ストレス(嫌な気持ち)を改善する方法
0、はじめに
前回の投稿で、①出来事→②評価→③反応のうち、②の評価を捉え直すことが③の評価(嫌な気持ち)を変える方法と書きましたが、皆様の気持ちを想像すると、「評価を捉え直したくても難しい」という声もあると思っています。今回は、②の評価を捉え直すことができないときに、どうしたら良いか?をまとめていきます。
1、ストレス原因を解決する
評価を捉え直すことができないとき、根本的な解決方法は、「ストレス原因」を解決してしまうことです。端的に言うと、嫌な出来事がなくなれば、嫌な評価をする必要がなくなります。
例えば、営業成績が悪くて怒られているなら、営業成績を上げる努力・工夫・相談をして営業成績を上げてしまうこと、仕事量が多すぎるなら、適正な労働量にしてもらえるよう上司に掛け合って仕事を減らしてもらうことなどが該当します。
「それが出来たら苦労しないよ」「理想を言うな」という声も聞こえてきますが、本来解決できるストレス原因を解決しないで放置しているのであれば、ストレス原因の解決に取り組むことが根源的な解決になりますので、お勧めしたい方法の一つです。
2、視点を変えて再評価する
これまで、①出来事→②評価→③反応というステップをご紹介してきましたが、実は続きがあります。それは、①出来事→②評価→③反応→④視点を変えて再評価→⑤反応です。具体的に書いていきましょう
<例1>
①出来事:上司の言う通り仕事を進めたのに、怒られた。
②評価 :理不尽だ
③反応 :腹が立つ
④視点を変えて再評価:上司も人間だ、上司の立場に立てば、言ったことを忘れる/間違えることもあるだろう
⑤反応 :そこまで腹を立てても仕方がない
<例2>
①出来事:スマホを落としたら画面が割れた
②評価 :見えづらい、修理が大変、お金がかかる
③反応 :落ち込む
④視点を変えて再評価:ちょうど良かったこれをきっかけに、携帯の契約を見直そう
⑤反応 :どれくらい節約できるか楽しみ
①②は、密接に結びついていたり(例えば、むしゃくしゃするという理由でジャイアンに殴られるのび太くんは①殴られる→②「ひどい人だ」とどうしてもなってしまいます)、また②の評価には癖があるので(いつも悲観的に物事を考えてしまうなど)、①→②→③の流れは比較的コントロールが難しいです。では、発生してしまう③の嫌な気持ちはどうしようもないかと言うとそうではありません。
では、どうすれば良いか?ですが④「同じ出来事でも、視点を変えてみることで評価を変える(再評価)」ということができれば、嫌な気持ちは発生してしまうものの、見直すことができます。
<例1>はリフレーミングと呼ばれ、同じ出来事でも違う角度で見直すことで、違った捉え方をすることができるという方法です。
お勧めなのは<例2>のように、「ちょうど良かったこれをきっかけに」という言葉を自分に問いかけることです(リンクアンドモチベーションの小笹さんから教わりました)。皆様の人生で、嫌だなと思った出来事が、のちのち良いことに繋がっていたことってありませんか?嫌な出来事も、良い出来事のきっかけにしてしまえると思えば、嫌な気持ちを緩和することができます。
3、嫌な気持ちの正体を知る
上記のような方法でも難しい時は、嫌な気持ちの正体を知ることが大切です。案外ストレスを抱えている時は、何に対して嫌な気持ちになっているのかがはっきりせず、「なんとなく不安」「なんか腹立つ」「なんか憂鬱」など漠然とした嫌な気持ちと向き合っていることも少なくないですし、正体が分かれば解決方法が見えてくることもあります。
正体①、期待に応えてもらえない(なぜやらないの)
怒りの原因にあるのが、他者や自分に対する期待です。「○○して欲しかったのに、してもらえなかった」「ルールを守るべきなのに、守ってもらえなかった」「なぜこんな評価なのか」「自分はもっとできるはずなのに、出来なかった」など他者や自分の期待に応えられていないことが嫌な気持ち(怒り)の原因と分かれば、期待しすぎないという選択が出来ます。自分も他人も思う通りになることなんてあまりないですよね。"期待しない""適度に期待する"くらいの捉え方をしてみるのも良いかもしれません。
正体②、できない、間に合わない、迷惑がかかる(どうしよう)
頼まれたことができない、完成しない。あるいは、できるのに間に合わないとなると不安な気持ちが発生します。嫌な気持ち、特に不安の原因が"できない、間に合わない、迷惑をかけてしまう"と分かると、関係者に早め早めにそれを伝えてしまえばいいんです。極端に言うと、これで不安は解決します。仮にできないという報告に対して怒られたとしても、到達可能なハードルが再度設定されれば、「できないかもしれない、どうしよう」という不安は解消されていますし、先にお詫びすることもできます。それでももし、出来もしないハードルを継続的に課せられたとしても、相手はできない可能性を知っているので幾分気は楽になります。そして、出来もしないハードルを課すことは、ハラスメントの"過大な要求"に該当しますので、社内からのハードルであれば、ハラスメント相談窓口に相談するという選択も忘れてはなりません。
