足関節痛の理学療法〜足部が苦手でもできる評価とアプローチ〜
はじめに
このnoteは、誰にでもお役に立てるわけではありません。
ですが、以下に一つでも当てはまる理学療法士の方は、読んでみてください。
足部疾患の理学療法に苦手意識を持たれている方は、なんと73%(263名中192名)います!(forPTアンケートより)
私も少し前までそのうちの一人でした。。。
足部疾患に対して、下腿三頭筋のストレッチ、後脛骨筋・腓骨筋の筋力トレーニング、タオルギャザー、ショートフットエクササイズ・・・
誰に対しても決まりきった運動療法を提案して、これで良いものかと悩んでいました。
そんな私の臨床を変えたのは、テーピングとインソールの学びでした。
足部への苦手意識が強かった私が、足部を評価することが楽しいに変わりました。
足部周辺の痛みを改善するための評価やアプローチは、足部のスペシャリストでなくてもできることがあることがわかりました。
このnoteでは、足部に苦手意識があるセラピストにもできる評価とアプローチをご紹介していきます。
臨床力を高めるいちきっかけとなれば幸いです。
by Rui
自己紹介
はじめまして、forPTのRui(ルイ)です。理学療法士免許を取得し、現在は整形外科クリニックに勤務しています。
forPTとは、理学療法士の臨床と発信を支援するために2019年に発足されたコミュニティです。
instagramのフォロワー数は、1万人を越え、多くの方に共有していただけるコミュニティとなりました。
臨床に役立つ知識や技術を発信し続け、現在では理学療法士だけでなく、セラピスト全般、理学療法学生、柔道整復師、スポーツトレーナーなど幅広い職種の方にもシェアいただいています。
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それでは以下より、『足関節痛の理学療法〜足部が苦手でもできる評価とアプローチ〜』になります。
足部の機能解剖学
足部の骨と部位
足部は、7つの足根骨(踵骨、距骨、楔状骨、立方骨、舟状骨)と5本の中足骨と14個の趾骨の計26個の骨で構成されます(図1)。
図1 足部の骨名称(右側)
足部は、後足部(踵骨、距骨)、中足部(舟状骨、立方骨、楔状骨)、前足部(中足部、基節骨、中節骨、末節骨)の3つに分けられます(図2)。
図2 足部の3部位(右側)
足部の機能的ユニット
足部は、機能的側面から内側ユニットと外側ユニット¹⁾に分けられます(図3)。
図3 足部の内側ユニットと外側ユニット(右側)
内側ユニットは、距骨、舟状骨、楔状骨、第1〜3中足骨、趾骨で構成され、内側縦アーチを形成します。
外側ユニットは、踵骨、立方骨、第4〜5中足骨、趾骨で構成され、外側縦アーチを形成します。
内側ユニットが、外側ユニットの上に乗るような構造となっています。
足部の関節
足部には、以下の関節が存在します(図4)。
図4 足部の関節
(一部関節省略記載)
横足根関節(ショパール関節)は、距舟関節および踵立方関節で構成されます。
足根中足関節(リスフラン関節)は、第1〜3中足骨底と楔状骨、第4,5中足骨底と立方骨の間で形成される関節です。第4,5中足骨底と立方骨は靭帯で連結していますが、関節構造はなしていません²⁾。
足部のアーチ構造
足部アーチには、内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つがあります。
【内側縦アーチ】
図5 内側縦アーチ(右側内側)
内側縦アーチは、踵骨、距骨、舟状骨、楔状骨、第1中足骨で構成されます(図5)。内側縦アーチが低い場合は扁平足、高い場合は凹足と呼ばれます。地面に接地しているのは第1中足骨頭の底部と踵骨になります³⁾。
舟状骨は地面から15〜18mm離れています⁴⁾(図6)。また、荷重負荷に伴い踵骨の載距突起は約4mm下方に下がるとされています。
図6 舟状骨と地面からの高さ(右側内側)
内側縦アーチの安定化には、前脛骨筋と後脛骨筋の同時収縮が重要な役割を持ちます(図7)。前脛骨筋と後脛骨筋の同時収縮により内側ユニットに圧縮力が生じ、関節の適合性が高まることで、内側縦アーチの安定化を図ることができます¹⁾。
