【応援小説】預言:占い師は預言を聞くのか、伝えるのか

佐藤は平凡なサラリーマンとしての日々を送っていた。毎日同じ時間に起き、同じ電車に乗り、同じオフィスで働く彼には、秘密の趣味があった。SNSで無料占いを行い、多くの人々に助言をしていたのだ。この小さな活動は、彼にとって大きな喜びであり、他人を幸せにする手段でもあった。

彼には、毎晩欠かさず行う習慣があった。それは、近くの公園にあるお地蔵様に手を合わせること。心の中で、こう祈る。

「私に出会った人が幸せになりますように。私と出会う人が幸せになりますように。そして、出世してもっと多くの人を幸せにできますように。」

ある晩、いつも通りお地蔵様の前に立って祈っていると、冷たい風が吹き抜けた。その瞬間、佐藤は不意に背筋がぞくりとした。目の前のお地蔵様が、微かに光を放っているように見えたのだ。彼は目をこすり、もう一度見つめた。

「佐藤よ、私の声を聞け。」

その声は、彼の心の奥に直接響いてきた。驚きと恐れが混ざり合い、佐藤は言葉を失った。

「君の願いには力がある。しかし、注意せよ。この力を使うには試練が伴う。」

お地蔵様の言葉に、彼は身震いした。だが、好奇心が勝り、彼は尋ねた。

「試練とは、何ですか?」

「自らの意志で選び取った道の果てに、真の幸せが待っている。しかし、選択を誤れば、思わぬ結末を迎えることになる。」

その言葉を胸に刻み、佐藤は目を閉じた。翌日から、彼は占いを行う際に、以前よりも強い直感を感じるようになった。占いの結果が的中することが増え、フォロワーも増え続けた。彼は人々に喜ばれ、ますますその活動にのめり込んでいった。

だが、ある晩、一人のフォロワーが彼に相談してきた。その内容は、彼女の未来に迫る危険についてだった。

「佐藤さん、私の未来に何か悪いことが起こる気がするんです。占ってもらえませんか?」

佐藤は緊張した。お地蔵様の言葉が頭をよぎる。彼は少しの間考えた後、彼女の未来を占うことにした。

結果は、彼女の周囲に暗雲が立ち込めていることを示唆していた。心のどこかで、彼はこの占いの結果をどう扱うべきか悩んだ。彼女を助けることができるのか?

「あなたには、注意が必要です。誰かを信じすぎると危険です。」

彼女は佐藤の言葉に安堵の表情を浮かべたが、佐藤は心の中で不安を抱えていた。彼は次第に、その占いがもたらす運命に取り込まれていった。

数日後、彼女が友人に裏切られ、大きなトラブルに巻き込まれたとの連絡が入った。佐藤は衝撃を受け、彼女を助けるために動くことを決意した。彼の中に宿った力を信じ、彼は再びお地蔵様のもとへ向かった。

「お地蔵様、どうか助けてください。私の力を正しく使いたい。」

お地蔵様の声が再び響く。

「選択は君の手に委ねられている。君が選んだ道が真の幸せをもたらすだろう。」

その言葉を胸に、佐藤は彼女を助けるために奔走した。真実を掴むための調査を行い、彼女の信頼を裏切った友人の行動を暴くことに成功した。彼女は無事を取り戻し、感謝の言葉を彼に送った。

その後、佐藤はお地蔵様の予言を信じ、自らの力を使って他者を助け続ける決意を固めた。彼はもはや、単なる平凡なサラリーマンではなく、多くの人々を幸せへと導く存在となった。

時が経つにつれ、彼の運命はさらなる高みに達し、かつて想像もしなかった未来へと繋がっていった。お地蔵様の声は、今でも彼の心の中で響いている。

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