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なぜ施設より里親の方が良いのでしょうか? ~その3~

2回に渡り里親委託の良い点を書いてきましたが、今回は施設養護について考えてみます。このnoteでは、施設というと児童養護施設や乳児院について書いていますが、それ以外の施設もあります。

 社会的養護の様々な施設と特長は?

素晴らしい環境の少人数の児童養護施設も!

 さて、施設というと、皆さんはどんな施設を想像するでしょうか?
 外国映画にある孤児院で長い机に子どもたちが並んで座っているような光景でしょうか。
 今は自治体だけでなく、様々な社会福祉法人や宗教法人なども施設を運営しています。その規模や雰囲気なども様々です。

  私もいくつかの施設を訪問したことがあるのですが、中でも素敵だったのは東京郊外にある児童養護施設です。とても大きなグランドを持ち、広い敷地に5-6棟の小舎と1棟の大舎があるところでした。宗教団体が運営しているので中には教会もあり、豊かな緑、大きな木々に守られるように建物があり、空も広く、都会のアパートなどと比較にならない、自然豊かな素晴らしい環境でした。

 著名な建築家が設計した小舎は広い2階建ての戸建て住宅で、広いリビングダイニングとキッチン、風呂やトイレと子どもたちの居室が2人部屋と高校生には個室が用意されているということでした。個室までは拝見できませんでしたが、公開されている写真を見ると、お部屋も落ち着ける空間のようでした。フローリングの床に木製の家具、豪華ではありませんが家庭的な雰囲気の施設で、こんな素敵な施設もあるのね!と驚きました。他人と暮らす訳ですから自分のスペースがしっかりあるというのは有難いことです。この施設にいたある高校生は、明るくなって勉強も熱心にして、スポンジのように吸収して大学進学も果たしまたということです。家では落ち着いて勉強も出来なかったということですね。
 大舎、小舎の説明はまた次回にいたします。

 また別の児童養護施設は本園の近所の住宅街の中にある普通の1軒家でした。戸建ての家を借りて施設として運営していて、5歳ぐらいの幼児から高校生まで男女6人の子どもが暮らしています。この施設では食事の支度も掃除も洗濯も、家庭で行うのと同じように職員が行っているので、子どもたちは見ることも手伝うことも出来ます。将来、自立する際にもこうした経験があることで、困らないかなとも思いました。これはグループホームという児童養護施設になります。

  里親研修や見学で私が伺ったのは良い施設ばかりでした。職員も熱心で環境も良いところが多かったですが、すべての施設が良い施設と言えるわけではないようで、施設内でいじめがあったり、職員から虐待されたりという話も聞こえてきます。ニュースになった事案もありますね。

 

社会的養護の様々な施設

 児童養護施設と乳児院

 さて社会的養護の子どもたちが生活する施設にはどんなところがあるでしょうか?

 基本的には2歳までの乳児のための「乳児院」、基本的には2歳以上で18歳まで、必要であれば20歳までの児童が暮らす「児童養護施設」があり、このnoteで施設と呼ぶのは主にこの2つの施設になります。兄弟姉妹がいる場合などは年齢に関わらずできるだけ同じ施設で生活できるように配慮することも多いようです。

  乳児院では、看護師、保育士、医師(嘱託医)、家庭支援専門相談員、里親支援専門相談員、栄養士、調理師、心理職などの職員が子どもたちの成長を見守っています。

  また、児童養護施設には、児童指導員、看護師、調理員、栄養士、心理療法担当職員、職業指導員、里親支援専門相談員などの職員がいて、子どもたちの生活を支えています。

 すべての施設にすべての職種の職員が配置されているわけではないですが、心理職や職業指導員など専門的な知識を持つ職員の方がいるのはとても心強いことです。

 そのほか、不良行為を繰り返す児童は昔の「教護院」、今は「児童自立支援施設」で生活します。また精神的な疾患などの場合は昔の「情緒障害児短期治療施設」、今は名称が変わり「児童心理治療施設」があります。
 