図7 内側縦アーチの安定化に重要な前・後脛骨筋と舟状骨
【外側縦アーチ】
図8 外側縦アーチ(右側外側)
外側縦アーチは、踵骨、立方骨、中足骨から構成されます(図8)。外見上は、皮膚などの軟部組織により接地しているように見えますが、実際に地面に接しているのは、第5中足骨頭の底部と踵骨になります³⁾。
立方骨は地面より3〜5mm上に位置⁴⁾しているため、立方骨位置では皮膚などの軟部組織の厚みによって地面に接地しています(図9)。荷重に伴い立方骨は4mm下方へ下がる³⁾とされています。
図9 立方骨と地面からの高さ(左側外側)
外側縦アーチの安定化には、短腓骨筋と長腓骨筋の働きが重要です。短腓骨筋は、踵骨、立方骨、第5中足骨を圧縮し、長腓骨筋は立方骨を下方から持ちあげるように支えてアライメントを保持する役割を持ちます¹⁾(図10)。
図10 外側縦アーチの安定化に重要な短・長腓骨筋と立方骨
【横アーチ³⁾】
図11 横アーチ
横アーチは、中足骨頭部で構成される前方アーチ、楔状骨および立方骨で構成される中間アーチ、舟状骨および立方骨で構成される後方アーチに分けられます(図11、12)。
図12 横アーチ(前方・中間・後方アーチ)
3)より画像引用
前方アーチの機能は、母趾内転筋横頭の比較的弱い働きで維持されています。
中間アーチの頂点は中間楔状骨になります。長腓骨筋はその走行から中間アーチの緊張帯として働いていると考えられています。
後方アーチは、後脛骨筋がその走行から後方アーチの緊張帯として働いていると考えられています。
ウィンドラス機構とトラス機構
【ウィンドラス機構】
図13 ウィンドラス機構
ウィンドラス機構とは、MTP関節背屈に伴って足底腱膜の張力が高まり、内側縦アーチが挙上する現象⁵⁾をいいます(図13)。
歩行においては、立脚後期(TSt)にウィンドラス機構が働きます。第1列底屈、踵骨の前方牽引、距骨下関節回外を引き起こし、後足部と中足部の安定性に作用します³⁾。これによって蹴り出し時の推進力を生みます²⁾⁶⁾。
ウィンドラス機構と踵部痛の関連について、ウィンドラステストが存在します。
ウィンドラステストは、荷重下または非荷重下で検査者がMTP関節を他動伸展させ、足底筋膜または踵部に疼痛が出現すれば陽性⁷⁾になります。
🔻ウィンドラステストの方法は、以下の動画が参考になります🎥
【トラス機構】
図14 トラス機構
トラス機構とは、足部アーチが示す三角構造の働き³⁾を言います。荷重時に中足骨頭と踵骨の2点支持によって弓なりとなり、衝撃吸収の役割を担います。内側縦アーチの安定化機能になります。
歩行においては、立脚中期に距骨下関節および横足根関節(ショパール関節)が回内、足根中足関節(リスフラン関節)が背屈し、この運動連鎖によって足底腱膜はさらに伸張され、衝撃吸収を最大限に発揮しています⁸⁾。
足部の運動学
足関節の運動には、底屈、背屈、内転、外転、回内、回外があります。また複合運動として、内返し(底屈・内転・回外)と外返し(背屈・外転・回内)があります。
距腿関節の運動
足関節の底屈および背屈運動は、ほぞ穴構造を有する距腿関節が主となり行われます(図15)。
図15 距腿関節の運動
距骨下関節の運動
距骨下関節には、底屈・内転・内反が複合的に動く回外運動と背屈・外転・外反が複合的に動く回内運動があります(図16)。
図16 距骨下関節の運動
9)より画像引用一部改変
距骨下関節の回内・回外運動は、徒手操作やテーピングでアプローチをすることがあります。そのため、正しい運動方向を十分に理解しておく必要があります。
距骨下関節の回内・回外運動を動画で確認しておきましょう🎥
距骨下関節運動に伴う上行性運動連鎖
【距骨下関節回内・回外運動に伴う脛骨回旋²⁾³⁾】
距骨下関節の回内運動に伴い、脛骨は内旋します(図17)。
距骨下関節の回外運動に伴い、脛骨は外旋します(図17)。
図17 距骨下関節回内・回外運動に伴う脛骨回旋
10)より画像引用
【距骨下関節過回内に伴う下肢の上行性運動連鎖】
距骨下関節過回内に伴い、距骨は内旋・内転・下制、下腿は内旋、大腿骨は内旋、骨盤同側は下制・前方回旋・前傾します(図18)。
