンツ除く)との初プレイの感想だけでもしたためておきたいと思う。ちなみに致命的なネタバレはないので、将来のマリィ候補にも安心してお読みいただける。スチルの条件には少し言及しているので、それだけご注意いただけると幸いである。

過去に本作のゲームの実況を見てはいたが、ありがたいことにゲームのストーリー等の記憶は星の彼方に飛ばし去っていた。おかげで新鮮な気持ちでプレイし、キャラクターの一挙手一投足に順調に悲鳴を上げている。自分のよわよわ記憶力に圧倒的感謝。サンキュー、私のポンコツブレイン。


あなた好みの女になれない

初プレイは誰と恋愛するかは決めず、気になった男の子と仲良くなっていこうと進めていたが、『ときメモ』GS4の王子様キャラクター・風間玲太(かざま りょうた)氏の初手アプローチにグイグイ押され、そのまま風間ルートに突入した。

だが、ひとつ私を苦しめることがあった。風間好みの女になれない。普段の私はシックな服が好きだし、ひとつ行動を起こすのにも石橋を叩き割る人間だ。だが、彼好みのマリィはウルトラキュートでたまに小悪魔、天真爛漫で天然で感性的。そんな女、私と正反対やんけ!

デート初回、シックな服を着ていってめちゃくちゃがっかりされた思い出。そんな眉をひそめなくても良いじゃん。あなたの好みのキュートな服は、生来のオタクにはためらわれるのよ。なんだこのパステルカラーのミニスカートは。着れるか。着てたまるか。

と、そう思っていた時期が私にもありました。1年目の後半にはふわふわラブリーな服を着こなし、もはやウルトラキュートの権化となったマリィが爆誕した。しかも、たまにセクシーも嗜む。最強かよ。

好きな男の前では己の信念すらも塵の如し。あなた好みの女になってしまった。

そしてデートの選択肢も私を悩ませる。彼とのデートではちょっとドジっ子で天真爛漫、それでいて知性も求められる。ハードルが高すぎる。ドキドキデートタイムがいつの間にか、相手の期待する回答パターンをプロファイリングする探偵行為と化していった。ちょうど『シャーロック・ホームズ』を読んでいてよかった。助かる。

そんな気持ちでデートを重ねていたら、『名探偵コナン』の夢を見た(そこは『シャーロック・ホームズ』じゃないんかい)。ただ、登場したのは黒の組織のジンとウォッカで、なぜか私は捕縛されていた。度重なる探偵行為と言う名のデートが黒の組織の逆鱗に触れたのだろうか。そんなわけがない。

ジンのアニキが私に情報を吐かせようとするので、私はマンガ『名探偵コナン』の1~10巻を差し出した。めちゃくちゃ悪手じゃん。すわ、江戸川コナンの正体がバレるのも時間の問題。そう思ったのも束の間、彼らは楽しんでマンガを読んでいた。なんでや!気付けや!と思いながら目を覚ました。

そうこうしているうちに(どうこうしているうちに?)、無事に通常告白エンドを迎えることができた。デートで無知 of 無知な回答をしてあきれられたり、調子にのんなと釘を刺されたり、なんかずれてると落胆させたり、恋愛観について何の気なしに聞いてとがめられたり、なんだか申し訳ない記憶が多い気がしなくもない。すまぬ。

ただ、人や物の価値を大切にする彼の心は終始一貫しているように感じた。そんな彼と手を取り合いながら共に過ごす、マリィというパートナーがいて本当に良かったと思う。幸せであれ、風間。

垣間見えるきみのわがまま

続いての恋の相手は本多行(ほんだ いく)くん。事前情報から彼の人となりについては存じていたが、自分で体験してみるとまぁなんて素敵な男子なんでしょうか……。

常に明るく活発で「知りたい」という欲求にまっすぐであることが彼の魅力。高校生クイズ王になるほどの知識を持ち、分かりやすく相手に伝える知性もそなえている。

他方で人の気持ちが理解できず壁にぶつかることも。そのことを受け止め整理し、言語化しようと試みるさまもとても良い。そして自分ひとりだけではなく、様々な人の視点で物事を見ることで新たな気付きがあることも知っている。なんだなんだ、人間の鑑(かがみ)か?

