上肢挙上動作の運動学と筋活動
上肢挙上動作の運動学
上肢挙上動作時の上腕骨運動
挙上動作時、上腕骨は挙上していくにつれて外旋角度が増加していきます(図1)。
図1 挙上動作時の上腕骨運動
挙上角度90°では、肩甲骨面および外転が屈曲よりも外旋角度が大きく、挙上角度120°では、屈曲が外転よりも外旋角度が大きいと報告¹⁾されています。
一方で、屈曲角度170°位で上腕骨は内旋するとの報告²⁾があり、肩関節屈曲最終域で上関節上腕靱帯および烏口上腕靱帯による内旋作用を受ける³⁾とされています。
上肢挙上動作時の鎖骨運動
鎖骨は、上肢挙上に伴い挙上(約5°→約15°)・後方軸回旋(約0°→約35°)、後退(約30°→約60°)⁴⁾⁵⁾します(図2)。ただし、屈曲動作と外転動作で運動の軌跡は異なります。
図2 挙上動作時の鎖骨運動
屈曲動作時での鎖骨運動は、屈曲初期に若干前方移動、屈曲中期(屈曲90°前後~)から挙上、屈曲後期以降(屈曲110°~)は後退・下制⁶⁾します(図3)。
図3 屈曲動作時の鎖骨運動
外転動作時での鎖骨運動は、外転初期(0°~)に後退、外転中期に挙上、外転後期(120°前後~)後方回旋⁶⁾します(図4、動画2)。
図4 外転動作時の鎖骨運動
上肢挙上動作時の肩甲骨運動
肩甲骨は、上肢挙上時に上方回旋(29°→49°)・後傾(7°→37°)・内旋(8°→43°)します(変化角度は肩甲骨挙上120°までの範囲で記載)⁷⁾(図5)。
屈曲動作では肩甲骨内旋運動を伴い、外転動作では肩甲骨外旋運動を伴います⁸⁾。
図5 挙上動作時の肩甲骨運動
setting phaseの肩甲骨運動
setting phase(挙上30~60°)において、肩甲骨が固定され肩甲上腕関節に動きが生じるか、肩甲骨が胸郭の外側または内側に動くか、まれに安定に達するまで振動する⁷⁾⁹⁾とされています(図6)。これは、上腕骨頭が臼蓋に求心位、接触点(面)を求める現象とされ、floating phenomenon(浮遊現象)¹⁰⁾と表現されています。
図6 setting phaseにおける肩甲骨運動のバリエーション
肩甲骨上方回旋の構成
胸鎖関節(鎖骨)の挙上と肩鎖関節(肩甲骨)を軸とした肩甲骨の上方回旋で構成¹¹⁾されます(図7)。
図7 胸鎖関節の挙上と肩鎖関節の軸回旋による肩甲骨上方回旋
11)より画像引用
僧帽筋と前鋸筋のフォースカップル
フォースカップルとは、物体に作用する平行でかつ互いに逆向きの一対の力を言います。
僧帽筋と前鋸筋のフォースカップル作用³⁾(図8)により、肩甲骨は上方回旋します。さらに僧帽筋と前鋸筋の力成分は肩甲骨後傾と外旋(内転位)を補助します。
図8 僧帽筋と前鋸筋のフォースカップル
3)より画像引用
屈曲および外転時の肩甲骨運動軸の違い
屈曲では肩鎖関節を軸に、外転では肩甲骨内を軸にした上方回旋¹¹⁾を認めます(図9)。
図9 肩関節屈曲および外転時の運動軸の違い
11)より画像引用
屈曲では、肩甲骨は脊柱から離れていくような肩甲骨主体の動きとなります。
外転では、肩甲骨を脊柱側へ引きつけながら上方回旋し、鎖骨の後退運動を伴います。
屈曲および外転時の肩甲骨周囲筋活動の違い
屈曲では肩鎖関節を中心に前鋸筋による肩甲骨外転と上方回旋が生じます¹²⁾(図10)。
外転では僧帽筋中部線維による肩甲骨内転と上方回旋が生じます¹²⁾(図10)。
図10 屈曲および外転時の肩甲骨周囲筋活動の違い
12)より画像引用
肩甲胸郭関節の内転・外転
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