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テレビ番組のリサーチ領域②裏どり&ファクトチェック編

テレビ番組のリサーチ会社フォーミュレーションです。
今回はファクトチェックについて書いていきます。

■そもそも、どうしてファクトチェックが必要なの?

まず、「ファクトチェック」とは、テレビで放送される情報が間違った情報ではないか、また、真偽不明な情報ではないか、正確性を検証するリサーチです。簡単に言うと、いわゆる”裏どり”です。これはテレビ放送における情報の品質・価値を担保するためにも、非常に大事な仕事の一つです。

■テレビ番組リサーチのファクトチェックってどんなものがあるの?

では、テレビ番組のリサーチで行うファクトチェック(いわゆる”裏どり”)とは、一体どういった種類があるのでしょうか。主に3つに分けてご説明させて頂きます。

①クイズ問題の裏どり
②ナレーションの裏どり
③偉人・著名人・タレント情報の裏どり

①クイズ問題の裏どり
テレビ番組のファクトチェックで、最もオーソドックス(よくやる)なリサーチの一つです。クイズ問題の正答に間違いがあっては絶対にダメ。どのクイズ番組でも、正答の裏どりは必ず行われています。

特に、「日本初」「世界初」といった「初」記録は諸説が多いため、様々な角度から検証することが多いです。また、「日本一」「世界一」といった情報は常に更新されている可能性があるため、注意して確認します。

②ナレーションの裏どり
クイズ問題の裏どりに続き、こちらもオーソドックス(よくやる)なリサーチの一つです。クイズ問題と同じく、間違いがあっては絶対にダメなため、力を入れてファクトチェックが行われています。

ナレーションが書かれた台本の内容を裏どりすることが多いですが、ナレーション台本は裏どりが行われる前のネット情報を中心に構成されていることが多いため、情報が間違っていることがあります。そのため、リサーチャーがより精度の高い裏どりを行うことにより、間違えた情報が世に出ないよう、最終確認をすることが多いです。

③偉人・著名人・タレント情報の裏どり
「〇〇が得意なタレント」などのリサーチ発注を頂くことが多いですが、WEBには信憑性のない情報が溢れかえっています。

そんな時にリサーチャーが行うことは、タレントご本人のWEBインタビュー記事、雑誌のインタビュー記事、SNSなどを確認し、情報が間違えていないかを確認します。また、現在はご存命でない過去の偉人の場合、自伝などの書籍を確認し、情報が間違えていないかを確認します。

■ファクトチェックによく活用するサイト

ファクトチェックを行う方法は多種多様ですが、テレビ番組におけるファクトチェックは、基本的にデスクワークです。厚生労働省・警察庁・内閣府といった国・省庁のHP、市役所・町役場といった自治体のHPをはじめ、WEBメディアや新聞紙に掲載された各有識者の発言・論文などをWEB上で確認します。

以下、裏どりリサーチを行う際によく利用するサイトの一部です。

コトバンク
⇒朝日新聞、朝日新聞出版、講談社、小学館などの辞書から、用語を一度に横断検索できる無料サイトです。辞書に掲載されている情報は信憑性がかなり高いため、こちらのサイトは多用します。

コト

G-Search
⇒全国紙、地方紙、専門紙、スポーツ紙、経済誌など、約150紙誌のデータベースを横断的に検索できる有料サイトです。主に、有識者のコメントが入った記事などを検索する際に利用しています。

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CiNii Articles
⇒国立情報学研究所が運営する学術論文や図書・雑誌などの学術情報データベースです。キーワードを入れるだけで、関連の論文を検索することができる無料サイトです。

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カーリル
⇒カーリルは全国7,300以上の図書館・図書室から書籍とその貸し出し状況を簡単に横断検索できるサービスです。中身を確認したい本のタイトルを検索すると、どこに在庫があるか一目でわかる便利な無料サイトです。

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■テレビ番組のファクトチェックはデスクワークだけに留まらない

場合によっては、テレビ番組の裏どりはデスクワークだけに留まりません。専門的な書籍を確認するために特殊な図書館へ行ったり、場合によっては、有識者のもとへ取材に出かけることもあります。

以下、専門的な書籍が所蔵されている特殊な図書館の一部です。

国立国会図書館
⇒日本一の蔵書数(4千万点以上)を誇る日本最大級の図書館です。一般の図書館では手に入らない専門的な書籍はもちろん、社内報、会報誌、マンガ、数十年前の新聞など、裏どりを行うのに、非常に有効な図書館です。

国

大宅壮一文庫
⇒国内初の雑誌専門図書館です。月刊誌や週刊誌をはじめ、女性誌・アイドル誌・ゴシップ誌まで、様々な雑誌を閲覧することが可能です。タレント情報の裏どり等に利用することが多いです。

大宅

アドミュージアム東京
⇒日本で唯一の広告ミュージアムで、広告に関する書籍や過去のCMなどを閲覧できるデジタルアーカイブもあります。過去のCMはWEBにはほとんど残されていないため、こういったアーカイブを確認することもあります。

アド

■実例①:「国内観測史上最大」
では、以上のようなサイトを活用し、どのようにして裏どり(ファクトチェック)が行われているのでしょうか。ナレーション(Na)における裏どりの一例です。

【※チェック前】Na:国内観測史上最大の地震となった東北地方太平洋沖地震、いわゆる東日本大震災。

この一文で気になるのが「国内観測史上最大の地震」です。この一文では「過去最大」と言い切っていますが、本当にそうでしょうか?では、まずは公的機関(気象庁)が発表している情報を確認してみましょう。

