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vol.36「単身高齢者」問題について其の二
今回も、前記事に引き続き、「単身高齢者問題」についてみていくことにしましょう。
前回の記事はこちらから⬇️
単身高齢者問題を考えるときに、他人事ではなく、自身、もしくは自身の両親の問題と捉えて考えていくことが大事だと思います。子供(自分)がいるから、単身高齢者問題なんて関係ないというわけではありません。高齢期をおける家族構成をみてみると、「90歳母、70歳息子」という形態があります。70歳息子が先立つと、母は単身高齢者になります。実際、1年間に亡くなった人のおよそ15人に1人が身寄りのない人や身元がわからない人として行政機関に火葬されているそうです。
単身高齢者の問題は、自身も含め、ご両親などを考えても誰もが他人事ではないというのは先に述べたとおりですが、入院時、もしくは介護制度利用時の「身元保証人」問題として顕在化します。
例えば、高齢期に入院したケースを考えてみましょう。こうした入院のケースでは、一般的に「身元保証人」が求められます。この背景にあるのは、もちろん、金銭的な未払いリスクという話もありますがそれだけではなく、病状の悪化や認知機能の低下という事態になった際、治療方針について、本人の意思を確認することが難しいケースがあり、そのようなときに、身元保証人として家族親族がいらっしゃれば、本人の意思決定を支援したり、本人のこれまでの考え方や意向を伝えたりすることができます。また、病状が悪化して延命治療が必要になった場合でも本人の意思を尊重するという支援が可能になるかもしれません。
入院中においても、日常的なケアについても、身元保証人の助けが必要となることがあるでしょう。細かいことですが、病院内での付き添いとか、差し入れとか、洗濯物の交換といったことは家族がいれば当然サポートしてもらえるようなことですが、1人の場合は誰がやるのかと考えさせられます。
その先にあるのは、介護施設の検討、家賃などの精算です。自身でできればいいですが、なかなか難しいこともあるでしょう。また、万が一になると、遺体の引き取りの手配、死亡届の提出、葬儀、埋葬、相続財産の整理、公共料金の解約、自宅の処分といった死後事務に関しては何も準備してないと誰がやるのでしょう。仮に家族がいたとしても、両親とは遠方というケースも多いと思います(私がそう)。その場合、どのような手段で、連絡を取り合うのでしょうか。
公的介護についても、しっかり理解しておく必要があると思います。介護保険の利用者は、(所得によるが)原則として1割負担で介護サービスを利用できますが、公的介護保険で受けられる給付(サービス)は大きく分けて4つですね。
・居宅サービス
・地域密着型サービス
・施設サービス
・介護予防サービス
です。それぞれの詳細は取り上げませんが、「生命保険文化センター」にまとめられた資料がありますので、こちらをご参照ください。
介護を考えるうえで外せないのが、地域包括ケアシステムです。ただ、ここを書き始めると異常に長くなるので、また別の機会にします。こうした介護保険についても重要なことは、そもそも「家族がいる」ということが前提に作られているということです。介護の分野では、ケアマネジャーさんから、介護の申請、ケアプランの作成、サービス利用の調整などを支援していただけますが、これらは身寄りがあると問題ないのかもしれませんが、単身高齢者では意思決定も含めて非常にハードルが高いものです。
最後になりますが、私たちの業界では、エンディングノートの推奨を行っていらっしゃる方もいます。エンディングノート自体、意義のあるものだと感じますが、そもそもエンディングノートを書くだけでは機能しないということには注意が必要です。少し話題が逸れるかもしれませんが、救急車で運ばれるケースでは、救急隊員の方はできるだけ「お財布と鍵」を一緒に持って行くと言われます。運ばれた人の意識がない場合などには、病院のスタッフが持ち物を確認する時に、お財布は必ずチェックしてもらえるので、例えばですが、エンディングノートをしまっている場所等の情報は紙にメモして、「お財布に入れておく」と良いという話でした。なるほどと思いました。