『全部なくしても技術は取られない。私にはそれがある。』
私は、必要ないか…と思っても、とりあえず物を置いておいて溜めてしまう。
仕事の書類や、気になった事の資料など。
“もし、必要になったら”という不安が強い。
捨てるのが怖い。
そんな思いを見つめた時に受け取った、前世の自分からのメッセージ…。
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場所はイタリア。
名前はレオ。
馬車を作る職人である。
小さい頃から父の背中を見て育ち、父と同じ馬車職人になる。
19歳で大恋愛の末結婚をする。
可愛くて、可愛くて、大好きな人だった。
すぐに子どもができ、泣いて喜んだ。
そして…息子が産まれたが、妻の産後の症状が悪く…しばらくして亡くなってしまう。
それから…。
男手ひとつで息子を育てた。
息子が10歳になった時、再婚をした。
飲み屋で知り合った女性だった。
再婚は周囲のすすめでもあった。
しかし、一ヶ月もたたない間に…その再婚相手は、金や財産すべて盗んで姿を消してしまった。
裏切られた事、そして全て奪われた事、自分の不甲斐なさにショックを受け、毎日酒を浴びるほど飲み、死にたい思いを紛らわせていた。
仕事もしなくなった。
しばらくしたある日、
何か音がすると思い、重い体を引きずりながら起きると…息子が一人で何かをしていた。
馬車の部品を作っていた。
昔…愛した妻にそっくりな顔で笑いながら…、
「僕もやるから、頑張ろうよ。」
と、言った。
優しい、自慢の息子がそう言った。
泣いた。
それからもう一度仕事を始めた。
今では息子も傍にいる。
かつて父が私にしてくれたように、私が息子に仕事を教える。
その後息子は結婚し、孫にも恵まれ、
私は、馬車の職人として名誉ある賞も王家から頂いた。
馬車を作らせるなら、レオの店へ。
そう。
『金を取られても、何もなくなっても、全部なくしても、技術は取られない。私にはそれがある。』
それは、レオからの言葉。
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レオの人生を見つめてから、しばらくして…
書類や資料をとりあえずで溜めておかなくなった。
“とりあえず置いておく”から、“必要なものだけ置いておく”へ。
知識や技術は取られない。
“不安”から
“大丈夫”へ
そして、今なら私も馬車を作れそうな気がする…(笑)
レオの笑顔が、印象的であった。