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生命保険営業のリアル(2)~ファイナンシャルプランナー進化論⑤
当社の企業理念(Mission)の冒頭に「Evolution of Life ~人生に進化を~」というフレーズがあり、この一連の記事も「~進化論」と題名にしたことでも理解頂けるかと思うが、私にとって「進化」というのは私自身の人生における大きなテーマになっている。
学生時代にあまり勉強せずに、居酒屋からスタートして、商社、外資系生保、FP事務所(独立起業)、というキャリアがまさに進化そのものであったし、毎年毎年新しく進化した自分になりたい(出会いたい)、自分の可能性を信じ続けたい、という根っこにあるマインドの影響もあると思う。
もちろん、「20代・30代ならまだしも、間もなく47歳になるオッサンが、もっともっと進化成長出来る、思っていること自体が手遅れじゃない?」 とふと冷めた目で自分を見てしまうことも時にはある。
ただ、企業理念の2行目に書いた「ファイナンシャルプランナー(社員)の進化を通して顧客と社会に貢献する」という起業動機はゆるぎないものがある。
そして、前職の外資系生保で私が最も影響を受けた上司の言葉、「トップの進化成長の伸び幅以上に組織やメンバーが進化成長することはない。」に確信を持っているからこそ、社員の進化成長の為にも、貪欲に私自身の進化を追求していきたいと思っている。
①の記事や前回④で書いたように、まさにこの経営方針MVVCが明確でなかったからこそ、創業当初に大コケしてしまったのだが、脱サラと起業の動機として「人材を進化成長させたい」「成長意欲があるのに環境と機会に恵まれていない人材の役に立ちたい」「経済合理性が優先され人材が消耗して、成長のチャンスを奪われることが許せない」という強烈な思いだけはあった。
ではなぜその思いから、外資系生命保険会社を退社して、課題解決型ファイナンシャルプランナー事務所の経営に行き着いたのか、もう少し背景と経緯を説明したい。
外資系生保の支社長職で、生命保険営業を成功させる再現性について悩んだことは既に述べた。
もちろん、時代の潮流の影響も大きい。
国内生保全盛から、黒船のように現れた外資系生保が一時期業界を席巻していた時代は過去のものであり、来店型保険ショップや損保系の新興生保も一気にシェアを伸ばしていた。そのため、客観的に見てもフルコミッションの保険営業パーソンの成功のハードルはかなり上がっていた。
そんな状況下でも、多くはないにしても保険営業として成功している営業パーソンは一定数存在した。
では成功する営業パーソンとそうでない営業パーソンの差は何なのか。私の中で答えは出ていた。形もなく損保のように必要性を感じにくい「生命保険」という商材を販売するからこそ、それはその人材の「顧客にとっての」「付加価値」の差であると。
保険営業の付加価値とは、顧客から、
「この人にまた会いたい」
「この人から保険に加入したい」
「この人に今後も私の担当としてサポートしてほしい」
「この人を家族や友人知人に紹介したい」
と思って頂けるかに尽きる。
そしてそう顧客に思ってもらえるかどうかの「付加価値」には「今」を起点にした場合、
A:コントロールが不可能なその人材の過去や先天的なもの
B:今からの努力でコントロール可能なもの
とに分けることが出来る。
そして、再現性を高め、より多くの人材の付加価値を上げるには当然Bの要素である、「これから変えることが出来る未来、コントロール可能な部分」に着目して力を注いでいく必要がある。
大前提、どんな業界でも職業でも、その道で成功する人は、(誤解を恐れずに言えば)「立ち上げ初期の圧倒的な仕事量」と「成果へのコミットメント」がある。
その前提があったとしても、生命保険営業においては成功する為の要素は圧倒的にAに寄っていた。
・学歴と職歴からくる人脈
・話法を習得して自分の言葉で表現できる口頭表現力
・顧客から愛される容姿や対応力
・生まれ持った性格に起因する積極性やコミュニケーション能力
・「稼ぎたい」「成功したい」という強いマインドと経済的価値観
