全く違う邦題をつけられた洋画とそのまま素直に翻訳された洋画
時々気になることがある。それは外国の映画が日本に来る時に、全く違った邦題をつけられることだ。
イギリスに住んでいた頃に公開されたハリウッド映画を観て、後から邦題を知った時に「そんな名前をつけられたの?!」と驚くこともあった。
確かに、英語をそのまま翻訳しただけでは分かりにくかったりするし、何よりそれでは日本で売れないというのが理由だと思うし、気持ちは分かる。
1、アナと雪の女王 Frozen
アナ雪ですっかりおなじみのアナと雪の女王。
原題の『Frozen』に対して、ニュアンスがかなり違う。かっこいい感じは全くなくなって、『ヘンゼルとグレーテル』みたいな子供向けお伽話のような印象を、タイトルから受ける。
かといって『フローズン』だけじゃ分かりにくいということで、より説明したかったことはよく分かるのだが...
ちょっぴり子供っぽいと感じるのは私だけだろうか。
私の好きなキャラクターはオラフなので、それならオラフも入れてあげてほしいと思う。
『アナと雪の女王と雪だるま』そしたらこんなことになってしまう。
実際映画を観ると、もちろん子供が観ても面白いが、それだけではなく、もっとクールでかっこいいイメージもある。大人が観ても十分面白い。むしろ2ではより成熟した内容になっていた。
「何もかも凍ってしまう」ということを強調するために、カタカナで『フローズン』でも良かったのではないのか?と個人的には思ってしまう。
とはいえ、もはやアナ雪はビッグな存在。3が出ても実写が出たとしても、アナ雪でやっていくしかない!
2、ワイルドスピード The Fast & Furious
ワイルドスピードは、高速カーレースやアクション満載の人気映画シリーズ。
実は原題は全く違って『The Fast & Furious』
Fastは速い、Furious(フュリオス)は激怒、という意味で、そのまま日本語に訳すと「?」ってなってしまう。
実は『Fast & Furious』というフレーズは、スコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩『Tam O'Shanter 』に由来している、言い回しなのだ。
この詩の中では、ダンサーたちがエネルギッシュに踊り、熱狂的なお祭りを楽しむ様子が「Fast & Furious」という言葉で表現されていて、速さや激しさ、抑制のなさを表すために使われている。
今ではこの言い回しはフレーズとなり『Fast & Furious』は、非常に速く激しいものや、混沌や興奮を伴うものを指すようになった。つまり、ことわざみたいな感じで現代では使われているのだ。
この言い回しが日本語にはないため、『ワイルドスピード』となった。
翻訳することは不可能な言葉、ロスト・イン・トランスレーションというわけで、その意味を損なわないように工夫された結果、『ワイルドスピード』。
両方の言語から考えて、これは全然、悪くないと思う。
3、きみに読む物語 The Notebook
全く違う邦題をつけられたシリーズは、圧倒的にラブロマンス映画に多い。
Me Before You →『世界一キライなあなたに』
Love, Rosie. →『あと1センチの恋』
etc...
そんなラブロマンス映画の一つ、『きみに読む物語』は私の大好きな映画だ。原題は、『The Notebook』
ノートブックというのはもちろんノートのこと。若い頃激しく恋に落ちた二人が結婚し、妻のアリーが、自分たちの恋物語をノートに綴ってストーリーにしていた。アリーは歳をとって認知症になってしまったので、赤の他人のふりをした夫のノアが、このアリーの書いたノートを読み聞かせする、という映画だ。
日本では『きみに読む物語』
確かに、ロマンチックなラブロマンスの映画が『ノート』だと印象が薄くなるかもしれない。『ノート』と聞いて『デスノート』を思い浮かべる人もいるかもしれないし、私が今書いている『no+e』を想像する人もいるかもしれない。つまり漠然としすぎている。
そこで『きみに読む物語』となったわけだが、全く違う邦題をつけられたけれど、これは物語にマッチしていて良いと思う。
「ノートに書いていた」ということがポイントなので、『きみに読むノートに綴った物語』としてほしいところだが、これだとリズムもバランスも良くない。
やっぱり『きみに読む物語』だな、と思うわけである。
変な邦題をつけられなくて良かった!そのまま翻訳された映画
君の名前で僕を呼んで
Call Me by Your Nameは、美しい男性同士の恋を描いたストーリー。全世界で人気の映画だし、内容も内容だし、全く違う変な邦題をつけられて公開される可能性は十分にあった。
だけどそっくりそのまま、『君の名前で僕を呼んで』と訳されて映画はリリースされた。タイトルだけ見て「どういうこと?」と思うけれど、英語の原題もそうなのだからそれでOK。
無駄な説明やサブタイトルなどつけられなくて本当に良かった。
ブリジットジョーンズの日記
イギリスを代表するロマンスコメディ映画(英語でrom-com ロムコム映画)ブリジットジョーンズの日記。これはイギリスのベストセラーが原作で、タイトルも変えずにそのまま翻訳された。
ちょっとドタバタのコメディ映画なので、ふざけた名前がつけられる可能性があったけれど、この原題のままで良かった。
ブリジットジョーンズの失敗だらけの日常に心から共感し、まるで自分も一緒に日記を書いているような気分になる。しょうもない日記を書いているところ、妄想が多いところなど、リアルで大好きだ。
元気が出ない時に何度も観たくなる名作。
マディソン郡の橋
不倫の話、というイメージを持っている人も多いと思うが、それだけでなく、これはほんとうに美しい映画。アメリカの田舎の景色も、人を心から想う気持ちも。
何より、マディソン郡という場所、そこにある屋根のある特別な橋。
それがこの物語の軸になっているのだ。だからこのタイトルは、絶対にこれでなければいけない。
『マディソン郡の情事』みたいな変な名前がつけられなくて本当に良かった。
タイトルの大切さ
映画のタイトルは、とても重要だ。そのタイトルから受ける第一印象、想像する自分の気持ち、繰り返し観たいと思えるような内容に合った言葉の響き。
「あ、この映画観たい」と直感で感じることも、タイトルの魅力にかかっている。
映画を観終わって余韻に浸っている時、改めてタイトルの意味を考え、はっとすることもある。
良い映画は良いタイトルであることが多いし、だからこそ何度も観たいと思うのかもしれない。