かと思えば、恋心に自覚的になるたびにそっとわがままな一面を見せてくれる。修学旅行のスチルを初めて見たときなんて、あまりにも良すぎて「ヒィッ」て声を上げてしまった。何度そのスチルを見ても「ヒィッ」てなる。思い出すだけでも「ヒイッ」てなる。ふだんニコニコしている彼が、自分が何よりも優先したい感情に気付いたときのまなざしに、心撃ち抜かれないやつおるん?

好感度が高いと発生する追加デートで「恋愛について聞く」という選択肢がある。ここからはじまる一連の流れが大好き過ぎる。自分に生じた不可思議な気持ちを「恋愛」に起因するものとして分析しようとするくせに、ついつい頭に浮かんだ素直な言葉を口に出しちゃう本多くん。胸がギュンってなる。

でも恋愛ってそういうものだよね、理屈抜きで感情がぶわーっとなるよね……!そりゃついバイト中もいちゃいちゃするわ!(しないで)

そして、彼の感情の高まりにあわせ、私の心の中のときめき警察が一切の仕事を放棄するので、心の治安が保てない。スクショをする手が止められない。瞳孔が開いたガンギマリの状態で、息をするようにスクショをしてしまう。ちなみに、人は恋愛をする(何かに興味や好意をもつ)と瞳孔が開くと言われているらしい。思いがけずひとつ賢くなってしまった。

そんなガンギマリィ(ガンギマリ・マリィの略)であるが、無事に彼との真告白エンドを迎えることができた。この告白がとても良い……。想いを伝えるときの感情的な本多くんにまたしても「ヒィッ」てなってしまう。

思考系なのに感情型でもあるキャラクターを、破綻させることなく魅力的な人物として描写できるの本当にすごい。どこの神様にお詣りすれば、こんな素敵な男子を生み出すことがてきるん?その神社教えて、お賽銭ぶち込んでくるから。ついでに心の治安維持を祈願するから。

一生分の「カワイイ」

次の恋の相手は、モデルと学生の二つの顔をもつ七ツ森実(ななつもり みのる)くん。彼は初回デートの際に「モデルのすがた」と「通常のすがた」のどちらかを選択でき、以降、デートの際にはそのすがたで登場してくれる。ちなみに途中で変えることはできないという、なかなかのハードな仕様。私は「通常のすがた」で冒険を進めることにした(RPGみたいな言い方)。

彼とのルートを進めていて感じたのは、マリィがいつも以上に鈍感だということ。そんなマリィに振り回される七ツ森くんを見ていると、「報われてくれ」という感情が芽生えてくる。特に、相手の心の声が聞こえる「ホタルの住処」の恋愛・嫉妬トークはいちいち身悶えてしまった。

モデルをやっているからか「カワイイ」という言葉を発するのにためらいがない。マリィに対してとにかく「カワイイ」「カワイイ」と言ってくれる。マリィ、私の一生分に匹敵する「カワイイ」を七ツ森くんから浴びてない?それなのに鈍感ってどういうことなの?私が代わりに彼の気持ちに応えておこうか?