児童自立支援施設

 児童自立支援施設は多くが国立や都道府県立の施設で、民間の施設はごく僅かです。全国に58施設があります。その多くが小舎で最近は交替制も増えてきましたが従来は夫婦制が多く、家庭的な環境の中で寝食をともにしながら生活しています。主に施設内の学校で勉強しています。

  入所児童には発達障害や愛着障害、軽度の知的障害なども多く、ほかの施設で問題を起こしたり暴力行為や傷害、売春や不純異性交遊、家出などの不良行為で児童相談所から措置されることが多いようです。

 ただ不良行為といっても自らの意思で行っていた場合もあれば、親に虐待されていたことや親や悪い仲間などに強要されて万引きをしたり売春をさせられていたなどの場合もあります。施設長の方とお話をすると、こうした子どもたちは心に深い傷を負っていてなかなか心を開いてくれない、本当に気の毒で、寄り添ってゆっくりゆっくり回復するのを待つと教えてくださいました。そして特に施設をでてからも実家には戻ることが難しいので、自立できるように支援しているとのことでした。 

 

児童心理治療施設

 発達障害や軽度の知的障害、虐待を受けてトラウマを抱えている児童などで児童養護施設や里親のところでは難しい児童が入所し、専門家のケアを受けることができます。

 ただ最近は虐待された児童が多いので、また発達障害も多くなっているので、児童養護施設や里親に委託されるケースも少なくありません。

「社会的養育の推進に向けて」令和6年4月 こども家庭庁支援局家庭福祉課資料より

 母子生活支援施設

  かつて母子寮と呼ばれていた母と子が生活する施設です。生活困窮の母子が対象で、18歳以下の児童がいることが入所の条件です。どんな母子が暮らしているのかというと、DV被害者(ドメスティックバイオレンス、入所理由が夫等の暴力)が入所者の54%を占め、虐待を受けた児童が入所児童の41%を占めています。また、精神障害や知的障害のある母や、発達障害など障害のある子どもも増加しています。

  また、これまでの入所条件とは別に、出産後すぐに嬰児殺人や事故で死亡する事例を防止するために、「特定妊婦」として出産前から支援できるようになりました。これまでは「思いがけない妊娠」をした女性が児童相談所に相談すると「産んでからにして」と相手にされなかったそうですが、今は望まぬ妊娠をした女性たちも母子生活支援施設で出産前後に生活することができるようになりました。出産後どういう選択肢があるのか、自立支援や支援施設の情報、さらに特別養子縁組制度についてなど相談ができるので安心ですし、さらに連絡調整もしてくれるようになりました。

 子ども家庭庁 妊産婦等生活援助事業の実施について 2024年3月29日


 自立援助ホーム

 児童養護施設は、原則として高校(定時制高校を含む)に通学していない場合は施設から出なければならないのですが、まだ自立する力のない20歳未満の児童が自立援助ホームに入居します。働きながら共同生活を営み、ホームでは職員に様々な相談することもでき、日常生活上の援助、生活指導、就業の支援等を受けられます。欠席が多く中退した場合なども、施設から自立援助ホームに移ることになりますが、本人が希望した場合です。
 入所児童は利用料を支払い、住民税も支払い、一人一人が世帯主になります。
 運営はNPO法人や任意団体が行っているケースが多く、国からの措置費も潤沢とは言えずで、社会福祉法人や宗教法人が運営している児童養護施設に比べるとかなり厳しいということです。
 

以上が社会的養護関係の児童福祉施設になります。

 様々な逆境体験をして傷ついた子どもたちなので、心理的ケアや支援体制があり、落ち着いて生活できるところが必要ですね。

 長くなってしまったので、施設の入所人数での区分けについては次回にいたします。お読みいただき、ありがとうございました。

 

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