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テレビ番組のリサーチ領域④海外映像リサーチ&許諾交渉編

テレビ番組のリサーチ会社フォーミュレーションの今井です。
世間はGWに入りました。しかし3度目の緊急事態宣言が出され鬱々とした日々を過ごされている方も多いのではないでしょうか。早く終息してくれることを祈るばかりですね。

さて、本日はテレビ番組のリサーチ領域④として「海外映像リサーチ&許諾交渉」について書きます。

「衝撃映像100連発」や「かわいい動物動画100連発」みたいな海外映像を選りすぐったテレビ番組をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

これらも1つ1つ映像の権利をクリアにし、日本で「テレビ放送」できるように調整するのもフォーミュレーションにとってはリサーチ領域の一つです。

また最近ではTVerやABEMAやHuluなど各局配信のプラットフォームもありますので、そこでの放送権利もクリアにしないといけません。権利者によっては法外な使用料を要求してきたり、担当者がいきなり長期バカンスで2ヶ月いないので対応できない!などなど、とにかく日本の感覚や常識、テレビ番組のルールなどは通用しない世界ですので何かと気苦労の多いリサーチになります。

■2時間映像番組で何本のショート映像を放送しているのか?

番組タイトルに「100連発」と付いて番組は100本のショート映像は出していると思われますが、そういう言葉がない2時間映像特番があったとした場合、全部で何本のショート映像を放送しているかご存知でしょうか。

仮に純粋にショート映像(1分~2分程度)だけで全部の放送尺を埋める番組だった場合は、約70~100本近くが必要になってきます。

■(バックアップも含め)全部で何本の許諾が必要か?

実際に放送するショート映像が70~100本ということですが、通常はバックアップとしてもっと多くの映像を準備をしておかないといけません。権利交渉の進捗の度合いや予期せぬトラブルはつきものですので。
その数は番組によって違いますが、およそ150~200本近くになります。許諾確認が150本~200本ということは、もちろんそれ以上の数の映像のネタ出しをしないといけません。

■海外映像リサーチ→納品の流れを見てみましょう!

①映像ネタ出し
ひと口に「映像特番」と言っても各番組によって切り口やくくりが違ったりします。A番組では面白い!となってもB番組ではそうでもないということもよくある話です。また長年、色々な映像番組を担当させて頂くと似たような映像が多いのも事実。面白いと思ってネタ出しをしても、この前放送された!と指摘をうけ、採用されないこともよくあります。

リサーチは基本的にはネットリサーチです。キーワードを変えつつリサーチしたり、ある程度ネタがまとまっているサイトもあるので、そこをチェックしたり、海外の映像会社の中でリサーチしたり、SNSをリサーチしたり・・・。

★日本語でリサーチできる代表的なネタサイト
小太郎ぶろぐ
 http://www.kotaro269.com/
らばQ http://labaq.com/
カラパイア https://karapaia.com/
★海外のショート映像を取りまとめている会社
アフロ 
https://www.aflo.com/ja
ゲッティ https://www.gettyimages.co.jp/
Jukin media https://www.youtube.com/c/Jukinmedia/videos
Viral Hog https://www.youtube.com/c/Viralhog/videos
★SNS(YouTube,Twitter,Instagram,FB,TikTokなど)

これらのサイトやSNSをリサーチしながら、番組コンセプトに沿う映像をピックアップして番組会議に提案します。そこで演出/ディレクター陣から〇×の評価をもらい、〇のものは次のステップにいきます。

②映像権利元リサーチ
〇がついた映像はまずは映像の権利者をリサーチします。YouTubeなどは転載なども多いのでオリジナルが誰なのか?リサーチをします。権利者は個人もあれば局だったり制作会社だったり企業だったり代理店だったりとケースバイケースです。

③権利交渉
映像の権利者が分かれば次にメールやDMなどでアプローチしていきます。すぐに返事を頂けることもあれば1週間以上無反応の時もある。そういう場合は実際に国際電話をかけたり、違う連絡先がないか?をリサーチしてアプローチをしかけます。海外の局(CNN、NBC、CCTVなど)の場合は、窓口がしっかりしているのでそこに問い合わせをして日本での使用が可能か確認します。

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④プロデューサー確認
権利者の使用条件(料金や使用可能な部分)などが分かれば番組のプロデューサーに報告します。高額過ぎる場合はディスカウント交渉もすることもあります。そして日本の制作側から正式に使用するという言質を確認すると、次のステップに。

⑤マスター素材の手配→納品
制作側より「正式に発注して下さい」と依頼されると、マスター発注の手配に移ります。だいたいこれぐらいのタイミングになると編集・放送の〆切とにらめっこで、ヒリヒリしてます(笑)。海外とのやりとなりなので1日のタイムラグが致命傷になります。

⑥完パケ→テレビ放送当日
マスター発注をすると1日ぐらいで基本データで送られてきます。やったー!と喜ぶのはまだ早い!中身をきちんと確認しないと、こちらが指定した素材とは違う素材が送られてきてる!なんてこともよくある話。
先ほど話したようにただでさえヒリヒリ状態なのにマスターの内容が違う!とかになったら、もうお尻が燃えております。笑
そこからなんとかリカバーして納品のデッドまで間に合わせます。

