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『自ら学ぼうとしない者達よ。 永遠に“そこ”にいればいい。』


前世のお話です。


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日本。

小さいながらも一つの国として機能していた。


国を治める統治者と、“神”の名の元に政に関わる者。

そして、ほとんどの者が農業を営み国を支えていた。


俺は幼い頃から“神”をまつり、まつり事からの神の“真意(こえ)”にそって行うべき“政”を統治者に伝える仕事をしていた。

手法は様々であった。

季節、時間、場所…。

その時によって神からの“真意(こえ)”をきく方法は異なる。


内容は、政の日時、吉凶、方角、天気、人の動き、それこそ種まきの時期まで様々だ。


俺のような仕事をする者は何人かいた。

幼い頃から徹底的に“神”の“真意(こえ)”をきく手法を叩き込まれ、従事する。

そして。


何一つ違えずにまつり事を行い、“神”の“真意”をきき、沿う。


それでも…


それでも、数年に一度…


厄災が起こる。

厄災とは…、神の怒り。

…疫病、水害、日照り、火災…様々である。

疫災が起きたとき…


そう…


本当はその時の為に俺たちがいる。

いわゆる、命をもって“神”の怒りを沈める。


神を怒らせたのは我々だと。



最後は『贄』として捧げられる。

仲間を送る儀式を何度もさせられた。

そして。


俺も19歳の時…、俺自身の厄義の際厄災が起こった。

水害である。


その瞬間より“穢れ”と呼ばれ、“穢れ”をはらう儀式は始まる。

身を浄めると称した扱いを受け、

あらゆる儀式を経たをした後、

最期は

豪雨の中、縛られ歩かされ、


荒れ狂う水に沈められる。



道中では待ち構えた村民に石を投げられる。


今までその儀式を見てきたし、いずれ我が身と思っていた。

しかし、いざ自身となった時…



不思議と恐怖よりも悲しみよりも…怒りがわいていた。


そこまで俺を否定できるのか?


すべてを捧げて、尽くしてきた。

この石を投げる者達は何者だ?

この身を縛り上げ連れていくのは何者だ?

そして…俺は…一体何者だ…?

誰が俺を否定できる?

俺は何も違えてはいない。

詠み違えたわけでもない。


すべて、“真意”にそって行った




神とは何だ…?

…俺たちが信じている神とは…何だ…?

もし…この状況を作っているのが神だとしたら…


この命を神が欲している事になる…。





…そうか。


お前達は神の残酷さを知らない。


豪雨の中歩き、体は冷たく、縛られた体は悲鳴をあげていた。
そして。目にうつる景色に絶望した。

何も違えてはいないのに。

『おかしい…』

“穢れ”と呼ばれ、


俺はこうして自然に還らされる。

足にも縄を巻かれ、その先に石もくくりつけられる。


『おかしい…』


『この世界は…おかしい。』



気付くのが遅かった……。




そして…。

生涯を閉じた。




自ら学ぼうとしない者達よ。

永遠に“そこ”にいればいい。




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