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相続:親子になる。~養子縁組~

おひとりさま・LGBTsの方向けのお話しです。

【シリーズ 相続】
親とは違うということ。
最高の相続対策とは。
親子になるか、他人のままか。
親子になる。~養子縁組~
子が先に旅立つとき。~養子縁組~
子が親を見送るとき。~養子縁組~
すべてを遺せない?!遺留分について。~遺言~
最後のラブレターを書こう。~遺言~


今回は、私たちが愛する人・大切な人に財産を遺す手段の一つとして有効な「養子縁組」についてお話ししていきます。

私からは、養子縁組をオススメともオススメでないとも言いません。またメリットデメリットとも言いません。それは読んでいただいている方たちの状況・環境により、一概に言えないからです。

なので、制度や特徴についてお話ししていきます。このお話を読んでいただいて、こういう方法があるんだ、これをしないと遺せないかも…という気づき、そして愛する人・大切な人がいる方々は、自分たちは養子縁組することが良いのかを、話し合っていただくきっかけに成れればとても嬉しいです。



親子になるには


まず、養子縁組には2種類あり、私がお話しする養子縁組とは「普通養子縁組」です。もう一つ「特別養子縁組」というものがありますが、これは年齢要件や制約があるため、同性パートナーでは実質使用できない制度です。以降すべて普通養子縁組のお話です。


養子縁組をするには

養親と養子の合意があって、役所へ届け出れば成立します。実親や兄弟の了承などは一切不要です。

なお、養子を解消する(離縁と言います)のも基本本人たちの合意+役所へ届け出で完了します。揉めた時は調停や裁判を起こすこととなります。

養子縁組をすること・やめることは難しくありません自分達だけですべて完結させることができます。


養子縁組するときの主なルール

いくつかルールはありますが、私たちにとって重要なのはこのあたりかと
・必ず年上の方が養親になる
・養親は20歳以上でないとダメ
・養子は養親の戸籍に入る
実親との親子関係は継続する

最後が超重要です。養子には、実親と養親2つの親が存在することとなり、養親は養子を通じ養子の実親と関係が生まれることになります。この点が相続において大きな揉め事を生む可能性のあるポイントです。



できないこと、と、できるようになること


養子縁組をすることによって、できないこと、と、できるようになること、があります。いくつか紹介しますね。


できないこと

・離縁時、財産分与請求権がない
・婚姻費用(生活費用)の分担義務、生活費の請求権がない
・外国人パートナーに在留資格が与えられない
一度養子縁組をすると婚姻できない

上2つは、婚姻ではなく親子だからということでしょうね。

最後については、今の法律ではってことです。今後同性婚が認められた場合、同時にこの制約が撤廃される可能性も十分にあります。これは養子縁組を行うか判断するのに、気にしなくていいかなと個人的には思っています。


できるようになること

相続時に法定相続人になれる、相続税面で優遇される
・法的、公的に親族として認められる
・親族限定の生命保険の受取人指定を指定することができる
・遺族年金の受給対象者になることができる
・税金の扶養控除を受けることができる
・住宅ローンなどを共同名義にすることができる
・民間や公営の賃貸住宅に、親子として契約、入居しやすくなる
・病院で医療サービスを受ける際に保護者や代行者として扱われる
・携帯電話などの家族割りが利用できる
養子が養親の氏に改姓(これは任意自由ではなく強制的に改姓します)

法的に親子になるわけですから、実親・実子の関係でできるものは、基本出来るようになります。

あと最後の改姓は、希望したらではなく強制的に養子は養親の姓になります。そのため、公的なモノ(健康保険証・免許証・パスポート・銀行口座など)全てで氏名変更を行う必要があります。なお、離縁した場合は、基本旧姓に戻るので、その際の手続きも必要です。


相続時に法定相続人になれる、相続税面で優遇されるについて

「★相続時に法定相続人になれる、相続税面で優遇されるについて」を、ちょっと深堀します。

はじめに、法定相続人について軽く触れます。

法定相続人とは、亡くなった方の財産を法的に受け取る権利を有する人で、対象とその順序は、配偶者は確実に権利を有し、加えて1位:子→2位:親→3位:兄弟となり、最上位者が法定相続人となります。

例えば、配偶者と2人の子ども、両親がいる場合、法定相続人は配偶者と2人の子どもとなり、法定相続人は3人となります。
実父と兄が2人いる場合、実父が法定相続人となり、法定相続人は1人です。


では本題、養子縁組をすることによって、相続税上主に以下の点が優遇されます。

①相続税の基礎控除額が、法定相続人1人につき600万円増える
②生命保険金と死亡退職金の非課税枠が、法定相続人1人につき500万円増える
③相続税の2割加算を免れる

※以降、養親と養子のみの家族構成で養親が亡くなった場合でお話しします

①相続税は、遺産の総額(各相続人の課税価格の合計額)から、相続税の基礎控除額を差し引いた残りが相続税の課税対象額となります。

基礎控除額の計算は以下のとおりです。
基礎控除額:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

養子縁組していない=法定相続人0人→基礎控除額3,000万円
養子縁組をしている=法定相続人1人→基礎控除額3,600万円
となり、600万円分多く相続税課税を免れることになります。

②生命保険金や死亡退職金を相続する時は、相続税の課税対象となりますが、法定相続人がいる場合、一定金額まで非課税(=非課税限度額)となります。

非課税限度額の計算は以下のとおりです。
非課税限度額:500万円×法定相続人

養子縁組していない=法定相続人0人→非課税限度額0円
養子縁組をしている=法定相続人1人→非課税限度額500万円
となり、500万円分多く相続税課税を免れることになります。

③相続税は、配偶者・親・子ども(世襲相続含む)以外の方が相続した場合、相続税額が2割増えます。もちろん養親・養子も実親・実子と変わりありませんので、2割加算を免れることができます。


実際に相続税額の違いを見てみよう

①②③を組み合わせて、預金3,000万円、生命保険金1,000万円を相続をした場合の、相続税額の違いを見てみましょう。

・養子縁組していない
【預金】3000+【保険】1000-【基礎】3000=1,000万円相続税課税対象 1000万×【税率】10%×【加算】1.2=120万円相続税額
養子縁組をしている
【預金】3000+【保険】(1000-500)-【基礎】3600=0円 相続税課税対象 課税対象額がないため、相続税額0円

養子縁組していない場合だと課税対象額1000万円に課税され、2割加算も加わることで相続税が120万円になるところ、養子縁組をしている場合、生命保険金の非課税限度額500万円と、起訴控除額が600万円増えることで、相続税課税対象が0となり、相続税も0円です



どんな揉め事が起こるのか


前回もお話ししましたが、養子縁組を行うことで、揉め事が発生する可能性が生まれます。その原因として文頭でもお話しした、「養子縁組は自分達だけで完結できる」「実親との親子関係は継続する」ことが主な原因のひとつとなります。

どういう場合に揉め事が発生しやすいのか、それを回避するにはどうすればよいのか、前回お話しした内容を次回はその点詳しくお話ししていきます。

私がお話しすることも参考にしてもらいながら、遺したい方と話し合いを進めていただければ幸いです。今の自分が将来のパートナーを助ける愛情と思いやりをもって話し合いや準備を進めていってもらえたら嬉しいです。


最後まで読んでいただき、まことにありがとうございます。もし何かご質問等ありましたら、お気軽にコメントくださいね!!

快惺事務所では、同性パートナーや法定相続人以外に財産を遺すことについて、ご相談を承っております。ご興味ある方は以下のリンクから快惺事務所WEBまでお越しくださいますと幸いです。


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