『ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド』は人生の宝物となったのか?〜ブレワイに情緒をめためたにされた話〜
約2ヶ月ぶりの記事投稿である。noteの通知を見れば、「4月30日までに記事投稿すれば11ヶ月連続更新だよ!」とお知らせが届いていた。しかしもう5月半ばである。時すでに遅しが過ぎる。
ちまちまと更新を続けていたnoteを書く暇もなく、更に言うと大好きな本や漫画も最近はまったく開くこともなかった。
では、この間にお前は何をやっていたのか。
声を大にして言おう。
『ブレワイ』である。
『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』である!!!!
2017年3月3日に発売され、2023年5月12日には続編『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』の発売が控えている本作。わたしは発売から約6年後の2月10日に購入し、そして約3ヶ月間にわたり夢中になって、いや、情緒を狂わされ一部の生活を犠牲にしてまで、作品に入れ込み猛烈にプレイした。そして、先日ようやくクリアに至ったのである。
なぜ発売から約6年後になって今更購入・プレイしたのか。そして3ヶ月間も心を奪われたのはなぜか。本記事は、ひとりのアラサーが『ブレワイ』に情緒をめためたにされながら、クリアに至るまでのすべてを記録したものである。
ゲームに関する本質的なネタバレはないのでご安心ください。
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さて、突然ですが時を戻そう。
私は小学生のとき、この世には自分には絶対にプレイできない3大ゲームタイトルがあると思っていた。それは、『バイオハザード』『ハリー・ポッター』『ゼルダの伝説』である。
なぜか。それはわたしがアクションゲーム、特に3Dのものが大いに苦手であったからだ。好きなゲームは『ポケモン』『どうぶつの森』『牧場物語』である。かわいいモンスターを育成したり、森や街、牧場を興したりするのことに喜びを感じるタイプであることは、このラインナップからもお分かりだろう。
『バイオ』『ハリー・ポッター』『ゼルダ』はそれぞれ、友達がやっているのを横で見ながら戦慄した記憶しかない。『バイオ』はあんな怖いゾンビに銃だけで立ち向かうなんて無理だと思ったし、『ハリー・ポッター』はもともと大好きなコンテンツだけれど、当時のプレステのゲームでは甲冑は追いかけてくるわ、モンスターは襲ってくるわ、クィディッチは操作が劇的に難しいわで絶望した。
そして『ゼルダ』である。これは『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』が怖すぎて、わたしとは相容れないコンテンツだと悟った。不気味な仮面を追いかけて、3日間という短い時間をいったり来たりしながら進める緊張感。難易度の高い謎解きに、ボスをはじめとする恐ろしい魔物たち。怖い、怖いすぎる。
とにかく、それらのゲームに徹底的にビビり散らかしていたのである。そんな恐怖の3D世界にほっぽり出されて、シビアな操作を求められるなんて。わたしにはコマンドを選択するので精一杯。ピカチュウに10万ボルトを指示することしかできない。
そんな小学校時代を過ごしたわたしは、以降も3Dアクションゲー厶とはお付き合いをすることなく、粛々と自分ができるゲームコンテンツを楽しむ日々を過ごし、気づいたらアラサーになっていたのである。
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そんなある日、ひとつのツイートが目に入った。
かなりバズった投稿なので、ご存じの方も多いのではないだろうか。そしてこのツイートを見て最初に思ったのは、「“人生の宝”になるゲームなんて、果たしてあるのだろうか」ということである。
わたしは『ポケモン』がとても好きで、その思いは別記事でも綴っているのだけれども、人生をともに過ごした相棒"みたいな感じだ。もしくは、“一緒に歩んできた友だち”といったところだろうか。私を形成する一部分ではあるけれども、すごく身近な存在で、“宝物”と表現するには少し崇高過ぎるような気がしてしまう。
単純に“宝物”となるゲーム体験はどんなものだろうか。これがブレワイに興味をもった、最初のきっかけだったと思う。それが本当なら味わってみたい。
しかし、正直、昔から苦手意識のあるタイトルであり、しかもオープンワールドであるという。そしてかなりの死にゲーだとも聞いた。全くもってクリアできる気がしなかった。けれども、好奇心が勝った。
折しも、『ポケットモンスター レジェンドアルセウス』『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』を立て続けにクリアしたタイミングである。泣きながらギャロップから逃げ、ヒスイウエンディにボコボコにされ、パルデア地方を迷子になりながら、多少のアクションとオープンワールドの歩き方を任天堂とゲームフリークに鍛えてもらった気がする。
もしかしたら、いけるのではないか?
