【イントロダクション】テレビ番組の裏方の裏方の裏方の仕事、「リサーチ」とは?
テレビ番組のリサーチ会社フォーミュレーション今井です。
皆様、コロナで緊急事態宣言の中、何かと不自由が多いですが、ひょんなことから僕はYouTubeを始めることになりました。
2020年11月から撮り始めて毎週土曜19時にアップしております。別にYouTuberとして稼ぎたい!とか野心めいたものはなく、弊社にはAD派遣会社(フォーミュレーションITS)があり制作部門もありますので、そちらのスタッフと組んでリクルーティングの意味合いを込めて制作しております。
今日の記事タイトルはその撮影時に僕がポロっと話したセリフなんですが、それがこの業界における「リサーチ」という属性を表現する上で意外と的を得ているのではないかと思い付けてみました。
今回のnoteは「テレビ番組におけるリサーチ」について、ざっくりとした
イントロダクションを書きつつ、次回以降はその詳細を書いていければと思います。
■そもそも「テレビ番組のリサーチ」とは?
一般的な「リサーチ」「リサーチャー」という言葉はマーケティング分野、もしくは研究職分野において使われていることが多いと思います。ではテレビ番組における「リサーチ」とはどのような仕事なのでしょうか。
簡単に言うと「ネタ出し」です。
「ネタ」とひと口で言っても番組によって求められるものは千差万別です。バラエティ、報道、スポーツ、ドキュメンタリーなど番組の数だけネタ出しの方向性は違います。
料理で例えるなら「素材」を提供するのが「ネタ出し」です。それを調理するのが”シェフ=制作スタッフ”です。僕たちは「こんなお魚が入りましたよ」と”シェフ”に提供するのが仕事です。
■テレビ番組における「リサーチの領域」とは?
「ネタ出し」以外でテレビ番組においてリサーチ領域は以下のジャンルがあります。
②「ファクトチェック」
いわゆる”裏どり”です。その情報が果たして正しいのか?公的機関や研究機関、論文検索、新聞記事など複数のソースから制作スタッフに報告します。これはテレビ放送における情報の品質・価値を担保するためにも非常に大事な仕事です。また最近では裏どりだけではなく、コンプライアンスチェックや反社チェックなどニーズが高まってます。
③「タレント情報リサーチ」
これは有名人の過去のエピソードや趣味や嗜好、出演歴、などを雑誌記事、ネットメディアのインタビュー記事、過去のテレビ番組などの発言、有名人SNSなどから抜粋しプロフィールを作成してまとめて報告するという仕事です。もちろんオープンソースのみの情報です。フォーミュレーションではおよそ1,000人以上のあらゆるジャンルのタレントさんの情報が蓄積&随時更新されております。最近要望が多いのはやはりYouTuberの方々ですね。トーク番組や企画モノなどあらゆる番組においてまずは必要となるリサーチです。
④「海外映像リサーチ&許諾交渉」
いわゆる「衝撃映像100連発!」や「かわいい動物映像100連発!」みたいな番組のために海外映像をリサーチし、権利元を探し出し、使用条件をヒアリングし日本のテレビ番組で放送できるように使用許諾を得て購入・納品するというお仕事です。権利元は個人の場合もあれば、制作会社であったり、海外の局であったりとケースバイケースです。
⑤出演者キャスティング
これはテレビに出演して頂ける一般の方をリサーチするお仕事です。日テレ「ボンビーガール」などを想像して頂くと分かりやすいかと。その他、情報系番組においてコメントや監修して頂ける専門家の方をリサーチしてキャスティングすることもあります。
⑥アンケート調査(定量・定性調査・座談会など)
テレビ番組はランキングを使うことが多いです。そのアンケート調査も担うことがあります。街頭インタビューなどもありますので、最終的には「番組調べ」になることが多いですが、ある程度信憑性を持たせるため母数が多く必要な時はフォーミュレーションでネットアンケート調査を行うことがあります。
⑦テレビドラマ・映画リサーチ
ドラマ・映画の背景・キャラクター構築・職業などの設定のためのリサーチやストーリー制作においてヒントとなる実際の事件や事例のエピソードリサーチ。また様々なメディアで発信されており、まだ映像化されていない原作を網羅的にリサーチしたり、原作の登場人物やあらすじ内容やストロングポイントなどがデータベースになって検索リサーチできる「ドラマペディア」という独自システムなどを構築しております。また紙媒体・SNSを含むウェブ媒体で連載されている作品をいちはやくチェックして更新していく「新連載チェック表」などもあります。
⑧テレビCM/ウェブCM広告掲載許諾リサーチ
テレビCM/ウェブCMに使用される動画コンテンツの肖像権クリアランスなどを行っております。CM制作会社や広告代理店からの依頼を受けて行うリサーチになります。
■では、具体的にどうやってリサーチしているの?
