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【アーカイブ/記事】PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015ガイドレポート雑記|今年の京都の「桜」は、とんがっています

 2015年3月7日(土)から5月10日(日)まで、京都市美術館、京都府京都文化博物館など京都市内8か所で開催されている、「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015」の作品鑑賞ガイドのボランティア活動についてレポートします。

 タイトルとなっているPARASOPHIAは、「別の知性」という意味の造語です。従来の国際美術祭や地域アートプロジェクトとは一線を画すことを強く意識しています。ねらいは次のとおり、きわめて先鋭的です。

・京都経済同友会などの民間資金が中心となっているので、公的資金に縛られず、思い切ったことができる
・京都という観光資源にも安易に頼ることをせず、来場者数という結果にこだわらない
・作品のキャプションは、無料ガイドブックに集約し、会場での表示を最低限にすることにより、 来場者にじっくり作品に向き合い、考えてもらう
・とかく「わかりにくい」とされる現代アートですが、安易に敷居を低くしない、口当たりを良くする味付けはしない

 作品鑑賞ガイドツアーも、単なる作品解説ではなく、海外の先進的なアートイベント、アートセンターにおけるメディエーター」のような対話型のガイドツアーを行い、お客さんとの感想などを共有する形式になっています。そのため、本芸術祭でのガイドは「シェルパ」、ガイドツアーは「シェルパツアー」と名付けられました。「シェルパ」という名は、鑑賞者の手助けをするという意味で、ヒマラヤ登山の荷物運び役をもじったもので、ガイドボランティアの皆で案を出し合い決めました。

ガイドツアーの看板

 さて、去る3月14日(土)、第1回目のガイドツアーを実施しました。お客さんは10人。対話型では適正人数です。45分間、長くても1時間のツアーですので、3点を選んでのガイドとなりました。
 一つ目は、サイモン・フジワラの《ピエタ(キング・コング・コンプレックス)》等の一連の作品。独特のエロティシズムやジェンダー観から、それぞれが感じたキーワードを述べ合いながらの鑑賞となりました。続いては、世界で活躍する現代美術家、蔡國強の《京都ダ・ビンチ。花火で有名な作家ですが、今回は少し作風に変化がありました。従来の作風との対比などについても感想が語られました。最後は、ジャン=リュック・ヴィルムートの《カフェ・リトル・ボーイ》。これは、鑑賞者がチョークで自由に書き込めるいわゆるリレーショナルアートです。作家がどの部分を書き、河本信治アーティスティックディレクターがどこを書いたなど、制作途中の様子なども交えて解説し、感想を述べ合いました。

サイモン・フジワラ《ピエタ(キング・コング・コンプレックス)》
ツアーの様子。右奥は蔡國強《京都ダ・ビンチ》

 現代アートのガイドの楽しさは、まず、作家がほぼ現存しており、作家自身のトークなどが聞けるのでそのエピソードなども織り交ぜながらガイドできることでしょうか。現在の社会状況などに絡んで、作品の狙いなどが議論できることもガイドの醍醐味です。一方で、難しい点は、新作が出品されることが多く、ガイドをするためには短期間で作品を見て、開幕時に発行されたカタログを読み込んで、ガイドそれぞれのスタイルに合わせたツアーを組むことです。ただ、今回は会場も普通のホワイト・キューブではないので、小声で話す必要はありません。ときに笑いも出るなど、一種お祭りのような高揚した独特の雰囲気の中でのガイドツアーとなりました。
 なお、ほとんどすべての作品が撮影可能で、SNS等で誰でもが自由に情報発信できるのも、本芸術祭の楽しさです。京都は大学も多く、若いボランティアの方が多く(私は高齢の部類になります)、ガイドのための勉強会もにぎやかで楽しいです。
 是非、京都の春爛漫を愛でながら、鋭く尖った現代アートの饗宴をたっぷり堪能しに、PARASOPHIAへおいでやす!

ジャン=リュック・ヴィルムート Jean-Luc Vilmouth《カフェ・リトル・ボーイ》
ウィリアム・ケントリッジ《セカンドハンド・リーディング》
ウィリアム・ケントリッジ William Kentridge《セカンドハンド・リーディング》
やなぎみわ《『日輪の翼』上演のための移動舞台車》
眞島竜男《二つのコンテンポラリー:15分(ずつ)のレクチャー・ビデオ》


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