図18 距骨下関節過回内に伴う下肢の上行性運動連鎖
2)3)を参考に作成
臨床では、回内足側(距骨下関節の回内が強い方)の下肢が上記アライメントを呈しているケースが多くみられます。回内足側の下肢では、骨盤下制を伴うため、その代償として脊柱の側弯が観察されやすいです。
【歩行における距骨下関節の回内・回外運動】
歩行では、距骨下関節は以下のように回内・回外運動をします。
歩行における距骨下関節の回内・回外運動を動画で確認してみましょう🎥
足部の評価指標
leg heel angle(下腿踵骨角)
leg heel angle(下腿踵骨角)は、下腿の二等分線(またはアキレス腱の延長線)と踵骨の二等分線がなす角度です(図19)。
図19 leg heel angle
距骨下関節の回内・回外の程度を反映していると考えられています。ただし、leg heel angle単独ではなく、後述するFPI-6のように、その他の指標と複合的に判断した方が間違いが少ないです。
leg heel angleの正常範囲は、3〜5°¹²⁾、2〜8°³⁾回内などと報告されています。
後足部角
後足部角は、前額面状における床面への垂直線と踵骨の二等分線がなす角度です(図20)。
図20 後足部角
踵の内反は距骨下関節回外を、踵の外反は距骨下関節回内を反映していると考えられています。ただし、回内足であっても後足部角内反の場合もあるため、leg heel angleと同様に単独評価ではなく、その他の指標と複合的に判断した方が間違いが少ないです(後述する後足部のアライメントタイプ参照)。
後足部角の正常範囲は、-5°〜5°とされています。
feiss line(フェイスライン)の評価
feiss line(フェイスライン)は、立位における内果下端と第1中足骨頭底部を結ぶ線です(図21)。feiss lineに対する舟状骨結節の落ち込みによって、内側縦アーチの高さを評価します。
図21 feiss lineと臨床判断基準
臨床では、feiss lineと床面との垂直線を三等分線、舟状骨結節がどの位置にあるのかを4段階で判定する³⁾方法が提案されています(図21参照)。
後足部のアライメントタイプ
後足部のアライメントには、以下の3タイプあります(図22)。
図22 後足部のアライメントタイプ
②後足部角内反・leg heel angle外反が臨床では多いと言われています。②のタイプは、回内足と回外足の判断が難しい場合があります。その場合は、後述するFPIー6の項目を参考に評価してみましょう。
FPI–6(回内足・回外足の判断)
FPIー6は足部が回内足なのか、回外足なのかを点数化し判断する指標です。6つの検査項目があります。再現性が高く、歩行中のアライメントを中等度反映できるとされています。以下、FPI-6の評価項目になります。
足関節の前方で距骨頭を触診します。距骨下関節が回内すると内側で、回外すると外側で触知することができます。
外果の上下のラインを確認します。上のカーブが大きければ回外、下のカーブが大きければ回内となります。
前額面上で床面の垂直線と踵骨がなす傾き(踵部角)を測定します。
距舟関節の隆起を確認します。回外では隆起が消失していき、回内では隆起が目立ちます。
内側縦アーチのカーブの高さと後方の傾斜を確認します。
後方から観察し、後足部に対する前足部の内外転を確認します。前足部は回外では内側で、回内では外側にみられます。
以上、13)より画像引用
実際の臨床場面では、必ずしも数値化する必要はなく、各評価項目を参考に回内足か回外足かの判断を行います。
足部の触診
距骨の触診
距骨は、足関節前面で、脛骨の真下(足関節くぼみの下)や脛骨内果の前方部で触れることができます。
図23 距骨の位置(右足内側および前方より観察)
FPI-6の①距骨の触診にあるように、距骨の内外側を把持するように触察することで、回内足と回外足の判断をするのに役立ちます。
自分の足で『距骨』を触診してみましょう🎥
載距突起の触診
サポートいただいた分は、セラピストの活躍の場を創ることに還元させていただきます。よろしくお願いします。