一方で、心配性と自信のなさからくる彼の心の声が胸に突き刺さる。着飾った自分はみんなが注目してくれるけど、中身は空っぽで自分の言葉なんか届かないんじゃないかという不安感。

そんな七ツ森くんが感情を爆発させる修学旅行イベントが……はにかんじゃうくらい良くて……アオハルここに極まれりって感じで……。ここからどんどん自分の気持ちに向き合っていく彼もとても良くて……。

モデルという非日常的な存在のように見えて、実は一番等身大の高校生っぽい存在が彼なんじゃないかなと感じている。彼の真告白エンドも無事に迎えることができたが、告白の内容は甘酸っぱいし、その後の帰り道トークもなんだかキラキラしてる。

ただ、私はモデル姿の彼とはデートしたことないし、どうやらもうひとつの顔がありそうなこともぼんやりとつかんでいる。まだまだ彼の一側面の魅力しか見ることができていないので、落ち着いたタイミングでルートを極めたいと思う。

そして、このタイミングで「ときめき修学旅行(通称:とき修)」という概念について知った。本多くんのあの「ヒィッ」ってなるスチルも、七ツ森くんの青春大満喫のスチルも、修学旅行までに一定以上の好感度を得ることで発生するものらしい。おいおい、そんなのいつだって見たいじゃないか……。というわけで、ここからとき修に囚われたマリィが暗躍する。

氷室一紀を落とせない

続いては後輩枠の氷室一紀(ひむろ いのり)くん。後輩枠ということで登場するのは2年目4月から。『ときメモGS1』で登場した氷室零一の甥にあたり、行く先々で氷室の名前に縛られる生活に嫌気がさしている模様。

ここまでせっせと一途プレイを続けており、今回の一紀くんについても同様である。彼が登場するまでの1年間、遊びにも行かずデートも誘わずバレンタインも何も用意せずに、ひたすらにパラメーターを上げまくるストイック・マリィが爆誕した。

2年目4月。一紀くんの入学を迎えて、マリィ(転生4回目)の恋が、いま、始まる。とき修実現に向けてあの手この手でアプローチするマリィ。一紀くんも最初は突慳貪な態度を取るけれど、だんだんにマリィに心を開きはじめる。修学旅行の季節を迎える頃には、いつしかときめき状態に……。


ならないんだが?????

一紀くんが登場する4月から修学旅行がある9月まで、正味5か月間でマリィは一紀くんをときめき状態にしなければならない。だが、これが非常に難しい。この期間の休日をすべて一紀くんとのデートに捧げ、好みドンピシャの服を着て、好感度の高いデート会話をしてきたつもりだった。それでもだめだった。氷室一紀が落とせない。

修学旅行前日を迎え、絶望した。とき修に取り憑かれた私は最早それなしでは生きていけない。一紀くんは学年が違うので、旅行中を彼と一緒には過ごせない。それどころか、親密な関係でないと連絡すら取り合わない可能性がある。マリィにはそういうところがある。

畳み掛けるようにして、ここで大変な事実に気付いた。一紀くんに会うその時まで、1年間かけて必死に自分磨きを続けてきたマリィ。その結晶である2年目4月のデータをうっかり上書き保存してしまった。今、私の手元にあるのは、修学旅行を迎える1か月前からのデータのみだ。1か月前に遡ったところで、一紀くんが期日までにマリィのことを好きになる可能性はゼロだ。詰んだ。

何度も自問自答したうえで、苦渋の決断。氷室一紀くんとのとき修を迎えるために、マリィを再転生させる。そう、もう一度1年目の4月から彼に出会う準備をはじめるのだーー。

そういえば聞こえが良いが、言ってしまえばやり直しである。またこつこつとパラメーターをあげ、会話スキップも多用しつつ、1年目のイベントを無感動でこなしていく。来たるべき2年目4月を迎え、一紀くんと再会を果たしたときも(彼にとっては初めての出会いであるが)、ようやくスタートラインに戻ってきたという疲弊感が先立った。

ここで初めて攻略情報サイトのお世話になり、指定された通りに彼とのデートをこなしていく。デートのいくつかは既に見たことのある内容で、やはり感動は薄く感じてしまう。だんだん、自分はなにをやっているのかと鬱々とし始める。