これは簡潔に書くのが難しく次回以降詳しく書いていこうと思いますが(笑)、ざっくりいうと「インターネット(SNSを含む)」「雑誌記事」「新聞記事」「書籍(図書館)」「電話取材など」です。
早い話が特に”魔法”はありません。人間がいてコツコツ、コツコツ日々調べものをしている以外方法はありません。
しかしキャリアを積むことによって最適解を導くための最短ルートを選択することができたり、検索キーワードが想起できたりするようになります。
■どんな人がスタッフがいますか?何人ぐらいスタッフがいますか?
よく聞かれる質問なのですが、まずどんな人がいますか?という問いに関しては多種多様な人(笑)としか答えようがないです。それぞれジャンルによって得意・不得意があるかもしれませんが、僕たちは個人プレイヤーではないのであくまで「会社」という組織で動いてるのでお互い凸凹を埋め合いながら全方位からのリサーチ依頼に応えていきます。
リサーチメンバーは全員で60名ぐらいです。社外も入れると80名ぐらいでしょうか。大小6つの部に分かれており、それぞれ部ごとにレギュラー番組を10番組~20番組程度を担当させて頂いてます。
■テレビ番組で「リサーチ」が必要なの?
ではそもそもテレビ番組においてリサーチは必要なのでしょうか?
歴史的には「テレビ番組」においてリサーチ業務は制作業務の一環でした。それが3,40年ほど前から徐々に独立した専門職になっていったと言われております。
このような背景にはテレビ番組制作の手法の変化とともに、リサーチに以下のような要素が求められてきたからではないかと思います。
①役割分担=時間の創出
リサーチという仕事はエンドレスな側面もありますので、収録準備や仕込みで忙しい制作スタッフがそこに費やすことができる時間は限りがあります。そのためリサーチが分業化されるようになっていったと思われます。
②ファージビリティ(実現実行性)
「実現実行性」。例えば、いくら会議で面白い企画を語ったところでそれはあくまで”絵に描いた餅”。番組になってOAされないと意味がありません。またイイネタだとしてもOAまでには様々なハードルがあります。企画とOAの間の着地点を見つけるのもリサーチの役割だと思います。
③中立性・清廉性
制作スタッフはとかく時間に追われています。できるだけ面白くするために心血注いでる姿に畏敬の念を禁じ得ないですが、一方で客観性を無くす瞬間というのもあります。しかしテレビ番組においてウソはいけません。絶対にあってはならないことです。
リサーチは制作スタッフと距離があるため「中立性」「清廉性」が維持できると思います。もしそういった場面に遭遇したら、違う「素材」を提案したり、ソリューションを提案するのもリサーチの役割かと思います。
④監査
③に近い意味合いですが、リサーチには内部監査的な役割もあると思います。その情報が正しいのか?数字があっているのか?出典の確認、誰かを傷つけないか?恣意的になっていないか?そういうことをチェックして指摘する、そういうのもリサーチの役割かと思います。
■「リサーチ」とは裏方の裏方の裏方のお仕事。しかし「バンテージポイント」でもある。
一般的にテレビ番組は演者さんがいて、実際に制作するテレビ局員および制作会社のスタッフがいらっしゃいます。演者さんのことを「出役」といい、制作するスタッフを「裏方」と呼ぶと思います。
その制作スタッフをさらに支えてらっしゃるのが技術・美術・編集・事務所のスタッフさんたち、すなわち「裏方の裏方」。
僕たち「リサーチ」と言う職種は基本的には制作もしなければ収録にも参加しないので「裏方の裏方の裏方」なのではないかと思いました。
しかし、だからと言ってテレビ番組に関係してないか?というとそうではない。番組の企画書作成から番組の安全健全な運営・放送、放送後のコンプライアンスまで様々な場面で必要とされています。
これは何をもって自分が納得するかという価値観の問題かもしれませんが「リサーチ」という職種は、個人的には業界全体を見渡せるし、次の動向も一早くキャッチできるいわゆる”バンテージポイント”(=見晴らしの良い場所)だと思っております。