R6予備試験 憲法 再現答案
第1 設問1
1 祭事挙行費を町内会の予算から支出することは、政教分離原則(憲法20条1項後段・89条前段)に反し違憲でないか。
2(1)まず前提として、憲法は国または公共団体の行なった行為にのみ適用されるところ、A町内会が公共団体といえるか問題となる。
(2)本件で、A町内会は地方自治法260条の2第1項の許可を受けた団体であるところ、同条6項において「認可を受けた地縁による団体を、公共機関・・・と解釈してはならない」とあり、公共機関に当たらないとも思える。しかし、これは許可を受けた団体を、許可を受けたという理由のみをもって直ちに公共機関と解釈してはならないと定めるものであって、認可を受けた団体が実質的に公共機関のような役割を果たしている場合にも公共機関と解釈してはならないとするものではない。そして、A町内会は加入率が100%であったり、実質的には公共団体といえるので、A町内会は公共団体に当たる。
3 では改めて、政教分離原則に反しないか。
(1)まず、「宗教上の組織」(89条前段)「宗教団体」(20条1項後段)とはすべての宗教を指すのではなく、特定の宗教を促進・布教しようとする目的を持つ団体を指すと解するところ、C神社は年百年にもわたって集落の氏神を祀ってきた神社であり、性質上A集落以外の人たちに広めようとしていない。また、C神社は宗教法人ではなく、氏子名簿もないのであり、「宗教上に組織」「宗教団体」に当たらないというべきである。
(2)したがって、政教分離原則に反さず合憲であると考える。
4 次に、仮に「宗教上の組織」に当たるとしても、政教分離原則に反しないか。
(1)この点について、政教分離原則は、それによって直接信教の自由を保障しようとするものではなく、国と宗教の関わり合いを排除することによって間接的に信教の自由を保障しようとするものであると考える。そうであるとすれば、憲法は完全な分離を要求していると解するべきである。しかし、現実的には完全な分離は困難である。そこで、宗教との関わり合いがあることを前提として、その関わり合いが社会通念上相当といえなくなった場合に政教分離違反となると解する。そして、①行為の目的が宗教的意義を持ち、②その効果が特定の宗教を促進させ、又は威圧する場合に社会通念上相当といえなくなったと考える(愛媛玉串事件判例)。
(2)まず、A町内会はC神社に対し祭事挙行費を支出している。またA町内会の集会所入口には「A町内会集会場」「C神社」と並列して表示されている。さらに、C神社のお祭りはA町内会の役員が持ち回りでおこなっているのであるから、C神社との関わり合いがあるといえる。
(3)ア 次に、①についてみるに、祭りはC神社の神様を祝うものであるから、目的が宗教的意義を持っているといえる。
イ しかし、C神社には神職が常駐しておらず、お祭りも集会所の管理と合わせてA町内会の役員が行っており、宗教色が薄い。また、年2回行われるC神社の祭事では、たしかに神道方式による祭事が行われるが、一方集落に伝えられてきた文化である伝統舞踊が披露されており、集落の伝統としての役割が大きいといえる。さらに、確かにGのように祭事を宗教的活動と考えている者もいるが、住民のほとんどはC神社の祭事をA集落の重要な年中行事と認識しており、一般人の認識的には宗教だと考えられていない。そうだとすれば、②効果が特定の宗教を促進させ、又は威圧するものといない。
5 よって、政教分離原則に反さず合憲である。
第2 設問2
1 祭事挙行費を予算から支出し得るとしても、町内会費8000円を一律に徴収することはできるか。
2 この点ついて、任意団体であるから、公序良俗に反しない限り一律に徴収することは可能であると考える。
3 本件についてみるに、A町内会は日常生活に不可欠であり、A集落に住む以上はA町内会に参加せざる得ないから、たしかにD教の熱心な信者であるXのような者は負担となる。しかし、Eが主張するように任意団体であり、Xの主張通りにわざわざ規則を変える必要があるとまでは到底いえない。また、Hが主張ふるように一括して一律に徴収するほうが楽なのであるから、公序良俗に反するともいえない。
4 よって、一律に徴収することができる。
以上