そして、2023年2月10日、淡い希望をもってわたしはブレワイの物語の舞台、ハイラルの地にパンツ一丁で降り立ったのである。
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しかし、初ハイラル上陸のわたしを襲ったのは、強烈な洗礼の数々である。
100年の眠りから目覚めた主人公リンクは、パンツ一丁でそのまま魔物がはびこる世界にポンと放り出され、しかも全ての記憶を失っている。最初に手に入る武器は木の枝と斧。なんの説明もなくいきなり魔物が襲いかかってきて、謎の老人にはやれ高い塔に登れだの、やれ寒いところに行けだのと指示される。
魔物に襲われては死に、高いところから落ちては死に、ちょっと慣れてきたと思ったら、よくわからん古代兵器に即死ビームを食らわされる。
何だこの世界は。慈悲はないのか。
最初のチュートリアル的台地を突破するのに、確か10時間くらいかかった記憶がある。
チュートリアル終了後は、こんどは地図も持たずにだだっ広い世界を進めと言われ、ここからは更なる恐怖と手汗との戦いである。高い塔を目印にがむしゃらに進み、恐ろしそうな魔物を目にしたら、認識されないように息をひそめてやり過ごす。はじめて魔物と霊体以外の人と出会えて喜んだのも束の間、のべつまくなしに色んな人に話しかけていたら、そいつが急に趣味の悪い衣装に変身して、命を刈り取る形をしてるだろう……?的なナイフを手に襲ってくる。
もう一度言う。慈悲はないのか。
普段は砂漠のようにざらざら乾燥肌なわたしだが、手汗が尋常じゃない。やっぱり怖い。しっとりしたSwitchを握って、恐怖の奇声を上げつつ目的地を目指す。
そんな、「臆病」✕「ビビり」✕「ゲームセンスなし」のフルコンボだドン!な私を支えてくれたのは、他でもない、主人公リンクであった。
元々は大層強い剣士であったらしいのに、コントローラーをしっとり手汗で握ってるポンコツのせいで、まあまあ死ぬし、ヒットアンドアウェイの姑息な戦法しかできないリンク。それでも目の前の敵や目的を果たすために、臆することなく進んでいくリンク。
土地を巡り話を聞いていると、どうやらハイラル王国は100年前に厄災ガノンの復活を受けて滅亡したらしい。当時、王女ゼルダ姫付きの剣士で、ガノンに対抗する英傑の一人がリンクだったそうだ。ガノン復活による魔物の侵攻で命運尽きたリンクは100年の眠りにつき、ゼルダ姫は封印の力を使いハイラル城で厄災ガノンの復活を食い止め続ける。
そんな世界と姫を救うために、ガノンに対抗する術を開放し、記憶を取り戻すためにゼルダ姫の足跡(ウツシエ)を巡るリンク。真面目に一途に剣を振るい、大地を掛けるリンクにだんだん尊敬の念を抱き始めてきた。リンクなんて呼び捨てしてる場合じゃない。さんをつけろよデコ野郎。リンクさんと呼べ、リンクさんと。
そんなリンクさんをきちんと目的の地まで連れていかなければならない。だんだんとそんな使命感が生まれてきた。
そんな気持ちが芽生え始めた頃には、リンクさんの体力が増えがんばる力も増し、少しずつ景色を楽しむ余裕が出てきたのである。色々な人に言及されているが、行きたいところにはどこでも行けて、見える山には全て登れる。
美しい景色とともにリンクさんは様々な人と出会い、様々な土地を冒険し、そしてひとつずつ記憶を取り戻していく。
最初の一歩を踏み出すのはあんなに怖かったのに、いつの間にか、新しい土地と出会いにわくわくできるようになった自分がいたのである。
ありがとうリンクさん。絶対に私がゼルダ姫のいるハイラル城に連れてってやるからな。
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私がブレワイを一言で表現すると、「冒険をして、自分を知る」である。
「臆病」✕「ビビり」✕「ゲームセンスなし」の私だが、目的があれば気合と気力と奇声で何とかするらしい。
ゲーム開始当初、容赦なくビームでリンクさんを焼き殺した古代兵器への復讐のために、手汗まみれになりながらひたすら盾ガードの練習をしまくったし、村人の頼みであれば生態不明な謎の一つ目の巨大魔物をゴリ押しで倒しに行った。
思い出深いのは、3つ目の塔を目指して愛馬に乗っていたときに、気づいたら敵の拠点のど真ん中に突っ込んでしまったときである。わたしは奴らの攻撃に落馬し、愛馬は為すすべもなく魔物に囲まれて立ち往生している。
そこにはモリブリンという魔物がうじゃうじゃ居て、当時のわたしが立ち向かえる相手ではない。すまぬ、馬。わたしは、無情にも愛馬を置いてそのまま塔への道を選んだ。許せ、馬。
しかし、ここまでの旅路を共にした愛馬である。それに、リンクさんは馬を捨て置いて自分だけ助かろうとするだろうか?
