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世界を変える美しい本

日本から6000キロも離れたところ、南インドにあるタラブックスという小さな出版社。
そこではハンドメイドの本が作られています。
手漉きの紙にシルクスクリーンで印刷し、製本まで全て手作業で仕上げられた、まるで工芸品のような美しい本の数々。

世界を変える美しい本 〜インド・タラブックスの挑戦〜

数年前、タラブックスの本づくりの全容を紹介する展覧会に足を運びました。その名を知らしめた『夜の木』という絵本をはじめとするハンドメイド本と、写真や映像などを通じた活動の展示です。

みなさんは絵本というと、どのようなものをイメージされますか?
インドでは各地に多様な民俗芸術の伝統があり、タラブックスはその伝統文化を子ども向けの本に取り入れるため、20年近く取り組んできたそうです。
インドの民俗芸術についてほとんど知識がなかった私は、その多様で豊かな表現方法におどろきました。そしてハンドメイドならではの温かみのある質感・色合いはとても美しいものでした。

絵本といってもさまざまで、言葉がなく絵だけの絵本、ページに仕掛けがある絵本、じゃばら折りの絵本、タイポグラフィの絵本など多種多様でした。
図録を通して作品をいくつかご紹介したいと思います。

01:『夜の木』
聖なる木々の夜の姿をめぐる物語

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こちらの絵本はタラブックスが注目されるきっかけとなったもの。
ゴンド民族によってい描かれるものをゴンド芸術というのだそうで、ゴンド族にとって木は再生と成長の力の象徴であり、動物や鳥、植物、人間とともに描かれるのだそう。木が夜に見せる表情をとらえるために、古い綿布を手漉きしてつくられた黒い紙が用いられており、真っ黒な紙に浮き出る木々の絵がとても美しいです。


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02:『マンゴーとバナナ まめじかカンチルのおはなし』
伝統的な布を絵本にする試み

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南インドの伝統的な布地「カラムカリ」のアーティストと協力して制作された絵本。
原画はブロックプリントという木版捺染によって印刷された布地のため、質感と版画の色が再現されるように配慮して制作されたそうです。布地のような質感と温かい色合いによって、独特な世界観が作り出されています。

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03:『猫が好き』
インド各地の民俗画家が描いた多種多様な猫

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民俗画家たちによる多様な猫の絵を集めた絵本。
ひとつのモチーフに対して、インド各地のさまざまな芸術様式に触れられ、表現方法の違いを楽しめる一冊です。

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04:『グラブーベリーだけはいや!』
ナンセンスな言葉とタイポグラフィの実験

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子どもが「なりたくないもの」について書かれたナンセンス詩を集めた絵本。この作品は他のとは少し毛色は異なりますが、文字と線によって内容が表現されたグラフィカルなデザインになっています。

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いかがでしたでしょうか。
タラブックスによる活動を通じて、民俗芸術家に生み出された絵本たちは世界中で読まれるようになったのですが、
インドでは自国の文化から生まれる子ども向けの本が少なかったそうなのです。これまで子どもたちは物語を読むのではなく、聞いて育ってきたのだとか。インドにはさまざまな公用語がありますから、そういった言語の壁も背景にあるのでしょうか。
地域によって使われるモチーフが違ったり、技法もさまざまで、民俗芸術の奥深さを感じました。

ひとつ面白いと感じたのが、英語と日本語訳で表紙のデザインが変わっているのですが、色合いや書体の違いにより雰囲気も違うものになっていたりします。本によっては8ヶ国語で翻訳されているので、その国や言語に合わせたデザインの違いが楽しめるのではないでしょうか。

さて、紙媒体の本を買うことがめっきり減っていた私ですが、手元に置いておきたくなるお気に入りの一冊を探してみようと思います!

それではまた〜!

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