そう考えた時にトレーナーの人材育成という立場で、Bに重きを置いた下記に列挙する理由から生命保険営業という枠をむしろ取り払い、ファイナンシャルプランナーに進化することこそ、その人材の進化成長だけでなく、広く顧客や社会に貢献できるのではないか、そう仮説を立てるに至った。
【①知識】
生命保険営業においても、知識はとても重要なのは間違いない。ただし、怒られるかもしれないが、こと個人保険分野においては知識と営業成績はほとんど比例しないので、営業パーソンの勉強や知識アップのモチベーションに繋がりにくい。
一方でファイナンシャルプランナーは、顧客が「広く深く知っていて当たり前」というスタンスで相談にいらっしゃるので、当然勉強や情報収集の動機付けは強烈にある。
勉強や知識情報をストックすることは、とても地味で日々の積み重ねである為、特別な能力は必要ない。向上心さえあれば、誰でも着実に付加価値を高めていくことが出来る。
【②ソリューション】
あなたの目の前に、
①自社の商品しか販売できない、
②その分野の多くの会社の商品を一通り取扱い出来るだけでなく他業種の商材についても博識で仕入れることが出来る、
という2人の担当者がいたとしたら、どちらに付加価値を感じるだろうか。
もちろん、多種多様なソリューション(解決策)を熟知し、取り扱いが可能になるのには、実務経験を積む必要がある。
私も1社専属の生命保険の営業から、20社以上の生命保険会社の商品知識をインプットするのには、それなりに苦労した。
さらにそこから損害保険、投資信託、不動産など多くのソリューションを取扱いや紹介が出来るようになるまで、一定の時間は必要であったし、前職の時に想像していたら気絶するくらいの幅の広さかもしれない。それでも「習うより慣れろ」とはよく言ったもので、当社のファイナンシャルプランナーも取引先の担当者の方々の力を借りながら、多種多様なソリューションの理解を深めている。
実務経験を積むという努力をすれば、誰でも着実に付加価値を上げることが出来るのが、このソリューションの幅の広さであると思う。
【③経験】
生命保険営業、特に外資系は行き先(入口だけでも保険の話を聞いて頂ける顧客)は自分で見つける必要がある。私の前職も親族友人知人から営業をしていくスタンスだった。私の場合は特に業績へのコミットメントも強かった割に、私自身友達が多いほうではなかったので、経験少ない段階で、数少ない友人に下手くそで唐突感あるアプローチをして玉砕しまくっていた。
もう17年前の話ではあるが、当時の親族友人知人、高校大学の部活の先輩後輩には今も申し訳ない気持ちを持っている。
本当にすみませんでした・・・。
もちろん、しっかりした話が出来て、生命保険の真の価値を理解頂き、担当者の付加価値を感じて頂ければ、喜んで加入して頂ける顧客もいるし、紹介もして頂ける。
ただし、そのスキルを身に着ける為の場数を踏む前に、行先がなくなる、あるいは経験を積む前に大事な友人や知人との関係性を失ってしまう。というなかなか厳しい現実に直面する営業パーソンも多い。一方でファイナンシャルプランナーは、会社の方針や集客力にも影響されるかもしれないが、お金にまつわる相談ニーズは必ずあるので、収益になるかは別だが(これはこれで厳しさはあるが)、生命保険よりもハードルが低い分、場数は確実に踏むことが出来る。
上記のように「人材育成」「進化成長」という視点から(資格ではなく)職業としてのファイナンシャルプランナー業を生業にしてきたいというモチベーションが生まれ、課題解決型ファイナンシャルプランナーモデル構築した経緯があることを、このタイミングで書かせて頂いた。
もちろん、最終的には顧客や社会にいかに貢献できる会社にするか、という視点が最も重要であるので、そのことはまた別途しっかり記事にしたいと思う。
最後になってしまったが、前職の会社をはじめ、私を育ててくれた生命保険業界も、並みのファイナンシャルプランナーとは比べられないくらい、とてもレベルの高い仕事をして、顧客に社会に貢献している営業パーソンやトレーナーが数多く存在していることも、ここにしっかり付記しておきたい。
また、かなり率直な表現をしてしまったので、不快に思われる生命保険業界の方がいたら、あくまで相対的な話であり、私の完全な主観であるということでご容赦頂きたいと思っている。
様々な業界で頑張っている営業パーソンの再現性のある育成と進化の一助になれば、という思いで書かせて頂いた。