答えは、否だ。異論は尽く却下だ。
わたしは馬を救いに、奇声をあげながら剣を片手に特攻した。ただひたすらに、がむしゃらに攻撃を繰り返し、覚えたばかりの回避をたどたどしく使い、気付いたら周りの敵は一掃され、そこには愛馬の姿があった。感動の再開である。
ビビりで姑息な手段ばかりで、リンクさんに申し訳ない気持ちさえ抱いていたが、大切なもののためなら頑張れることを知ったアラサーである。
後で分かったことだが、どこかに置いてきた馬は、馬宿で自動的に回収できるらしい。だが、それが何だ。私は愛馬のために決死の覚悟で敵陣に突っ込める人間なんだぜ?(ただしボス戦だけはどうしても苦手で、攻略サイトのお世話になりっぱなしである。)
さて、「冒険をして、自分を知る」という言葉だが、これは私の尊敬してやまないリンクさんにも当てはまる。
過去を知る人に会い、ウツシエを辿り、徐々に記憶を取り戻していくリンクさん。冒険を続けていくと、リンクさんの仲間である4人の英傑、そしてゼルダ姫の想いがだんだんとよみがえる。
そのストーリーの切なさ。ゼルダ姫の苦悩、そして、やはり一途に剣を振るうリンクさんの姿。
もう、情緒はめためたである。正直、この3ヶ月の脳の容量は半分以上をブレワイが締めていた。仕事なんてどうでもいい(どうでもよくない)。こんなに切ない100年前の思い出があってたまるか(これはたまらない)。
極めつけはゼルダ姫の日記である。これは誇張なしに、全人類が読んだほうがいい。わたしはこの日記に感極まり、最後のウツシエを超特急で探し出し胸がギュン!となり、そのまま厄災ガノンのいる城の本丸まで猪突猛進した。祠やミニチャレンジなど全て回収してから、満を持してラスボスに挑むつもりだったが、そんなことはどうだっていい。リンクさんがこの世界を救わなくて、誰が救うんだ。誰がゼルダ姫を助けるんだ。
そして、ゲーム開始当時の不安をよそに、無事にクリアに至った次第なのである。
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結論である。
このゲームは“人生における宝物”になったのか?
自信をもって伝えよう。「宝物になった」と。
絶対に自分じゃクリアできないと思っていたシリーズに足を踏み入れ、恐怖と手汗と戦いながらも、主人公に自分を投影しながら、美しい自然の大地を、様々な思い出と共に駆け抜けた。
あの日、偶然見たあのツイートがこんなに素晴らしい体験につながるなんて。全世界にお礼を伝えてまわりたい。
パンイチでハイラルに降り立ったリンクさんは、100年の時を超え、冒険と出会いを経て、再びフルスペック最強剣士となった。
『ムジュラの仮面』にビビりまくっていた人間は、十数年の時を超え、なんとかリンクさんを目的の地まで連れて行くことができた。
そして、もうすぐ続編『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』の発売である。
今度はどんな“宝物”に出会えるだろうか?とても楽しみでやまない。
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