急に話は変わるが、私は『ときめきGS4』を進めながら空いた時間でミヒャエル・エンデの『モモ』を読んでいた。本作にはこんな描写がある。

「はじめのうちは気のつかないていどだが、ある日きゅうに、なにもする気がしなくなってしまう。(中略)そのうちにこういう感情さえなくなって、およそなにも感じなくなってしまう。なにもかも灰色で、どうでもよくなり、世の中はすっかりとおのいてしまって、自分とはなんのかかわりものないと思えてくる。怒ることもなければ、感激することもなく、よろこぶことも悲しむこともできなくなり、笑うことも泣くことも忘れてしまう。そうなると心のなかはひえきってもう人も物もいっさい愛することができない。」

ミヒャエル・エンデ作、大島かおり訳『モモ』

会社帰りの電車の中で読んで、ハッとした。そういえば、ここ最近の私は「とき修」に取り憑かれ、一紀くんの言葉や表情、感情に心を動かしていただろうか。答えは否だ。

『モモ』に登場する言葉を借りれば、「怒ることもなければ、感激することもなく、よろこぶことも悲しむこともできなくなり、笑うことも泣くことも忘れてしまう。」――そんな状態になってはいなかったか?まさに「心のなかはひえきってもう人も物もいっさい愛することができない」を体現してはいないか?

情緒をやられ、奇声を上げながら、瞳孔をバッキバキに開いて胸をときめかせていた私はどこにいった。好きなコンテンツを前に、心を動かされなくなってしまったら、たぶん人生は、とてもつまらないものになってしまう。これまで頑なに自分を見せようとしなかった一紀くんを、一番近くで見ているマリィが無感情でどうする。

そんな気の持ちようで、一紀くんとの交流を改めて眺めてみる。サーターアンダギーが好きだったり(意外すぎるんだが?)、見かけたからと言って駆け寄って挨拶してくれたり(可愛いわんちゃんか?)、にらめっこしてくれたり(一緒ににやってくれるの最高過ぎる、一生にらめっこしよ)、デートに誘うと食い気味でOKをくれたうえに「遅れてなんかこないでよ?」と言ったり(は?かわいいんだが?)。どんどん可愛さが増してくる。なんだこの愛い子は。

『ときメモGS4』は好感度が「好き」以上になると、苗字ではなく名前で呼んでくれるようになる。彼に初めて名前を呼ばれた時の感動は一生忘れない。ベッドの上で声にならない悲鳴をあげながら、またしても瞳孔を開きスクショをキメていた。しかも名前呼びなのに「先輩」の敬称は維持されていて、可愛さがカンストしている。はー、かわいい……。今度は私が一生分の「かわいい」を言っている気がする。

そんな風に過ごしていたら、あっという間に卒業の日が近づいてきた。こんなマリィの卒業をさみしがって泣いてくれる一紀くん。とき修に囚われて、無感動に過ごしていた彼との日々に少しの罪悪感が生じるも、考えを振り払う。今のマリィは彼のいろんな姿を見て、かわいいところも素敵なところもたくさん知っているからな。

胸を張って残りの期間も一緒に過ごし、無事に真告白エンドを迎えることができた。帰路の彼の笑顔が最高過ぎてちょっと涙してしまった。

ときめきの過剰摂取で瞳孔が開く

読み返してみると、風間氏とは真告白エンドを迎えられなかったことに気付く。はじめての「ときメモ」ということもあり、彼との学校生活を楽しみきれなかった感もある。彼に対する敬称もまだよそよそしい。リベンジをしたい。いや、しなければならぬ。

さて、4人の男子との恋愛を経て、改めて『ときめきメモリアル Girl's Side 4th Heart』の凄さを目の当たりにする。これでもかと「ときめき」を浴びせてくる。まさにときめきの過剰摂取。これには私の瞳孔も開きっぱなしである。おかげでドライアイがすごい。

これでまだ折り返し地点なので恐ろしい。果たして、全員との恋愛を終えたとき、私は無事に息をしているのだろうか。今のところ、ときめきの過剰摂取で亡くなった事例はないので安心しているが、私がその第一号とならないよう慎重にプレイする所存である。


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