また、明石家さんまさんが「不安になる人は自意識過剰や」とおっしゃっておられたのも印象的です。自分が導く結果は、自分の実力そのものと受け止められると、「出来る/出来ない」ではなく、「これが自分の実力だ。これ以上でもこれ以下でもない」と自分を受け止めることもできます。
正体③、問題を何回も考えてしまう(くよくよ)
上記と少しテーマが異なりますが、自分にとって嫌な出来事や嫌な気持ちを繰り返し考えてしまっていることで、気が晴れないということもあります。例えば、”迷惑かけそう”ではなく、”迷惑をかけてしまった”となると、「あの時にああしておけば良かった」、「あんなことしなきゃ」と何度も繰り返し後悔してしまうことがあります。その際は、「何回考えても状況が変わる訳ではない、謝るなどまずできることをやろう」と考えることが大切です。想像の中で何回も考えるのではなく、具体的に行動することで再評価(そんなに怒ってなかった、相手は気にしてなかった等)ができるかもしれません。
4、マインドワンダリングをやめる
最後に、マインドワンダリングという言葉をご紹介します。マインドワンダリングとは、端的に言うと、「他人」「環境」「過去」など自分には直接コントールできないことばかりを考えて嫌な気持ちとずっと向き合う行為です。前述の正体③でも書きましたが、嫌な気持ちを抱えている時は、その原因を何度も何度も考えてしまっていることが多いです。
では、どうすればマインドワンダリングがやめられるのか?です。
①運動する
え?と思われる方もおられると思いますが、運動をするとマインドワンダリングを止めることが期待できます。例えば運動に向けた準備の時間もそうです。ジョギングに行くときに、服を選んだり靴を履いたり、そんな風に時間を使うと嫌な気持ちを考える時間が減ります。また私はサッカーが趣味ですが、ドリブルをしている時に上司に怒られた過去を思い出す余裕はありません。こうして、運動を通じて嫌な出来事を記憶の箱にいったんしまうことができれば、ストレスと頭の中で距離をとることができます。
②マインドワンダリングは自己虐待と思う
マインドワンダリングはすればするほど、自分の心は痛みます。例えば、他人に迷惑をかけてしまった事実を思い出せば思い出すほど、憂鬱になったりつらい気持ちになります。これをフィジカルで例えたら、傷口を更に叩いたり、塩を塗るのと同様の行為です。が、そんなことしませんよね。同じように自分の心も身体の傷と同じように労わることが大切ですし、自分のことを大切な親友だと思えば、「気にするなよ」と声をかけると思います。このようにマインドワンダリングをしてしまっていることに気が付いたら、「自分で自分を痛みつけているぞ」と捉えて、ストップさせることも必要です。
③気晴らし行動をとる
前述の運動が気晴らし行動の1つですが、自分で自分を痛みつけていると気が付けば、自分の好きな行動、好きな時間を優先的にとるなど、マインドワンダリングから離れられるような、気晴らしをすることが大切です。また、それをリスト化していたり、生活リズムに加えているとより効果的です。ちなみに私の気晴らしリストですが、
・ヴィッセル神戸の試合を見に行く
・ジョギングを3kmする
・サイクリングを10kmする
・クロールで1km泳ぐ
・映画館で映画鑑賞する
・銭湯に行って、水風呂と熱いお湯の繰り返し
・辛子明太子を食べる
・リビングルームの掃除をする
・パソコンのフォルダ整理をする
上記のようなものをパソコンのデスクトップに気晴らしリストとして保存しています。やはり、運動は即効性がありますし、映画にのめり込めば、少なくても2時間マインドワンダリングから離れることができます。
このようにマインドワンダリングから離れやすい自分の得意技を知っていると、嫌な出来事と向き合う時間を減らすことができます。
5、あとがき
人間が多種多様であるように、ストレスの改善も発生も多種多様です。これをすれば全てが上手くいくということはありませんし、ストレスの正体も網羅的に捉えることは難しいと思います。しかしながら、「なんだか憂鬱」というストレスの正体が分かっていない状態から少しでも脱することで、嫌な気持ちの改善ポイントが見えてきます。
何にストレスを感じているのか、ストレス原因の解決に取り組むのか、視点を変えてストレス原因の再評価をするのか、マインドワンダリングをストップさせるのか、いくつかの選択肢を持っていることが大切です。
最後に、マインドワンダリングをストップさせても、また元に戻るという不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。スポーツをして忘れていた上司の顔を、ふとした時に思い出せば嫌な気持ちが再発することもあると思います。しかし、人間はいったん記憶の箱にしまった記憶を新たに引っ張り出し、もう一度記憶にしまう時にタグを付け直す(再評価する)ことができるそうです。「めちゃくちゃ嫌だ」と思ったけど、運動をしたら「なんであんなに凹んでたんだろう」と思えたということもあると思います。そう思うといったん嫌な気持ちが減るかは分からないけど、記憶の箱にしまうことを目的にして、改めて箱から出したときにどう思うのか?に是非トライしてもらいたいですし、1度で駄目なら2度、3度タグを付け直しても大丈夫です。是非、マインドワンダリングをストップさせて、再評価・タグを付け直してあげてください。