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以上が大まかな映像ネタ出しから権利交渉、マスター納品までの流れです。

■「海外番組」を購入する場合

今まではショート映像のリサーチ、権利確認の話でしたが「世界まる見え!テレビ特捜部」(日本テレビ系)みたいな海外の番組を購入して放送するケースもあります。これは番組1本ごとに購入するケースもあればシーズン(全12話とか)でないと購入できないケースなど条件は様々です。
またカットする回数(=編集制限)までも指定されるケースもあります。

日本のテレビで有名なところでいうと、リアルな浮気の現場に突撃する「チーターズ(制作国:アメリカ)」や航空パニックもの定番「メーデー(制作国:カナダ)」や奇跡の生還の実話を再現した「アライブ(制作国:アメリカ)」などなど。

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こういう長尺番組ものはなかなか「尺買い」(=日本の番組で使いたい箇所だけを指定して購入すること)などはできないです。海外からはそのような小さなマーケットには興味がないと言われてしまいます。番組を丸ごと購入、もしくはシーズン全部を一括購入しないと、使用できないという条件が多いです。

■「海外映像の使用料の相場」はいくら?

テレビ番組で放送する場合ということを前提ですが、
ショート映像の場合はおよそ無料~30万円ぐらい。
長尺の海外番組の場合(1本購入する場合)は100万円~350万円ぐらいが相場でしょうか。
(※あくまで一例です、もっと安い時もあればもっと高い時もあります)

■トラブル発生!マスター発注直前になって「やっぱり使えない!」と言い出され・・・

とある「海外番組(長尺)」を購入しようと担当者とメールでやりとりをしていた。金額・条件など交渉はすんなり進み、日本での使用OK!という確認をとっていた。制作スタッフ・プロデューサーにも報告済みで今回の番組の大ネタとしてラインナップされていた。そして編集のタイミングになっていざマスター発注をしようとしたら、先方から「やっぱり日本では使えない番組でした」と言われてしまった…。

ん??

そんなこと急に言われても困る!きちんとした理由を教えて欲しいと粘って交渉しましたが相手はもう話し合いの場にすら立つつもりはない。血の気が引くとはこのことでした。
長尺ということは放送時間の30分ぐらいは埋めるつもりの大ネタです。それが急に無くなるわけですから。制作スタッフになんて説明すればいいのか…。いろいろとチームで議論しました。が、ここは正直に言うしかない。
コトが起きてから半日後ぐらいには制作に報告しました。
幸い怒られはしませんでしたが、スタッフ総出で1日後には過去に取引き実績のある別会社の別ネタを代案を提出し何とかOAすることができました。

いま思い返しても背筋がヒヤッとします。


■テレビだけでなく「企業CMに海外映像使いたい!」

今まではテレビ番組での話をしてきましたが、メディア以外のクライアントからも映像リサーチ&許諾確認をお願いされることもあります。主に(WEBも含む)CMや最近では企業のデジタルサイネージに流す映像のリサーチ&許諾交渉なども担当させて頂いたこともあります。

■【番外編】海外から招聘・ロケのアテンド、コーディネートをお願いされることも

ここまで書いてきてお分かりかと思いますがフォーミュレーションには英語が対応ができるスタッフが中心となってこのような業務に向き合っております。その流れで海外の有名人や話題の人を日本のテレビ番組に招聘したいというような要望を何度か頂いたことがあります。

例えば、「カール・ルイスと鬼ごっこしたい!」という企画を実現させるためにカール・ルイス氏を招聘したこともありますし、シャチホコみたいになって足で弓をひくいわゆる”軟体人間”の女性をアメリカから招聘したり、”タイの明石家さんま”と言われる有名なタレントさんを日本に招聘し農家を巡るロケのコーディ―ネイトをやらせて頂いたこともあります。

航空チケットやホテルの手配、無理難題、トラブル続きの連続でしたがチーム一丸となって難局を乗り越えました。今となってはとても懐かしい思い出です。軟体女性は帰国直前になって「パパのお土産に釣り竿を買ってあげたい!」と言い出して渋谷近辺の釣り道具店をはしごしたりしました。笑

■【まとめ】「海外リサーチ→権利確認交渉→契約代行→支払い代行→納品」までをワンストップでご提供

フォーミュレーションでは約20年ぐらい前からこのような海外映像リサーチ&許諾業務をリサーチの一環として行ってまいりました。元々はコーディネーターの業務だったのではないかと思いますが、国内で海外リサーチをやらせて頂く流れで映像の方もお願いされるようになってきました。今ではおかげ様で海外のプロダクションや会社からの認知度もあがり長年の信用から交渉がスムーズにいくことも多くなりました。

昔はマスターはテープ、しかもFedEXなどで郵便で送られてきてました。今から思うとかなり前時代的なイメージですが。その他、契約書の書き方や海外送金の仕方、関税の話などその都度都度、勉強しながらナレッジを蓄積してまいりました。

テレビ番組のリサーチ業務において、こういった海外映像リサーチ&許諾確認のお仕事は後発ですが「とりあえずやってみる精神」の結果、自分たちの”武器”になっていった経緯があります。

この先10年、どんな初めてのことに出会い、新たな”武器”を持てるか、想像するとワクワクしますね。

以上です!

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