気象庁はこの地震を「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(英語名:The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake)と命名した。また、この地震による災害について「東日本大震災」と呼ぶことが閣議決定された。「平成23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震」 (M9.0)は、国内観測史上最大規模の地震であった。

気象庁のHPを確認した結果、「国内観測史上最大の地震」ではなく「国内観測史上最大規模の地震」ということが分かりました。

【※チェック後】Na:国内観測史上最大規模の地震となった東北地方太平洋沖地震、いわゆる東日本大震災。

■実例②:「最高学府」

【※チェック前】Na:日本の最高学府、東京大学。

日本の最高学府は東京大学のような気はするが…、本当にそうでしょうか?前述のコトバンクを使って確認してみましょう。

最高学府…最も程度の高い学問を学ぶ学校。通例、大学をさす。
[補説]一般に東京大学のみを指していうのは誤用とされる。明治10年(1877)から、明治30年(1897)に京都帝国大学ができるまでは、東京大学(明治19年からは帝国大学)が唯一の大学で、最高学府だった。

コトバンク内にある「デジタル大辞泉」によると、最高学府は東京大学のみを指すのは誤用とされるようです。

【チェック後】Na:日本の最高学府の一つである、東京大学。

■実例③:「顔認識」「顔認証」

【※チェック前】年齢を推測することで、オリンピック会場などで本人への成りすましを防ぐこともできる、最新の顔認証技術。

一見、間違いはないような気がしますが…、念には念を入れる必要があります。「年齢を推測すること」=「顔認証技術」となるのでしょうか。G-Searchを使って調べてみましょう。

顔認証は、人の顔の特徴をつかみ、データベースと照合して個人を特定する技術だ。空港の監視カメラやスマートフォンのロック解除など、「なりすまし」防止に使われることが多い。類似の技術に、個人を特定せず顔の各部位や輪郭、しわなどから、性別と年齢層といった属性を推測する「顔認識」がある。出典:産経新聞2013.05.05

「顔認証」=「人の顔の特徴をつかみ、データベースと照合して個人を特定する技術」。「顔認識」=「個人を特定せず顔の各部位や輪郭、しわなどから、性別と年齢層といった属性を推測する技術」と、この2つの技術は類似しているものの、別の技術になるようです。

【※チェック後】年齢を推測することで、オリンピック会場などで本人への成りすましを防ぐこともできる、最新の顔認識技術。

■テレビ番組のファクトチェックは、広告や企業様にも活用されている

間違った情報を放送してはいけないテレビの世界で行われてきたファクトチェックですが、近年、反社会的勢力との繋がりによるトラブルなどが芸能界でも取りざたされている中、広告や企業様に向けても、コンプライアンスチェックや反社チェックなどのニーズが高まってきています。

①出演者の身辺調査(反社チェック)
②撮影候補地の過去トラブル調査

①出演者のコンプライアンスチェック(いわゆる反社チェック)
番組で取材予定の対象者(主に一般の方や会社・お店など)が「反社」「コンプライアンス違反」の対象かどうかを放送前に判断するため、「詐欺」「暴力団」など、200個以上の”ネガティブワード”を使ってWEB・新聞・SNSなどを検索します。

②撮影候補地の過去トラブル調査
有名タレントがご出演されているCMで「ある絶景スポット」を取り上げる場合、放送後、そのスポットにファンが殺到することが多いため、現地にお住まいの方との間でトラブルが発生することがあります。そういった問題が起きないよう、CMで取り上げる予定の絶景スポットで、過去に同様のトラブルがなかったかを確認するリサーチもあります。

■間違えた放送を流さないために大事なこと

ネットニュースでもたまに騒がれますが、ナレーションでは「A県」と言っているのに、画面に表示されている県の地図は、よく似た形の「B県」だった。など、間違いがないようにしても、どうしても間違いが発生することもあります。その時の主な原因は”思い込み”です。

「A県の地図はこんな形だったよな」と勝手に思い込んだ結果、確認することなく放送に使ってしまう。あってはならないことですが、たくさんの裏どりリサーチをする中で、過去の経験から勝手に判断してしまうことはゼロではありません。

ただ、そのような”思い込み””勝手な決めつけ”が放送事故に繋がってしまうということをリサーチャーは常に心がけており、常に客観的な目線で、確実なソースからのファクトチェックを行います

■専門的な知識がなくても大丈夫
ファクトチェックを行うため、最低限、そのジャンルにある程度詳しくなる必要はあります。ただ、誰でも最初は知識ゼロの所から始めます。しかし、心配ありません。毎週のようにそのジャンルのファクトチェックに携わっていると、知識がどんどん蓄積されます。結果、そのジャンルに精通することになっていきます。

常に多くのジャンルで様々な内容のファクトチェックを行いますが、知識のない難しいジャンルのファクトチェックを担当することもあります。ただ、そんな時でも問題ありません。フォーミュレーションのリサーチャーには、様々なジャンルのプロフェッショナルがいます

時事問題に詳しい者、スポーツに詳しい者、歴史に詳しい者、流行に敏感な者、タレント情報に詳しい者、ゴシップ情報に詳しい者 などなど、彼らに助言をもらうことで、「あっ、こんな調べ方があるんだ」「こんな文献やサイトがあるんだ」と、常に発見の連続です。

テレビ番組の制作スタッフは、知られざる面白い情報を発信するように、日々、努力や工夫を重ねています。テレビ番組のリサーチャーはそんな想いを少しでも視聴者の方にお伝えするため、日々、膨大で多種多様なファクトチェックを続けています。

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